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温暖化対策の両輪 の1つとして(低炭素対策と)「適応策」が必要である、 しかし地方自治体では「適応策」の取組みが遅れている

2011年02月24日

「適応策」とは、現実の、もしくは予想される気候変化・気候変動とその効果に対して、自然システムあるいは人間システムを調整することをいいます。IPCCは第4次評価報告書(AR4)において、最も厳しい緩和(温室効果ガスの排出削減並びに吸収作用の保全及び強化)の努力を行っても、今後数十年にわたり、気候変動の更なる影響を避けられないことを指摘しました。
このため、国内外で、近い将来温暖化が深刻化することを前提に、温暖化適応策に関する取組みが進められつつあります。温暖化影響の発生は、日本でも例外ではなく、一方で、その影響度合いは、とくに地域ごとに温暖化影響の内容や程度が異なるため、地域特性を考慮した「温暖化適応型社会」を実現することが喫緊の課題となっています。

そこで、法政大学では、環境省環境研究総合推進費「S-8温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究(以下、S-8研究)」のテーマ2(1)「地域社会における温暖化影響の総合的評価と適応政策に関する研究」の一環として、地域の適応に係る取組み実態を把握することを目的に、地方自治体の条例や計画等の適応策実態調査(資料A)と、地方自治体及び地方研究機関を対象としたアンケート調査(資料B)を行いました。その結果を報告します。なお、こうした地域の取組動向の分析は、国内で初めての試みであり、今後の適応策の立案に資することが期待できます。

(1) 地球温暖化対策条例で適応策を位置づけている地方自治体は2県であり、
計画的な適応策に着手している自治体は、これを含めて3団体に止まります。
(平成22年10月時点)
(2) アンケート調査では、温暖化影響の予測や適応策の計画に取り組んでいる団体は
2~3割と回答されました。
しかし、具体的な適応策は、農業分野等で限定的に実施されている状況です。
情報やノウハウの不足が、地方自治体における取組みの障害になっています。
(3) 地方研究機関が実施している温暖化影響・適応策に関する研究として
74件の回答が得られました。
このうち、「農業・食料」分野の研究が7割と多くなっています。

以上のように、適応策に関する地域の施策や研究が総じて遅れている状況にあります。このため、法政大学では、S-8研究の一環として、適応策に関する情報とノウハウの共有、モデルスタディの推進と検討のツールの開発等を進めるため、平成23年度に「仮称:温暖化影響・適応に係る地域コンソーシアム」の設立(資料C)を予定しています。また、平成22年2月24日(木)には、地域コンソーシアム設立に向けた準備的会合を開催します。


本報告は環境省環境研究総合推進費(S-8温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究)の支援により実施されています。

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【問い合わせ先】
法政大学 地域研究センター 温暖化適応プロジェクト
代表:田中充  担当:白井信雄、小河誠、木村浩巳
TEL: 03-3264-4177  E-mail:tekiou@ml.hosei.ac.jp

資料A
地球温暖化による地域への影響・適応策への取組み実態調査(文献調査)の結果の概要

1. 調査の目的

地方自治体における温暖化の影響の認識とその対策の検討及び取組状況を公表資料から調査し,地方自治体の適応策の取組実態を把握することを目的として実施した。

2. 調査の概要

(1)調査対象 全国の47都道府県、19政令指定都市の計66自治体
(2)実施時期 平成22年10月時点
(3)実施方法 地方自治体がHP(2010.10現在)上で公表している計画(総合計画・実行計画、環境基本計画、地球温暖化実行計画(区域施策編))、条例(環境基本条例・地球温暖化対策に関する条例)から温暖化の影響・適応策に関する記述内容を調査した。

3. 調査結果

  • 地方自治体の地球温暖化影響・適応策の取組状況をレベル分けした結果を、表1に示す。「地域の温暖化影響について調査し、その記述が見られる」(レベル2)の自治体の割合が最も高く、45%である。次いで、29%の自治体が「一般的な温暖化影響についての認識に止まる」(レベル1)であり、両者で全体の3/4(74%)を占める。
  • 「一部の個別分野で対策・事業を実施する」(レベル3)の自治体は18%と少ない。また、「計画的・体系的に取組みを実施、または適応に関する条例・計画の検討に着手している」(レベル4)の自治体は5%(3自治体)に止まる。
  • 地球温暖化対策に関する条例では、国の法律(地球温暖化対策基本法案)に先んじて、2県(埼玉県と鹿児島県)において「適応」に関する規定がなされている。これら2県では、条例第2条において、地球温暖化対策には、緩和策(温室効果ガスの排出削減並びに吸収作用の保全及び強化)と適応策(地球温暖化への適応を図るための取組)の2つがあることを定義している。
    (例)埼玉県地球温暖化対策推進条例(平成21年3月制定)第2条 二(定義)
    地球温暖化対策:温室効果ガスの排出の抑制並び吸収作用の保全及び強化(「温室効果ガスの排出の抑制等」という。)その他の地球温暖化の防止又は地球温暖化への適応を図るための取組をいう。

表A-1 地方自治体の地球温暖化影響・適応策の取組み状況のレベル

レベルとその基準 自治体数 (比率)
レベル0 ・検討なし 2 (3%)
レベル1 ・一般的な温暖化影響についての認識に止まる
・具体的な地域の温暖化影響について調査・把握はない
・適応策の情報収集を実施している
<一般的認識レベル>
19(29%)
レベル2 ・具体的な地域の温暖化影響について調査を実施、把握している
・適応策に踏み込んだ記述がある
・適応策が必要な分野は特定されているが、実施はない
・検討組織が設置されている
<温暖化影響調査レベル>
30(45%)
レベル3 ・適応策が特定され、一部の分野では計画に位置づけ、実施している
<一部分野で実施レベル>
12(18%)
レベル4 ・適応策の計画的、体系的な取組みに着手している
・適応に関する条例や計画の策定に着手している
<計画的取組み着手レベル>
3 (5%)
レベル5 ・適応に関する条例や計画が策定され、具体的な行動を実施
・国、他の自治体等との連携・協力体制が構築されている
・住民・事業者にも適応策の必要性が周知されている
<他自治体や住民等と協力し体系的取組みを実施レベル>
0 (0%)

計 66自治体

資料B
地球温暖化による地域への影響・適応策への取組状況に関するアンケート調査結果の概要

結果報告(PDF 340kb)

1. 調査の目的

本調査は、地球温暖化・気候変動による影響の把握や適応策に関する地方自治体、公設試験研究機関の取組み状況の把握、及び、今後、検討予定の(仮称)「地域における温暖化影響・適応研究データベース」及び(仮称)「温暖化研究地域センター」(温暖化影響・適応に係る地域コンソーシアム)への参加意向やニーズを把握することなどを目的に実施した。

2. 調査の概要

(1)調査対象

  • 地方自治体:全国の47都道府県、19政令指定都市
    (九州地方の動向を把握するため同地方の中核都市6自治体を含めた)
  • 公設試験研究機関:「全国試験研究機関名鑑」に掲載されたすべての公設試験研究機関のうち、8月に実施した別途調査で、地球温暖化の影響や適応策に関する研究を実施していると回答した機関。なお、これに該当しないが、関連する研究を実施していると考えられる他の公設試験研究機関にも回答を依頼。

(2)実施時期

平成22年9月30日(木)~10月14日(木)、最終締め切り12月25日

(3)実施方法

WEBサイト及び質問紙によるアンケート調査

3. 調査結果

(1)回答状況

  • 地方自治体
    送付数 72件  回収数 69件  回収率 96%
  • 公設試験研究機関
    送付数 131件  回収数 70件  回収率 53%

(2)主な調査結果

【地方自治体】

  • 適応策の取組みの必要性について、適応策全般及び分野別(水災害・沿岸被害、水環境・水資源、農業・食料、森林・自然生態系、健康、伝統文化・暮らし・産業)に尋ねたところ、ほとんどの分野で「大変必要性がある」「必要性がある」との回答が8割以上を占めた。多くの地方自治体が適応策の必要性は認識しているといえる。
  • 適応策に関する総合的・分野共通的な取組みの実施状況を尋ねたところ、「温暖化影響や適応策に関する普及啓発」の実施率は58%であったが、それ以外の計画の策定、温暖化影響の把握・予測等の項目は10~30%台の実施率に止まり、適応策に関する実質的な取組みがそれほど進んではいない実態である。
  • 適応策を実施する上での課題として、「施策実施に必要な情報が確保されていない」(39件)、「施策実施の技術・ノウハウが十分でない」(28件)、「施策実施の予算が確保されていない」(26件)、「関係部局間の連携・協力が十分でない」(19件)等が上位となった。現状では、適応策に関する必要な情報・ノウハウ等が十分でない点が障壁となっている状況がある

【公設試験研究機関】

  • 影響・適応策に関して現在実施している研究テーマとして、74件のテーマの回答が得られた。分野別では「農業・食料」が68%と最も多く、「モニタリング」「影響予測・評価」「適応策」「分野横断」等の分類別では「適応策」が59%と最も多かった。
  • 研究成果の地方自治体における政策への活用状況としては、「適応策の立案・実施に活用」(23件)が最も多く、次いで「住民や事業者に対する普及啓発に活用」(15件)、「地域で現在生じている温暖化実態・影響の把握・評価に活用」(10件)等と続いた。

【共通(データベース、コンソーシアムへの参加意向)】

  • 今後、S-8研究課題で検討予定の(仮称)「地域における温暖化影響・適応研究データベース」及び(仮称)「温暖化研究地域センター」(温暖化影響・適応に係る地域コンソーシアム)への参加意向では、「データベースの利用」や「コンソーシアムから提供される情報等の活用」に関する意向は比較的高かった(「ぜひ参加したい」「参加したい」を合わせた割合が5~7割)。
  • データベースでは、基礎情報の一元的なデータベースや全国の温暖化影響・適応に係る研究成果の検索機能、コンソーシアムでは、適応策ガイドラインや共同研究の場・きっかけの提供等に対するニーズが高かった。

資料C
仮称「温暖化影響・適応に係る地域コンソーシアム」について

目 的・温暖化の地域影響・適応策に関する研究情報データベースの運営を行うとともに、温暖化影響や適応に関する研究成果の共有、人材交流、普及啓発等を行う活動主体として、コンソーシアムを構築する。
・これにより、今後の地域・自治体における温暖化影響と適応研究、及び適応策の一層の促進に資する。
参加 参加者 ・研究機関等(全国の地方研究所、大学・専門研究機関等)
・行政(全国都道府県、市区町村等) 等
参加 方法 ・希望がある機関・団体は、運営者の承諾を得て参加。公開イベントも開催する。
運営 運営者 ・当面は法政大学内に事務局を設置する。参加機関となる主体及びS8関係機関との調整を行いながら運営する体制とする。
運営方法・年間の事業計画を企画し、運営を行う。
・初年度の運営は、情報交流会を中心とする。
・活動成果は、参加者に報告、還元する(サイト上等で報告)。
・環境省、文部科学省等の関連プロジェクトと連携する。
活動の内容(例) ・温暖化の地域影響・適応策に関する研究情報データベースの管理運営
・温暖化影響・適応関連の研究、政策立案、実施等に関するノウハウ、情報の共有(影響把握・計画支援ツールの開発・提供、モデルスタディの成果共有、適応策ガイドライン作成・提供等)
・温暖化影響・適応研究に関する人材研修、温暖化影響等に関する環境教育教材の開発・頒布等を検討する