2018年度

Vol.110 絵画や郷土玩具から読み取る、人と犬の関係

2019年02月19日

2018年度

2019年1月31日(木)まで市ケ谷キャンパス ボアソナード・タワー14階の博物館展示室では、干支をテーマにした企画展「発犬展〜犬と歩んだわたしたち〜」を開催しました。本展では、犬にまつわる本学所蔵資料が展示されました。

近世文学・図画のコーナーには、正岡子規が幼い頃から愛読していた曲亭馬琴の長編小説『南総里見八犬伝』の草紙版や錦絵など、正岡子規文庫の資料が並びます。この小説の主人公は8人の若者(八犬士)で、役者錦絵『八犬伝芳流閣ノ場』には、そのうちの2人、犬塚信乃(しの)と犬飼現八が屋根上で一騎打ちをする有名な一場面が描かれています。A4用紙ほどの大きさですが、屋根の急傾斜も手伝って緊迫感が伝わってきます。

香蝶楼国貞画『八犬伝芳流閣ノ場』。右が信乃、左は長十手で応戦する現八

香蝶楼国貞画『八犬伝芳流閣ノ場』。右が信乃、左は長十手で応戦する現八

江戸時代に栄えた絵画の一大流派・琳派(りんぱ)を代表する尾形光琳(こうりん)の作品をまとめた絵手本『光琳画式』も、正岡子規文庫の資料です。あどけない子犬が題材に選ばれていて、当時も犬が愛玩の対象であったことがうかがえます。

本展は、本学の博物館学芸員資格課程の実習を兼ねており、実習生が収集または選定した郷土玩具も展示されています。

その一つが、江戸時代から安産を願い、新生児の誕生を祝う縁起物として親しまれてきた犬張子(いぬはりこ)です。全国各地に同じようなものが見られますが、これは江戸(東京)を中心に作られた郷土玩具で、竹や木の枠に紙を貼り付けて着色した張子細工の他に、粘土細工や焼き物もあります。大きさや表情もさまざまで、でんでん太鼓や傘を背負ったものもあれば、「犬」に「竹」を重ねると「笑」の字に似るという洒落から、竹製の笊(ざる)をかぶったものもあります。

また、「歴史と犬」「忠犬物語」「祈りの対象としての犬」をテーマとして実施したフィールドスタディーで、実習生が撮影した写真も展示されています。

合川珉和 模写『光琳画式』より

合川珉和 模写『光琳画式』より

取材協力:資格課程実習準備室

(初出:広報誌『法政』2018年11・12月号)

  • 犬張子。左から2番目のものは焼き物(信楽)。手前の小さいものは土鈴になっている

  • 実習生による展示準備の様子

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