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法政大学日本統計研究所について
法政大学規定集内日本統計研究所規程には目的およびその具体化の事業について、次のようにうたわれています。

(目的)
第2条 本研究所は,統計に関する総合的調査研究を目的とする。

(事業)
第3条 研究所は前条の目的を達成するため,次の事業を行う。
(1)統計にかかわる理論的並びに技術的研究に関すること。
(2)研究及び調査の成果の発表に関すること。
(3)研究資料の収集,整理及び保管に関すること。
(4)その他目的達成に必要な事項に関すること。
本研究所は、研究活動並びに政府自治体等の官及び各種学会と積極的に連携を図りつつ、様々な事業を企画、実施することを通じて、わが国の統計の発展に貢献します。
 
日本統計研究所は以下の体制で運営しております。
所長及び所員(2017年度)
■所長
菅 幹雄 法政大学経済学部教授
■所員
森 博美 法政大学経済学部教授   小沢 和浩 法政大学経済学部教授
坂本 憲昭 法政大学経済学部教授 中村 律子 法政大学現代福祉学部教授
北浦 康嗣 法政大学社会学部准教授    
■名誉研究員
喜多 克己 法政大学名誉教授   伊藤 陽一 法政大学名誉教授
■客員研究員
福島 利夫 専修大学経済学部教授   坂田 幸繁 中央大学経済学部教授
山本 健兒 九州大学大学院経済学研究院/大学院経済学府教授 御園 謙吉 阪南大学経営情報学部教授
高橋 朋一 青山学院大学経済学部教授 水野谷武志 北海学園大学経済学部教授
長谷川普一 新潟市都市政策部GISセンター主事 宮川 幸三 立正大学経済学部准教授
杉橋やよい 金沢大学経済学部准教授 栗原由紀子 立命館大学経済学部
小野寺 剛 環太平洋大学経営学部講師 安藤富貴子 法政大学経済学部非常勤講師


法政大学日本統計研究所年表

はじめに
■第一章 創設から法政大学との合併まで
├1.日本統計研究所の設立と初期の活動-1940年代後半
│  ├研究所の設立
│  └戦後政府統計制度再建過程での貢献

└2.法政大学への移転、研究の発属と停滞、再開から付置研究所へ―1950〜1980年代前半
法政大学への移転
研究活動の活発化
研究の停滞
研究活動の再開と付置研究所への転換

■第二章 法政大学付置研究所として
├1.多摩キャンパスへの移転と活動の定常化―1980年代後半
│  ├新たな研究スペース
│  ├研究活動が軌道に乗る
│  └図書室機能の強化

└2.研究の拡大−1990年代の活動と今後の課題
多様なテーマへの取り組み
<統計調査環境実態調査>
<地方統計・民間統計>
<人口統計・労働力統計・労働統計>
<ジェンダー統計>
<ミクロ統計データ>
<アジア諸国の統計制度>
<2000〜2001年世界人口センサス国際ワークショップ>
図書の充実とサービス体制

■第三章 2000年以降の活動
1.研究テーマと成果
2.教育
3. 図書室・事務体制など
1941年 大蔵省内に国家資力研究室設立
1943年
日本銀行内に国家資力研究所設立
1946年6月
財団法人 日本統計研究所に改組・設立(所長理事ー大内兵衛)
1953年3月
法政大学構内へ移転
1974年10月
『法政大学日本統計研究所蔵書目録』刊行
1976年3月
『研究所報』創刊
1981年4月
法政大学の付置研究所となる
1985年
多摩キャンパスヘ移転
2006年11月
2006年度の大内賞を受賞する
 日本統計研究所は1946年に法政大学の外部で創設された。この創設と以後の沽動において、法政大学総長を永く勤めた大内兵衛を中心に法政大学関係者が一貰して大きく関わっていた。研究所は1953年に法政大学富士見校地の53年館(旧大学院棟)に居を移して以降、施設的にも関連を持つようになる。以後、学生運動の影響もあった1960年代後半の停滞時期をはさんで、1970年代以降順次法政大学と活動を拡大し、72年から大学の財政的支援を受けるようになり、さらに81年に法政大学付置研究所となる。85年に経済・社会両学部の移転とともに、多摩キャンパスに移って、研究所のスペースを拡大し、多様な活動を展開してきた。研究所は出発点での問題意識を一面では継承し、他面では時代の変化・要請に対応しながら、活動内容を発展させてきている。以下、その活動を、財団法人としての発足とその後について触れ、付置研究所以降の活動に重きを置いて述べる。
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第一章 創設から法政大学との合併まで
1 日本統計研究所の設立と初期の活動 ―1940年代後半

(1)研究所の設立
 第二次世界大戦中の1943年に、日本銀行内に「国家資力研究所」が設立された。ここでは、1941年に大蔵省内に設立された国家資力研究室での研究を受け継ぎ、当初、国家資力、重要経済指標、所得分布、物価等をとりあげようとした。その実際的成果はケインズ理論の紹介・検討などマクロ経済理論に置かれ、研究所の「研究第〇号」および「資料甲〇号」として発行された。 第二次世界大戦での敗戦に際して、日本銀行総裁であった渋沢敬三は、日本の統計が壊滅状態であることから、専門の統計研究機関を設立する必要を覚え、これに賛同する大内兵衛他の参加を得て、国家資研究所を日銀から分離して独立の財団法人「日本統計研究所」に改組した。
 日本統計研究所の改組・設立の許可は、1946年6月27日である。その創立総会(同年4月12日)でとりあげられた設立趣意書(日本統計研究所「財団法人日本統計研究所設立ノ趣旨」1946年)は、官民での統計調査の総合的再検討、新たな調査の企画・実施、官民・中央と地方の統計実務者の待遇、統計への知識の改善、国民の統計への関心と知識の増大等の必要をあげた。このために各方面の緊密な協調が必要な中で、我々もまた若干の寄与をしたいと述べている。そして、「研究所は、統計理論及び技術の研究を行い、日本及び各国の統計を比較検討すると共に、我が邦の官庁及び民間の諸機関と連絡しつつ、日本における統計事情の改善発達を促進することを期するものである」という。総会で決定した出発時の役員には、所長理事:大内兵衛、専務理事:高橋正雄、常務理事:大沢三千三、西沢基一、理事:有沢広巳、中山伊知郎、森田優三、近藤康男、監事:美濃部亮吉、脇村義太郎、研究員には吉田義三、副島種典、小林久好、大島清、西田勲、山本正治、岡田実、松川七郎、藤田武夫他の名前がある。

(2)戦後政府統計制度再建過程での貢献
  この研究所が第一に着手したテーマは、「日本統計制度をどう再建すべきか」であった。しかし、渋沢敬三が日銀を辞め、日銀からの出資が縮小されたため、事業は、内閣審議室が主催した官民合同の統計研究会である「統計懇談会」(1946年5月下旬より)に、さらに、1946年7月19日の閣議で内閣に設置が決定された「統計制度改善に関する委員会」に継承された。この委員会の答申に基づいて、12月28日に行政委員会である「統計委員会」が設立される。これによって、これ以降の日本政府の統計活動は、この統計委員会を調整機関として、大きく再建の過程を歩むことになる。ここで「統計委員会」の設立までの検討を行った「統計制度改善に関する委員会」は、実質的に、統計研究所の構成員によって担われた。さらに統計委員会の委員の人選や委員会の運営も統計研究所に任せられているとの発言が、統計研究所の議事録*に示されている。
*「財団法人日本統計研究所理事会議事録」第19回、1946年11月5日。
行政委員会である統計委員会の発足後の政府統計における大きな事業は、統計組織の整備と統計関係法規の制定(1947年3月17日、第92帝国議会で可決、26日公布、5月1日施行)であった。これらの検討においても日本統計研究所が大きく寄与している*。統計委員会発足直後の時期を過ぎてから、統計研究所は、主として、経済問題に関する統計的分析ならびに統計制度、統計行政ならびに統計の史的発達に関する研究に重点を置いて作業を続けた。 *日本統計研究所「戦後統計制度再建過程」資料編3冊、記述編1冊。
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2 法政大学への移転、研究の発属と停滞、再開から付置研究所へ―1950〜1980年代前半

法政大学への移転
政府レベルでは・統計委員会は、1947年7月3日を以って廃止され、その機能の一部が行政管理庁統計基準部に委ねられた。その間、統計研究所においては、1949年12月に役員の改選があり、専任研究員制度もできて研究が多様化する。その後、約20年間にわたる期間の研究員には、兵藤次郎、中村隆英、石川邦男、泉俊衛、宮崎三四郎、加藤伸子、森田稔、石垣今朝吉、宮本邦男、相原千草がいる。 1953年3月27日の統計研究所理事会は、「本研究所寄付行為第4条に定むる事業は、これを法政大学のためにも行い将来本研究所を法政大学と密接な関係に置くのを適当とする」とし、「ついては本研究所の研究室を法政大学内に移したく、かつ右決議の実行に遺憾なからしめんがため、理事会に法政大学関係者を更に両一名参加願」うという。研究所と法政大学との間の文書は、所長大内兵衛と、法政大学総長大内兵衛との間で交わされた*。これによって研究所の理事に法政大学経済学部長友岡久雄、経済学部教授錦織理一郎が就任し、53年館 (旧大学院棟)に居を移し、4月7日の理事会は、法政大学で行われた。 *「財団法人日本統計研究所理事会議事録」1953年。

研究活動の活発化
この1950年代から1960年代半ばまでの統計研究所は、活発な研究.出版活動を展開した。すなわち、55年5月から57年1月にかけての日本経済分析シリーズ(計画、12冊中7冊刊行―国民所得、国家資金、労働賃金、国民貯蓄の循環、農家経済、独占、人口と雇用-中央経済社)、創立10周年事業のひとつとして大内兵衛監修・相原茂編集代表『日本経済統計集|明治 大正 昭和|』(1958年、日本評論社)、55年からの「わが国統計調査の体系」研究プロジエクトの集大成である『日本統計発達史』(1960年東京大学出版会)、62年3月から64年3月にかけての『日本統計制度再建史―統計委員会史稿―』記述編、資料編3冊、資料編(年表、補遺)の5冊(タイプ刷)、を代表にして多くの分野にわたる小冊子が用意された。

研究の停滞
しかし、60年代後半から70年前後にかけて、補助金の減少、研究員の転出、大学紛争の影響等々で、活動は縮小した。現・旧の統計研究所関係者による相原茂・鮫島龍行編『統計日本経済―経済発展を通してみた日本統計史―』(1971年、筑摩書房)の出版が注目されるが、研究所自体では、法政大学経済学部専任教員、是永純弘、喜多克己の兼任の下に、所蔵資料が管理されているだけの状態にあった。そしてさらに、一部の「自治会学生によってバリケード封鎖された。このため……研究所への出入りは不可能となり資料類も一部は風雨にさらされ散乱するにまかせられるという荒廃状態を呈した*」。
*喜多克己「日本統計研究所」「法政大学百年史」1980年、806頁。

研究活動の再開と付置研究所への転換
53年館での研究活動が可能になった72年に理事会で次の判断が下された。すなわち、3月9日の理事会において、「1、昭和47年4月1日付をもって当財団の名称を「財団法人法政大学日本統計研究所」と変更する。2、研究所の運営に当たっては、法政大学の教職員及び院生.学生に対し、その所蔵する図書資料等の利用上の便宜を計り、その他大学の教育研究の目的にそうように配慮する。他方、研究所の運営に必要な事務室、書庫等及び資金については、主として法政大学の援助に期待するものとする。3、将来、研究所が解散する場合は、その所蔵する図書資料等の財産は法政大学に寄付するものとする*」とされた。財団法人法政大学日本統計研究所」の名称については、認可が降りなかったが、理事には、大内兵衛、有沢広巳、美濃部亮吉、森田優三、錦織理一郎、鮫島龍行、相原茂、大島清の従来役員に加えて、常務理事として法政大学学務理事の増島宏、専務理事に法政大学統計学担当教授として喜多克己が加わった。そして4月から兼任研究員として喜多克己、伊藤陽一、石川淳志がついた。また、職員として小宮栄子、広田真人が勤務した。

*「財団法人日本統計研究所理事会議事録」1971年度第一回理事会、1972年3月9日。

これによって、まず蔵書目録の編集が行われ、1974年10月に『法政大学日本統計研究所蔵書目録(昭和49年3月末現在)』を刊行、次いで、「統計制度をめぐる諸問題」『研究所報』(No.1 1976年5月)と『統計研究参考資料』(No.1 1976年5月)の刊行も開始した(以下『所報』、『参考資料』と略記)。1977年から経済学部の兼任研究員として森博美が加わった。以後、『所報』は、No.2消費者物価指数、No.3統計教育、No.4、5統計環境実態調査、No.6家計調査、No.7産業連関分析、No.8国際セミナー、ハンガリーの経済と社会、をとりあげる。この間・研究所は53年館から第一校舎2階に移動し、3研究室と会議室、第一校舎図書館書架跡に蔵書を移動した。研究所スペースが拡大されるなかで、活動が次第に軌道にのる。
さらに1981年度に、日本統計研究所は、法政大学付置研究所とされ、全学機関として位置づけられ、所員は各学部からの兼任研究員によって構成されることになった。
第二章  法政大学付置研究所として
1多摩キャンパスヘの移転と活動の定常化ー1980年代後半

新たな研究所スペース
経済・社会両学部の多摩移転に際して、1985年に統計研究所も多摩に移転し、図書館・研究棟5階に、大原社会問題研究所、新たに創設された比較経済研究所とともに研究所フロアの一角を占めるに至った。ここには、閲覧コーナーと書架を配置し、臨時職員2名の交替制で1日1名が勤務する事務のコーナーを持ち、市ヶ谷時代に比べると格段の違いをもって環境が整えられた。所員は経済学部を中心に、社会、経営、文学、教養の関係学部からの兼担研究員を以って構成された。市ヶ谷から移動してきた図書は、5階の書架コーナーと図書館・研究棟地下3階の研究所書庫に収納された。
研究所の運営は、年2回の所員会議において、予算、所員構成、活動が審議され、これに基づいて研究活動・事務作業が進められるようになった。

研究活動が軌道に乗る
研究に関しては、統計研究所のこれまでの伝統を受け継ぎ、さらに拡大して、統計制度・行政研究、地域統計研究、社会調査に重きを置くこととし、所員と政府統計関係者および外部の統計関係者の協力を得て、プロジェクトがしばしば組織され、研究会が持たれるようになった。研究活動の成果は、『所報』(原則的に年1回発行)、『参考資料』(年3ないし6回発行)、そしてワーキング・ペーパーなどにまとめられ、統計機関、研究機関、国内大学等機関と、統計家、統計研究者に広く配布されている。
この時期の研究活動としては、まず日本の分野別主要統計の概略と問題点について、関係省庁の統計担当者を迎えてヒアリングと討論が行われ、所報にまとめられた。とりあげられた分野は人口・労働、農業、金融、消費・家計である。『所報』では、また、外国人労働者、統計法規・統計制度がテーマとされ、『参考資料』では、産業連関表、ハンガリー経済、ソ連統計、中国統計、地方統計、アメリカ農業労働と関連統計がとりあげられた。1988年には3ヶ年間のプロジェクト「労働統計―国際比較―研究」が組まれた。ここではワーキング・ペーパーとILO労働統計家会議決議の原文・翻訳の集成、政府関係諸文献での統計表タイトル・リストの集成等の資料が用意された。このプロジェクトの成果は後に、伊藤陽一・杉森滉一他訳『国際労働統計―手引きと最近の傾向』(1990年、梓出版社)、伊藤・岩井浩・福島利夫編著『労働統計の国際比較』(1993年、梓出版社)にまとめられた。
教育との関わりでは、統計関係の大学院生が研究所の蔵書を利用し、また研究会に参加するとともに、上記出版物にも翻訳を中心に研究作業が反映されるようになった。また学部生は、統計学授業との関連や、ゼミナールでの学習あるいは卒論作成のため、研究所の資料を利用するようになった。

図書室機能の強化
これとともに、統計研究所の特性を生かした図書室機能の充実に向けて、蔵書の整理・充実がはかられた。第一に、明治・大正・昭和第二次大戦時までの統計学文献の蔵書で独自の役割を担った。これに国家資力研究所と財団法人日本統計研究所時代の諸冊子を合わせ、大原社会問題研究所に移管した旧高野岩三郎の蔵書と、さらに戦後文献の蔵書を加えると、日本の統計学史と統計史に関わる大きなコレクションをなしている。この蔵書は上杉正一郎氏、西平重喜氏からの蔵書寄贈によって一段と強化された。第二に、全学の中では、ソ連・東欧等の計画経済国家の統計と雑誌の蔵書が独自のものであった。多摩キャンパスへの移転とともに、法政大学の図書館は二分され、統計資料に関しては、多摩図書館は国際統計資料、市ヶ谷図書館は国内統計資料に重点がおかれた。そこで、統計研究所は、多摩図書館との分業の形で、第三に、国内統計資料の充実をめざして主要統計を揃えた。第四に、地域統計研究との関連で、東京都及び首都圏を中心とする自治体統計の収集をはかる地域統計センターの機能をめざした。統計関係の国内外のレファレンス資料も用意された。
閲覧に関しては、研究所での閲覧は、統計原本・関係文献を手軽に利用できる。そして多摩図書館4階とあわせれば大半の内外統計書にアクセスできるという他所にみられない統計研究の優位性を持つに至った。
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2 研究の拡大―1990年代の活動と今後の課題

多様なテーマへの取り組み
研究所の運営体制はこれまでの体制を継承している。研究活動は、国際的、国内的に政府統計活動の現在と今後に関わる重要問題を中心にテーマとし、より活発・多様になってきている。
とりあげられたテーマは、統計環境、地方統計・民間統計、人口・外国人労働力・労働統計であり、プロジェクトとしてとりあげられたのは、ジェンダー統計、ミクロ統計データ、アジア諸国の統計制度、さらに2000〜2001年世界人ロセンサスである。

〈統計調査環境実態調査>
統計調査実施にあたっての諸困難を、統計調査員、被調査者に対する実態調査によって確認する狙いをもって、1978年以降、九州大学のグループを中心として行われてきた作業に、日本統計研究所も協力した。1979、80年の『所報』が、これにあてられた後、94年の被調査者調査の結果を95年度の『所報』に、95年の調査員調査の結果を98年度の『所報』にそれぞれ掲載した。

〈地方統計・民間統計>
日本の地方統計に関しては、その重要性にもかかわらず、政府統計機関においてもとりあげが不足し、全体としての発行状況、かかえている問題に関して不明な点が多い。統計研究所では、この調査・研究の空白を埋め、地方統計研究への関心が高まるようにテーマとして重視してきた。『所報』No.17でとりあげ、『参考資料』No.30では「地方統計総覧」を編集した。民間機関が独自の調査に基づいて発行する統計も、政府統計の空白を埋めるものとして、あるいはそれ以上に重要性を増してきている。『所報』No.23でとりあげ、さらに『参考資料』No.55に「民間統計ガイド」を用意した。

〈人ロ統計・労働力統計・労働統計>
人口、労働統計に関しては、『所報』No.10でとりあげたが、厚生省人口動態統計に関する研究が『参考資料』No.53、No.59、No.64で、外国人労働者に関する実態調査の成果が『所報』No.20で、また労働統計に関して、翻訳『労働時間-短縮の可能性を評価する―』(1996年、梓出版社)が出版され、また特に、合衆国労働統計局の国際労働統計比較表が、『参考資料』No.52、No.62でとりあげられた。

〈ジェンダー統計〉
ジェンダー統計とは、1975年の第1回国連世界女性会議を大きな契機として男女平等・共同参画をめざす国際的な運動のなかで、統計生産と分析をこれにそうものにしようとする理論であり、運動である。研究所は、92年から93年にかけて「女性と男性の統計」プロジエクトを組み、日本で最初のジェンダー統計に関する本格的研究書『女性と統計―ジェンダー統計序説―』(1994年、梓出版社)にまとめた。さらに前後してジェンダー国際動向の主要な文献を日本に紹介する『参考資料』No.34、39、42、45、49、51を発行し、さらにILO文献の『コンパラブル・ワースとジェンダー差別―国際的視角から―』(1995年、産業統計研究社)、ならびにスウェーデン統計局『女性と男性の統計論 ―変革の道具としてのジェンダー統計―(1998年、梓出版社)を翻訳・出版した。これに併行して、国連の担当機関インストローの雑誌と文献、そしてジェンダー統計書の収集につとめており、ジェンダー統計関連文献のコレクションもユニークである。

〈ミクロ統計データ〉
1996年度から1998年度まで、研究所は文部省科学研究重点領域研究「ミクロ統計データ」に人的・物的に協力し、その成果の一部を研究所の出版物とした。ミクロ統計データとは、統計調査の際に回収した個票から個人.個体を識別できる項目名称、住所等)を除去するなどの秘匿性保護措置をほどこした匿名個票データ・セットであるこのデータを利用することによって、集計化して公表される通常の統計表によるよりも、遥かにきめ細かで客観的分析が出来る。国際的には活用されてきているが、日本の政府統計においては、未だその活用のための制度が整えられていない。研究所では、このプロジェクトに関わる『参考資料』を発行し、さらに、成果を『所報』No.25にまとめて出版した。これは、ミクロ統計データの社会制度的側面について、欧米の経験をも調査.報告した包括的報告書になっている。関連する調査・資料等が、資料No.1〜No.7、また、ASA(アメリカ統計学会)の部会要項や合衆国センサス局会議のプロシーディングなど国際的主要関連雑誌等目次一覧の集成としてBNo.1〜No.4も用意された。統計研究所は、イギリスで人ロセンサス・ミクロデータの提供機関になっているマンチェスター大学CCSR(Centre for Census and Survey Research)とは、一定の連携関係にある。
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〈アジア諸国の統計制度〉
アジアの統計についての関心は、日本とアジアが社会的・経済的に様々な点で深い関わりがあるために、潜在的には大きなものがあり・その際、各国統計制度・政策の研究は欠かせない。研究所は、1995年度から、アジア各国の統計状況について情報が集中し包括的に検討しているエスキャップ統計委員会に注目し、その会期ごとの日本からの参加報告と原本の集成、アジア各国統計制度・政策に関して、日本でこれまで発表された論文記事についての集成を作成してきた。これら文献集成は、今後の検討のための前提・基礎作業になるものである。この作業は今後も継続される。関連して中国統計制度についても中国からの寄稿を仰ぎ『参考資料』No.41で特集した。その他『参考資料』では、合衆国労働統計局資料、産業連関表、合衆国センサス局SIPP調査票、統計の品質、フィンランドのレジスターベースの統計生産、等がとりあげられた。

〈2000〜2001年世界人ロセンサス国際ワークショップ〉
1999年10月31日に、研究所主催の初めての国際会議として「2000〜2001年世界人口センサス国際ワークショップ」が多摩キャンパス百周年記念館で開かれた。この会議には、合衆国センサス局からE・C・ホイ、R・P・シン、ドイツ連邦統計庁からD・ビーラウ、イギリス・マンチェスター大学CCSRからA・デールの各氏を招き、日本から濱砂敬郎(九州大学)、石田晃(敬愛大学)、森博美(法政大学)を論者にたてて行われた。ITの活用が進むなかで、一方には詳細データの要求、他方には費用・人員・回答者負担の削減、プライバシー保護の要求がある。こうした環境下で主要先進国のセンサス実施の現状と問題点、解決策等について国際討議を行い、国際的に貢献する狙いであった。外国からのゲストは人ロセンサスについての責任者・エキスパートであり、また主要な会場参加者を交えて、会議は活発な討議をもって成功裏に終った。多摩学務部からの協力も大きかった。会議で発表された論文は、『所報』No.26にまとめられ、内外に広く配布された。
図書の充実とサービス体制
先にも触れた研究所独自の蔵書の充実にその後も努める一方で、ジェンダー統計、ミクロ統計データ関連文献等が新たなコレクションになった。また、特に学生の統計学習のために、統計学テキスト、白書類、さらに、少子・高齢化、福祉・介護、環境関係の一般文献・統計資料の強化・充実がはかられつつある。またアメリヵ統計学会、BLS(労働統計局)、イギリス統計ニュースなど外国統計関係雑誌の購入を拡大している。こうした蔵書の活用ならびに図書サービスの強化のため、データベース化の作業を継続している。大学院生の利用は恒常的であり、学部学生も、特に経済学部の統計学授業に統計研究所の見学.利用がおりこまれていることもあって、研究所を利用するようになった。統計活動・統計研究に関して、国際機関・外国、特にアジア諸国と日本との、また国内では政府と民間との、架け橋となるべく、国民的視野と国際的視野に立ったさらなる先見的取り組みをめざす必要がある。また、統計に関わる国際的・国内的情報を教職員や地域住民へ提供し、教育活動にいっそう寄与することが求められる。ここでは、図書館および他の研究機関との分業.連携で、統計に関する所蔵図書の充実を含む図書室的サービスの強化が必要である。さらに、国内外への研究成果の発信、情報提供・交換、そして地域・学内へのサービス提供にあたっての、情報技術の活用 ―ホームページの強化、研究成果、教育用の各種データベースの構築・管理など―がとりわけ重要である。
最後に、付置研究所になって以降のスタッフを挙げておく。所長は、喜多克己、鴨沢巌、伊藤陽一、豊田敬、森博美、所員は、喜多克己、伊藤陽一、森博美、山本健児、宮脇典彦、小林一郎、宮崎憲治(経済学部)、林直嗣、豊田敬、佐藤博樹、鈴木武(経営学部)、山口不二雄、鴨沢巌、笹川孝一(文学部)、盛田常夫、高橋絋二、石川淳志、山田一成(社会学部)、西川大二郎(第一教養部)、職員は、小宮栄子、広田真人、清水晴子、木谷修子、佐藤いつ子、渡辺和子の諸氏が勤めてきている。
【以上は1999年までを記述した『法政大学戦後50年』からの転載】
第三章 2000年以降の活動
 2000年以降の統計研究所の活動は以下のとおりである。

1.研究テーマと成果
統計研究所は、この間、国際的視角からみて現代の日本の政府統計を中心とする統計界にとって重要な問題に国際交流、研究会、科学研究費プロジェクト等を通じてとりくんでいる。
第一に、国際統計界が21世紀にかけて重視した「人権・開発と統計」、国連を中心として21世紀初頭の人類的課題として掲げたミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)の統計的側面に関してそれぞれ、主要論文の翻訳とこれらへの案内・論評を『研究所報』のNo.27(2001年)とNo.30(2003年)でとりあげた。いずれも1990年代の国連世界会議での論議を受け継いで、諸課題を深め、集大成した世界的テーマへの統計研究からの検討や貢献に関わる問題であり、国際的・国内的に最重要でありつづけるものである。
第二に、主要先進国の統計活動・研究において20世紀末から追求されており、日本において立ち遅れが見られる重要テーマ、すなわち、(1)人口センサスの革新−その中でのレジスター方式の採用−の問題−【『研究所報』No.26(2000年),No.33(2005年), No.36(2007年)、『統計研究参考資料』No.63(2000年),No.81(2003年),No.86(2004年)】、(2)ミクロ統計データの問題【『研究所報』No.26(2000年),No.32(2004年),No.33(2005年), No.34(2005年)、『統計研究参考資料』No.83(2003年)】、(3)「統計の品質」問題【『統計研究参考資料』No.79(2002年), No.89(2005年), No.93(2006年), No.97(2007年)、『研究所報』No.37(2007年)】、について国際的ワークショップを交えて引き続き検討している。
第三に、2001年に日中経済統計学国際会議を、多摩キャンパスの100周年記念館で主催し、中国統計研究と日中統計家・研究者の交流の重要な機会とした【『研究所報』No.28(2002年)に特集】。中国統計研究、韓国統計研究、あるいは日中韓国の統計比較は、引き続き重視されている【『統計研究参考資料』No.77(2002年), No.85(2004年), No.90(2005年), No.94(2006年), No.96(2007年)】。
第四に、1990年以降の男女共同参画に関わる統計(ジェンダー統計)の研究が、研究所を拠点とする科学研究費のプロジェクト(2001-2002年度)を交えて継続されている。【『ジェンダー統計研究の新展開と関連データベースの構築−平成13-14年度科学研究補助金研究結果報告書』『統計研究参考資料』No.71(2001),No.75(2001年)、No.87(2004年)】。このプロジェクトのメンバー、あるいはメンバーの多くが、内閣府男女共同参画会議専門調査会での「共同参画のための情報」に関する会議と報告書作成、独立行政法人国立女性教育会館の『男女共同参画統計データブック 2003』『同上 2006』の出版や、同会館の「『家族と女性』統計データベース改善案」などで貢献した。2005-6年度には、(i)自治体ジェンダー統計と(ii)ESCAP地域のジェンダー統計研究,および(iii)日本からの・国際発信をテーマとした科学研究補助金プロジェクトを経験し、【『ジェンダー統計研究の一層の展開−地方自治体へ、アジア・世界へ−』(平成17-18年度科学研究費補助金研究成果報告書、2007年3月】、研究を広げている。
なお、2007年4月には、中国の第1回全国性別統計研修会(国務院・国家統計局、全国婦女連研究所共催・UNFPA支援) に所員他が講師等で参加した。『男女共同参画統計データブック 2006』の中国語訳が2007年8月に出版されたが、これを支援した。
『研究所報』No.35(2007年)が、所報としてはじめて、「ジェンダー(男女共同参画)統計」を特集した。その他、ジェンダー予算【『統計研究参考資料』No.92(2006年)】、無償労働に関する世帯生産勘定もとりあげた【『統計研究参考資料』No.91(2005年)、No.98(2008年)】。
第五に,景気関連統計の解説と検討のシリーズが継続している【『統計研究参考資料』No.70,No.73,No.74,No.76(2001年),No.82,No.84(2003年), No.88(2005年)】。
第六に,その他として統計調査等の報告者負担問題【『統計研究参考資料』No.68(2000年)、インド統計制度研究(『統計研究参考資料』No.80(2003年),職安訪問者調査による失業統計−国際比較【『研究所報』No.29(2002年)】、同じく失業者調査【『統計研究参考資料』No.78(2002年)】、政府統計体系論―日米,英国―【『統計研究参考資料』No.65,No.66(2000年)】、ロシアのシャドウエコノミー【『統計研究参考資料』No.72(2001年)】、韓国「統計法」改正(【『統計研究参考資料』No.95(2007年) 】、など多様なテーマへの取り組みがあった。

2006年11月には、第57回全国統計大会において、統計界の最高の栄誉とされる「大内賞」(本学元総長であり、日本の統計の再建に貢献した大内兵衛博士の功績を記念し1953年に設けられた賞)を受賞した。
大内賞の受賞を記念して、2007年3月17日(土)、ボアソナード・タワー26階A会議室で、シンポジウム「統計における官学連携」を開催した。 シンポジウムでは、森博美所長の挨拶に引き続き、東京大学名誉教授で元統計審議会会長の中村隆英氏による『大内先生と日本の統計』、 長年にわたり所長を務めた伊藤陽一所員による『統計品質論から見た日本統計』の基調講演が行なわれた。 その後、竹内啓東京大学名誉教授(前統計審議会長)、松田芳郎青森公立大学教授(前統計審議会委員)、菊地進(立教大学教授)などをパネリストとして、「統計における官学連携」をテーマにパネルディスカッションが行われた。

2010年6月1日からは、わが国の私学で初めて、政府統計ミクロデータの提供サテライト機関として認定された。これを受けて、 独立行政法人統計センターと連携協力し、学術研究を行う研究者等を対象として公的統計の匿名データの提供を開始した。

2011年度には、わが国の統計にとっての喫緊の課題であるビジネス・レジスターの構築に向けた研究プロジェクトを 立ち上げた。この研究活動ならびに研究成果の普及を目的として、ビジネス・レジスターに関する国際ワークショップを2012年から開催している。現在までに国際比較研究をテーマに3回の国際ワークショップを開催した。これらのワークショップは、内外の政府統計関係者相互間の実質的な情報交換の場として政府からも高い評価を受けている。 本研究所の研究活動の国際的展開を一層実質的なものとするために、今後もこの種のワークショップを定期的に 開催することを計画している。
(2013年2月28日更新)

2.教育
第一に、経済学専攻大学院生の教育・研究が研究所を拠点として行われ、成果が研究所発行資料での発表、また学会誌掲載に至っている。 第二に、学部学生の教育に関わっては、統計学関係ゼミナールが統計研究所を適宜利用しており、また特に、「統計学」関係科目を通じて一般学生にも、統計に馴染み、慣れる場として提供されている。

3. 図書室・事務体制など
第一に、研究所が持つ図書室機能に関わって、統計学文献としては、現在では数少なくなったコレクションにあたる故有田正三氏の蔵書の寄贈を2004年度に受けた。20世紀初頭のドイツ社会統計学および日本の大正・昭和戦中期までの貴重な図書がふくまれており、この領域での蔵書を豊富化した。整理作業はスローペースであるが進められている。 第二に、研究所員である統計学担当教員が、経済学部で新設の「社会と情報」科目の担当者であり、この科目は統計学と深い関係にあるので、ICT・情報関係法規等の図書の充実に注意が払われている。 第三に、ウエッブサイトの更新と、サイトでの蔵書・発行資料の案内の強化作業が継続されている。 第四に、その後の所員と事務職員として、先に示したメンバー以外に新たに、所員では中村律子(現代福祉学部・前所員)、加藤榮一(現代福祉学部・前所員)、清水幹夫(現代福祉学部・前所員)、松井亮輔(現代福祉学部・前所員)、斉藤友里子(社会学部・前所員)、武智一貴(経済学部・前所員)、西澤栄一郎(経済学部・前所員)、松崎義(現代福祉学部・前所員)、山田一成(社会学部・前所員)、近藤章夫(経済学部・前所員)、坂本憲昭(経済学部・現所員)、小沢和浩(経済学部・現所員)、菅幹雄(経済学部・現所員)、菊澤佐江子(社会学部・現所員)、鈴木武(経営学部・現所員)、長山恵一(現代福祉学部・現所員)、職員では、高城理恵子(前)、井上亜矢(前)、市川恵(前)、柳妙子(前)、堀明子(現)が勤務している。
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研究
 研究所は国際的・国内的政府統計活動と政府統計資料の研究に重点をおいてきた。この中で研究所は主として以下のテーマを中心においた研究に関与している。幾らかの解説をつけながら示していこう。

(1)ミクロデータの利活用の促進
ミクロ統計とは、調査個票が掲載している個人識別情報を排除した匿名化処理済みの個票セットである。このミクロ統計の利用は、詳細な関係の統計分析を可能にし、統計分析の上で不可欠になっている。国際的には、この利用が進み、そのための統計関係法規の改定や制度整備が進んでいる。日本では2009年4月の新統計法の全面施行を受けて、政府統計の提供元である独立行政法人統計センターが大学との連携協定を締結することで、学術・高度教育目的での政府ミクロデータの提供が行われることになった。協定を締結した施設では、匿名化された個票データからさらに標本を再抽出(抽出率80%)することでデータの秘匿性の担保を図るとともに、新たなタイプのデータの利用者から利用申請を受け付け、利用の妥当性当の審査を経て提供することになる。
このような中、本研究所は、私学で最初のサテライト機関として連携協定を2010年3月30日に締結し、同年6月1日より学術研究を行う研究者等を対象として公的統計の匿名データの提供を開始した。
2011年度からは、ミクロデータの利用促進を図るために、ミクロデータの解析教材を作成するなど、本研究所の政府統計匿名標本データのサテライト提供施設の活動を側面から推進する取り組みを行っている。
今後、学術目的での政府統計ミクロデータの提供に積極的に係わっていくことにしている。

(2)研究用事業所データベースの構築
2011年度に八王子市域をフィールドとする事業所データベ一スの構築に向けての準備作業に着手し、2012年に正式に研究所のプロジェクトとして立ち上げた。それが目指すのは、事業所を統計単位とし、 情報を年次更新する縦断型(longitudinal)のデータベースであり、地理的な位置情報を当初からコ ア変数として持つわが国では画期的なレコード形式を持つものである。 今後、各個体レコードに様々な変数を付加することによって、企業(事業所)の生存分析あるい は地域のポテンシャルの計測など、このデータベースは様々な潜在的利用可能性を持っものとして期待される。 また事業所データベースの構築ならびにそれに基づく研究成果を地域にも積極的に開示することで、産学、官学連携面での様々な地域連携を模索していく。

(3)人口センサスと統計生産の形態変化の可能性
およそ150年以上にわたって行われてきた統計調査、特に人口センサスが、統計環境の悪化や効率性の点で、幾つかの国でレジスター記録に基づく統計生産へ移行するきざしがある。この10年間そして今後、「人口センサス」研究は大きな注目になっている。ここでは国際的な比較研究が重要である。研究所は外国からの関係者を招いてワークショップを開き、また関連する資料紹介や論文発表を行ってきている。

(4)「統計の品質」論の紹介と発展
特に1990年代以降、1国あるいは地域国際機関さらには国際機関の統計部署が生産・公表する統計をめぐって、従来の「誤差=標本誤差と非標本誤差」論議を遥かに超えて、統計の品質として論じる動きが活発化した。これは、統計データの正確性以外に、適合性(Relevance:利用者のニーズに合致するか)、適時性(timeliness)や利用者サイドからのアクセス可能性(Accessibility)その他の多面的基準から、統計データ、データを生み出す統計方法・基準、更には、これらをもたらしている1国統計制度・政策を評価し、その結果を公表しようとする論議である。実際の公表もはじまっている。この品質評価論議は同時に統計生産過程での品質確保をめざしている。これは一般企業・組織における品質評価・管理の統計活動への適用であり、情報公開やcustomer重視などの今日的基準が織り込まれている動きと言える。この統計品質論は、従来の統計学や論議を塗り替える諸点を持つもとして、この論議が活発化する1990年代半ばから、統計研究所は注目し、紹介論評してきた。これは引き続き重視しているテーマである。

(5)国際ジェンダー統計論・運動の紹介と日本・ESCAP地域での発展。
1975年の国連世界女性会議以降、男女平等・男女共同参画をめざす国際的・国内的動向は、20世紀後半の国際動向の一特徴といえる。この中で、男女の状況について、性別に対比しながら客観的な把握をめざす統計の役割が重視された。この統計論議は、女性についての統計ではなく、男女に関しての統計であり、単なる性別統計ではなくて、性別を基礎にしながら、特に男女格差・差別が見られる問題分野(これをジェンダー問題と言い、具体的には1995年の国連北京女性会議での採択文書にうたわれている12重大分野などが例になる)をとりあげる統計データ・分析として「ジェンダー統計」と呼ばれるようになった。ジェンダー統計論議と各国や国際機関の統計への浸透・適用にはかなりの広がりもあるが、なお多くの検討事項を抱えている。日本統計研究所は、このジェンダー統計論議が活発化しはじめた初期の時点から、国際動向を紹介・論評し、さらに日本国内や地方の統計におけるジェンダー統計視角の拡大・深化を実際に支援する活動を行い、関連文書も発行してきた。研究所予算によるプロジェクトとして、また科学研究費助成金によるプロジェクトとして、研究は継続中である。

(6)地方統計の研究
統計研究所は地方統計の所蔵に努めてきた。地方統計に関する研究は一部行ってきた。しかし、これから人口減少となる日本では、すでに進行中の人口減少都道府県の数はさらに拡大する。地方は過疎化して一層衰退するのか。東京都自体も今後10年、20年で高齢化をふくむ諸問題を抱えることになる。一方で何らかの地域活性化策を打ち出すのか。地方社会の推移はこれまでになく重要になってくる。統計研究所はこれらを重視している。

(7)アジア地域の統計研究
アジア地域は、21世紀の世界の政治・経済・社会に大きな影響を与えるものになってきている。統計の諸問題に関して先進諸国での経験や改革は、日本にとって参考になることが多い。開発途上国の多いアジア・ESCAP地域についてみれば、統計活動と研究における日本での蓄積は、技術援助の形で供与されることが有効である。同時にそれら諸国の実情を日本と深いつながりを持つ国として理解することが必要である。統計情報・研究をめぐって人的交流をふくめた国際交流はますます重要になってきている。日本統計研究所は先進諸国の統計家・統計研究者との交流と並んで、アジア地区の統計の研究を一部的に手がけ、ESCAP統計部あるいは中国とは交流関係を持つ。アジア・ESCAP地域の統計研究も引き続き行っていく予定である。

その他
最近10数年間にとりあげたもので継続することが必要なテーマを以上に説明した。これらテーマとの関連での課題への取り組み、その他の新しいテーマも必要に応じてとりあげることになろう。特に大学教育の在り方が社会問題化している中では、統計・情報教育に関わっての研究と実践も必要なテーマとなってくるだろう。
統計研究所からの利用者サービスの強化
(1)図書室機能の強化
統計研究所は、図書室を有することで、学生、市民によって統計を利活用する上で、有効な場を提供している。活用の便宜をはかるため、ウェブサイトの内容の充実、コンピュータ利用等、活用の便宜を強化しようとしている。

(2)蔵書の強化
故有田正三氏の蔵書の寄贈を受けて、統計研究所が所蔵する統計学書も一段と充実をみせている。現在、これら入手文献の整理を進めている。

(3)ウェブサイトの充実
【1】日本統計研究所は多くの重要な資料・研究を『所報』、『統計研究参考資料』や市販本その他で発行してきた。これらの全体を示し、入手・活用をしていただくためにはウェブサイトでの案内が必要である。蔵書内容の案内や図書室機能の宣伝もまたウェブサイトが担う。現在この強化に努めている。
【2】研究所の研究成果その他を和文で示すとともに、英訳を進め、2013年度には英文サイトも立ち上げる予定である。
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