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キャリアアドバイザー通信「自分の「ものさし」を育む」

  • 2020年10月15日
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今年前半はコロナ禍で様々な変化を実感する半年でした。

 

オンライン授業やソーシャルディスタンシングといった慣れない生活様式で、自分の価値観に変化があったという人もいるかもしれません。

 

お金に対する価値観はどうでしょうか。

 

コロナ禍では、どんなにお金があってもマスクが手に入らない事態が発生しました。マスクを買いたい人が急激に増え、生産が追い着かなくなりました。マスクを生産したくても、コロナ禍で工場に出勤できなかったり、原材料の供給が難しかったり、生産できたとしても輸送が困難な状況でした。

 

わたしたちがお金で買っているのは、誰かがつくってくれたものを、誰かが運んでくれて、誰かが売ってくれているサービスです。わたしたちは、常に誰かに何かをしてもらっています。自分ができなければできないほど、誰かにしてもらうしかありませんから、お金がかかります。

 

ひと昔前は、いい学校に入って、いい会社に入り、楽をしてお金をもらえるのが良い人生だ、という「ものさし」が大多数を占めていました。社会に出るまでにたくさんの能力を身につけたのに、せっかく身につけたその能力をなるべく使わないで、楽をしてお金をもらおうというのです。不思議だと思いませんか?できるだけ自分やらないで、人にしてもらう。自分でできないことが多ければ多いほどお金がかかるのに、です。

 

お金はないと困ります。でもお金だけがいくらあっても、どうにもならないこともあります。そして、お金は値打ちが変わってしまいます。今年の4月、国が輸入マスク取扱事業者に聞き取り調査をしたところ、従来5~7円だった使い捨てマスクの1枚当たりの仕入れ値が、4月中旬には3550円程度まで上昇していたそうです(*1)。お金の価値が7分の1になってしまった計算です。お金の正体は意外と脆いものです。いい会社に入って楽してお金をもらう「ものさし」で自分をはかってばかりいると、お金に過度に振り回されてしまうかもしれません

 

コロナ禍において、世界中の誰もが初体験をしています。敷かれたレールも答えもない暗中模索。「これで良かったのかな?」と、答えのない問いを探求する日々は、いろんなことを自分の「ものさし」で判断せざるを得ない場面が多くなります。

 

あなたは自分の「ものさし」を知っていますか?要はあなたの判断基準であり、モノの見方です。

「ものさし」は、五感を使ってたくさんの経験をすることで育まれます。見たり、聞いたり、食べたり、話したり、感じたり、考えたり。

 

キャリアアドバイザーの役割のひとつに授業支援があります。その中の「キャリア体験学習Cコース」という授業は、学生がチームを組み、連携企業から提示されたテーマに沿って、計画の作成、情報収集・整理、企画案作成、実施、評価までの一連を行う、企業と学生の共同プロジェクトです。連携企業の商品をSNSや広告を通じてPRしたり、需要がありそうな企業に売り込んだり、新商品の開発をしたりします。

 

‘プロジェクトは生ものだ’とよく言われます。やってみなければわからないのです。うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。活動の進捗に応じてタスクが変わったり、立てた仮説を試行してみたら予想外の結果になったりして、軌道修正が必要な場面も出てきます。学生たちは、課題に直面するたびに、悩み、話し合い、たくさん考え、道なき道を走っています。前はできなかったことができるようになったり、いままで味わったことのない感情を味わったりして、自分の「ものさし」が育まれています。

 

ここではキャリア体験学習Cコースを例にしましたが、体験型選択必修科目の授業では、同じ授業を履修している仲間を始め、インターン先や実習先等の関係機関の方々と言った、自分以外の「ものさし」に触れる機会になっています。自分にとっての当たり前は、相手にとっての当たり前とは限りません。互いの当たり前の違いは何なのかを認識し、違いを認め合うことで、多様性を受け入れるきっかけになってくれることにも期待しています。

 

(※1 出典:2020422日朝日新聞デジタル)