2015年度

7月

2015年度

7月29日(水)

大和ハウスグループと日経BP社が共同編集しているネット上の冊子「サステイナブル・ジャーニー」の取材を受けました。江戸時代にとても詳しい編集者がいて。法政大学が推進している環境、社会、文化に渡るサステイナビリティに、深い関心をもって下さいました。

お隣の三輪田学園高等学校と、高大連携協定を結びました。三輪田学園は、なんと明治20年の創立だそうで、まもなく創立130年の伝統校です。富士見に移ってきたのは、法政大学より早かったようです。
紫色の素敵な夏の着物に白い帯をきりりと締めた校長の登場にはっとしました。吉田珠美校長は、古代史・仏教史を専門にする素敵な女性でした。HPの写真も着物。頻繁に着物をお召しのようです。私だけではなかったと、ちょっとほっとしました。こんな近くに着物の同志がおられるとは。
三輪田学園とは、今までも本学教員による理科実験教室や、英語による異文化交流討論会、そして三輪田学園のみを対象にしたキャンパスツアーなどをおこなってきましたが、これからも生徒さんへの講義、生徒と学生の交流、教職員の情報交換を続けていきたいと思います。理事で事務長の三輪田進氏、進路指導室長の加納克也氏ともお近づきになれました。

7月25日(土)

今日は、沖縄文化研究所と日本中国友好協会、そして慶應義塾大学大西広研究室共催のシンポジウム「東アジアの平和をどう築いていくか」を開催しました。戦後70年の節目に、日本、中国、米国が戦争を回避する深いかかわりを作る決意が、どうしても必要です。法政大学沖縄文化研究所がこのようなテーマでイニシアチブをとって下さったことに、感謝します。

今日は、一年に一度開催される、集英社「開高健ノンフィクション賞」の選考委員会が開かれました。この日までに、最終選考に残った4作を熟読するのも、総長になった今はたいへんなのですが、多くのことを学びます。作家であり経済学部教授の藤沢周さんや、法政オンラインに来て下さった姜尚中さんとも、毎年一緒です。芥川賞ほどではありませんが、受賞の知らせを待つ執筆者の方々にとっては、ドキドキの一日です。
朝日新聞記者三浦英之さんの『五色の虹――満州建国大学卒業生たちの戦後』が、第13回・開高健ノンフィクション賞に選ばれました。多様な民族が大学という空間のなかで、「言論の自由」という旗印のもと、どのように共存できるか、という壮大な実験だったわけですが、日本の植民地政策と戦争のなかで閉鎖されました。その卒業生たちがその後、どういう人生を歩んだかを、インタビューを通して書いたものです。
アジアにとってこの大学は何であったのか、審査の過程でも激しい論争がありました。

7月23日(木)

法政大学教員たちのうち、2014年度に研究と教育で高い評価を得て学外の賞を受賞した先生方に集まっていただき、お祝いしました。大学が叙勲者以外の受賞者をお祝いするのは初めてのことです。これから毎年、開催します。
ホームページでは頻繁に、先生方の受賞の知らせを見ることができると思います。理系文系問わず、優れた先生が多いからです。しかしホームページでたまたま見かけることはあっても、全体がわかりません。そこで皆さんが互いにそれを確認し、研究内容の一端を知り、副学長や理事や学部長、そして職員には、折に触れて学外に向かって話していただきたいのです。それがこの会のひとつの目的です。
もうひとつは私の経験に由来する理由です。私は4つの賞をいただいていますが、叙勲に相当するものを除いて、大学は関心を示しませんでした。若いときは「学外で良い仕事をしても大学は無関心なのだな」と思いました。優れた業績の若い先生が法政を離れていくこともよくありました。私は若い研究者たちにこそ、大学が皆さんの研究・教育の進展に非常に関心をもっていることをお知らせしたいと思いました。そして学内の優れた研究者たちとも交流し、法政大学に長く勤めて欲しいのです。
今後も、賞の規模にかかわらず、ぜひお知らせ下さい。私もその喜びを共有し、その成果を知りたいのです。

7月21日(火)

9月19日~23日に、目白の永青文庫(細川家の美術館)で、日本ではじめての春画展が開催されます。イギリスの大英博物館で開催された展覧会の日本版です。このことについて、細川護煕さん、石上阿希さん(国立国際日本文化研究センター)と、永青文庫で座談会をおこないました。雑誌『和楽』に掲載されます。
イギリスをはじめ、ヨーロッパ数カ国でおこなってきた展覧会は、なぜ日本では今までできなかったのか、考えさせられます。

7月20日(月)

後援会栃木県支部総会は今年40周年を迎えましたので、宇都宮までお祝いに行ってきました。大学の近況をお話しし、豊富な質疑応答もできました。
私の母方の祖母は、栃木の徳治郎(とくじら)の造り酒屋の娘でした。私の父方の祖母は、栃木の壬生町(江戸時代は壬生藩)の藩医の子孫でした。それぞれの地にお住まいの方々と、そういうお話もかわし、充実した一日でした。

7月18日(土)、19日(日)

17日(金)の夜から、IBM天城ホームステッドにおける「天城学長会議」に参加しました。初めての参加なのですが「世話人」のひとりになりましたので、今までも世話人会でテーマなどの準備をしてきました。
私立大学連盟では私大の総長、学長とともに数々の審議をしていますが、「天城学長会議」は国公立の総長、学長と意見交換できる貴重な機会です。11日におめにかかった大阪大学の平野俊夫総長とも再会しました。テーマは「大学のアドミッションを考える――中教審答申を受けて――」です。大学入試が大きく変わります。まだ詳細は分からないながら、それをどう受け止め、どう考えるべきか、議論は尽きませんでした。

7月17日(金)

岩波書店『世界』9月号のために、東京外語大名誉教授でフランス哲学者の、西谷修さんと対談しました。共同通信や毎日新聞に私が書いているコラムがきっかけでした。このところの重苦しい日本の空気が話題になっているにもかかわらず、西谷さんのポジティブでウィットに富んだ言葉や表情によって、とても楽しく対談させていただきました。

7月16日(木)

江戸川学園取手中学・高等学校で講演をさせていただきました。利根川の河原が拡がる、緑豊かで開放的な場所にありました。素晴らしい環境です。私は、これからの日本の教育の柱になる「思考力・判断力・表現力」のことを話し、「グローバリゼーションへの対応」について語りましたが、生徒たちはすでに思考力・判断力・表現力の教育を受けているようです。将来が楽しみな生徒たちでした。

7月14日(火)

NHKでラジオ「落語百選」の収録をしました。今日の演目は十代目桂文治の『猫と金魚』『やかん』でした。ゲストは十一代目の桂文治さん。楽しいかたでした。

7月12日(日)

付属三高の1年生全員を大学に招く「ウエルカム・フェスタ」がおこなわれました。高校1年生のときに大学を知ってもらい、これからの進路と勉強の目標を立てるスタートにしていただきたいと思います。これを皮切りに、機会あるごとに大学に足を運んで下さい。

昨年亡くなった社会学部教授、舩橋晴俊先生を偲ぶ「社会変革と学問-舩橋晴俊先生の遺志をついで」と題するシンポジウムが行われました。学内外から300人以上の方々が集まりました。大学のサステイナビリティ研究の基礎を作り、社会学部、大学院、図書館の改革に尽力して下さっただけでなく、原子力市民委員会の座長をつとめられ、研究のみならず日本の市民運動に大きな影響を及ぼした方です。ひとりひとりにとってこの会は、改めて研究と運動の両立について考えさせられ、それぞれの方法で遺志を継ぐ決意を促した会であったと思います。

7月11日(土)

大阪大学主催の「司馬遼太郎記念学術講演会」のために大阪に出かけ、講演と対談をおこないました。総合タイトルは「幕末への道―世界史のうねりと日本の知性」。
元ライデン大学教授で、大阪大学招聘教授で長崎大学教授でもあるハルメン・ボイケルス氏による「適塾―新しい世界への扉」、田中優子の「グローバリゼーションの中の江戸」、山内昌之氏の「徳川のグローバル化と明治維新」をそれぞれ話した後、山内さんとの対談でした。山内さんはイスラムを中心とする国際関係史の専門家で、東京大学名誉教授です。山内さんとは幾度か仕事をしてきましたが、今回はとりわけ、江戸時代について面白い対談ができました。
大阪大学は、司馬遼太郎の母校としてこのような催し物を連続しておこなっています。また、江戸時代の「適塾」を建学の基礎としており、「世界適塾」として発信しています。
平野俊夫総長との会話も、非常に興味深いものでした。総長は、人類の歴史は多様性による発展と戦争の歴史であり、だからこそ21世紀の大学の役割は「学問による調和ある多様性の創造」であると力説しておられます。耳を傾ける価値のあるスケールの大きなお話を数々伺い、楽しい時間でした。

7月10日(金)

昨日も今日も雑誌のインタビューがありましたが省きます。
連日会議ですが、それもいつものように省きます。
今日は「法政学への招待」講義をおこないました。1960-70年代の法政大学の様子や、そのなかで江戸文学に出会ったこと、そして大学のグローバル化の意味と歴史などについて、お話ししました。できれば、学生たちに直接話をする機会をもっと持ちたいと思いました。

7月8日(水)

全米州立大学連合 (American Association of State Colleges and Universities) 主催の「全米日本研究セミナー」(Japan Studies Institute)を、法政大学で受講する11名の大学教員が来訪し、総長として歓迎の挨拶をしました。
このプログラムは、日本についてこれまで勉強したことのない大学教員を対象にしたプログラムで、日本を学びたい全米の大学教員が勤務先の学長推薦を受けて応募し、採択された方々が来日するのです。米国の学生たちに日本を伝える、素晴らしい企画ですね。

7月7日(火)

今日のHOSEI ONLINEは女優であり作家でもある中江有里さんとの対談でした。法政大学通信教育部で文学を学んだ中江さんは、心から勉強を楽しみ、大学のなかで出会う多様な人たちとの交流からも多くのものを学んでおられました。私は中江さんの中に、生きている限り学び続け、成長しようとするほんものの「市民」を発見しました。

編集工学研究所の松岡正剛所長と、イシス編集学校からの依頼原稿と、岩波書店から出す予定の対談本再開の打ち合わせをしました。編集工学研究所は、大学図書館の配置と読書空間のデザインを始めており、イシス編集学校は、思考力と発想の柔軟性を鍛えるひとつのメソッドで、授業の一部として導入している大学もあります。対談本は昨年からはじめていましたが、あまりの忙しさに中断状態でした。松岡正剛さんのことは最近、日経新聞「交遊抄」で紹介しました。

7月6日(月)

人間環境学部の長谷川直哉先生が、佐藤正敏・損保ジャパン日本興亜火災・相談役(前損保ジャパン会長・社長)と、出口裕康・損保ジャパン日本興亜環境財団専務理事とともに、訪問して下さいました。まずは「おめでとうございます」から始まりました。長谷川先生のゼミ生は今年も日経STOCKリーグに入賞を果たしました。これで4年連続の快挙です。また、損保ジャパン日本興亜環境財団は、大学生・大学院生を、環境NPO・NGOのインターンシップにつなげる「CSOラーニング」という制度をもっているということです。さまざまな環境講座も開設しています。インターンシップはこれからますます重要ですので、お知らせしておきます。

7月4日(土)

私は今でも、多くの博士課程の学生を指導しています。今日はその中のひとりの、博士論文面接審査でした。博士学位授与にたどりつくには、多くの過程と手続きが必要で、論文掲載なども計画的におこなっていかなくてはなりません。中身の指導はもちろんですが、一人一人のプロセスをすべてメモして掌握し、手続きやタイミングをとばさないよう注意喚起しながら伴走していきます。面接のあとも、教授会や大学院委員会に認めていただく過程が続きます。気が抜けません。

本日の面接審査の副査のおひとりが、理工学部の横山泰子先生でした。横山先生から『理系ジェネラリストへの手引き』(日本評論社)をいただきました。理工学部創生科学科の先生方で編集、執筆した本で、教科書になっています。まさに総合大学ならではの、ジェネラリストとしての能力をつける方法を、創生科学科の先生方が真摯に考えて下さっていることがわかっただけでなく、言語学に関心をもってきた私にとっても、非常に面白い本です。自然科学に興味がある社会科学、人文科学の学生たちにもすすめたいです。

7月2日(木)

長期ビジョン「HOSEI2030」策定委員会を開催しました。策定委員会は、5つの委員会をまとめる親委員会で、委員会の座長、理事、副学長、総長から成ります。この日誌は、「会議報告はしない」ことを原則としています。多くの会議が平行して動いており、稟議の順番を守って決議まで辿り着くからです。しかし長期ビジョン策定の進捗は多くの方が関心をもっています。そこで開催されたことと作業過程だけでも、お伝えしていこうと思います。教職員の方には、HOSEI2030 NEWSでも、お知らせしています。

4月に中間報告を公開し、5月末までに質問受付の第一次締め切りを設けていましたので、今日はその回答を確認し、論点整理の作業に入りました。この後、7月末最終締め切りの各組織からの質問・意見を待ち、さらに論点をつめていって、充分な議論をしていただくために、全学に対し、総長による論点提起をおこなうこととしました。いよいよ法政大学は大きな改革期間に入ります。改革期間には、それに対応した体制が必要になります。

本日はその後、天野郁夫東京大学名誉教授に来ていただき、講演「これからの社会と大学改革の課題」を実施しました。策定委員会でまさに議論になっている課題が多く指摘され、それが今日の世界状況および日本の大学改革の歴史のなかでどういう意味をもつのか、どう立ち向かうのか、考えさせる講演でした。天野先生、ありがとうございました。

この日はさらに、全学広報戦略会議を開催しました。本学には入試広報、広報課による広報、それぞれの学部広報など、多くの広報が別々に動いています。ブランディング作業をすすめながら、それらの横のつながりが不可欠です。そのネットワークを目的として開催する会議です。