11月

「平和への誓い」を引き継ぐ

2015年11月23日

11月

私は2014年度の学位授与式において、2013年度におこなわれた『学び舎から戦場へ』のシンポジウムで増田壽男総長が発表された「平和への誓い」を取り上げ、これを総長として受け継ぎ、さらに次の世代の総長に手渡して行くことを約束した。学生を一人も戦場に送ってはならないと、改めて思ったからである。

本シンポジウムと展示会によって、大学が国家のために学生達を戦場に送ったという事実が、多くの人に伝えられた。総長になって初めて、送り出したのは「自分だったかも知れない」という生々しい現実が脳裏に浮かび、今後もあり得る出来事として迫ってきたのである。戦後70年を前に、法政大学はその記憶に向き合うべきだと思う。

学生の一人であり野球部の選手でもあった坪谷幸一氏は、「この身一つを大君の御為、国の為に捧げ、悠久の大義に殉じ皇国と共に生きる」ことを「幸福」であり「喜び」であると恩師への手紙に書いている。そして特攻隊の一員として戦没した。

当時の大学教員も学生も、「戦時体制」の中に引き込まれ、戦争協力を「幸福」「喜び」と感じるようになっていった。これを「昔のこと」と片付けてはならない。戦争中は女性解放運動家も、戦争協力によって女性の活躍をめざしたのである。アメリカを中心とする軍産学複合体はいま世界中に広がっている。とりわけ日本は、その強力な一部になろうとしている。これからも「家族のため」「理想の実現ため」「仕事の成功のため」に戦争参加を幸福と感じる時代に入らないとも限らない。

己の弱さを常に胸に刻み、その弱さが利用されない世界をめざしていかねばならない。大学は未来永劫、その責務を負っている。