12月

工体連創立50周年挨拶

2015年12月05日

12月

法政大学工体連が創立50周年を迎えましたこと、心よりお祝い申し上げます。工体連はこの50年の間に素晴らしい軌跡を残されてきました。現在は、所属学生数500名、卒業生数4000名を超えているとうかがっています。工体連は勉学との両立を目指し、それを実践しておられます。それは学生生活を送る中で大変価値のあることです。大学は学術研究および教育の最高機関であり、学問を究めることが学生の本分です。しかしそれと同時に、活動を通して身につく、身体能力、忍耐力、集中力、他の立場の人たちへの想像力は、学業で得る知識と同じくらい貴重な財産だからです。

理学、工学、生命化学、情報科学などは、すべて、「社会の仕組み」と「人間の生命」に直結しています。それだけに、自分の研究や勉強が社会に何をもたらすのか、常に考え、自らの思想をもつようにしなければなりません。理系の教育者や、その教育を受ける人々が、社会や世界に眼をとざし、学位をとって業績を上げて良い企業に行かれればよい、という考え方は、もう、50年前に終わりました。

今年9月に『私の1960年代』という本が出ました。著者は物理学者の山本義隆さんです。多くの著書があり、2003年に刊行された『磁力と重力の発見』全3巻は、たくさんの賞に輝きました。私は文学者ですが、私の世代は、この方の名前を高校生のころから知っています。その理由は、『私の1960年代』という本をお読みになれば、わかります。そしてこの本の中では、理系の学者たちが社会の動きと、自分たちの研究の影響力に眼をつぶっていた時代が1960年代末に終わったこと、山本さんの生き方は、そのことに眼をさまして生き続けることにあったこと が、わかります。

私の兄は、1960年代に山本さんと同じ大学の工学部とその大学院を卒業し、山本さんと同じ活動をおこない、「工学」ということの意味を問い続け、結局、経済や人事の畑で生きることになりました。理系の勉強はどんな分野でも、その根本的な存在理由を問いながら学ぶに足る、重要な領域です。

皆さんは勉強だけでなくスポーツにも精進していることで、バランスがとれているはずです。さらにそこに「読書」の習慣を付け加えれば、完璧です。広い視野をもって自分で考え、決断できる人間になることができます。ぜひ、皆さんの知性と健康を、社会と世界を良い方向に導くために役立てて下さい。

最後に、これまで本学工体連の活躍を支えてくださった歴代の部長や監督、卒業生をはじめとする関係者の方々のあたたかいご指導・ご支援と、部員の方々の努力に感謝いたします。今後とも法政大学工体連のさらなるご活躍とますますのご発展を祈念して、お祝いの言葉とさせていただきます。