児童・家族福祉論
(現代福祉学部 岩田美香教授ゼミ)

2011年08月24日

7月12日(火)の授業風景

7月12日(火)の授業風景

社会問題を見つめ、人間を知る


岩田教授ゼミでは、「子どもと家族」「非行問題」「学校と教育」「貧困」などをテーマにした書籍の輪読で福祉・教育問題を研究しています。授業は、発表担当者数が要約説明と論点を挙げ、その他のゼミ生も重要と思うところと、各自が気になったところを書き出したペーパーを事前に用意した上で必ず1つは質問し、全員でディスカッションするスタイル。1年間に授業の中で取り上げる書籍の数は3冊程度ですが、参考資料を含めるとゼミ生が読み込む実質的な書籍数はかなりの数に上ります。「研究分野の性質上、体験型学習をしづらいという側面はありますが、本から学べることもたくさんあります。家庭内暴力や貧困による教育格差などを別の世界の出来事ではなく同じ社会に起こっていることだと知り、ゼミ生には自分との繋がりも含めて多様な価値観を学んでほしいと思っています」と岩田教授は話します。


岩田教授(写真前列左から4番目)とゼミ生たち

岩田教授(写真前列左から4番目)とゼミ生たち

7月12日(火)の授業では、『非行・少年犯罪』(北澤毅編・著)の輪読を行いました。発表担当の一人である西川拓磨さん(2年生)が同書で紹介されている少年犯罪を考える上で必要な各理論の概要を説明すると、砂塚英里さん(2年生)がその一つであるボンド・セオリーに関して「犯罪傾向は矯正可能であるという立場に立っているため、ポジティブな理論だと感じた」とコメント。小林友さん(3年生)は「犯罪行為は社会的コストを低く見積もった行為とされるが、罪を犯した人の社会的コストの認識は、犯行の計画性有無のみでは測れないのではないか」と疑問を投げかけました。さらに岩田教授は「反対に、みんなが罪を犯さないのは何故なのか」と話題を展開し、「社会的コストに対する考え方とは」「社会的コストの一つは自由を失うことだと言われるが、そもそも今の生活は自由と言えるのか」「犯罪行動においては道徳心も考慮すべきではないか」など議論が行われました。


社会や社会福祉の問題を社会的弱者の視点から考えていきたいとする岩田教授。「岩田先生は、人生相談や恋愛相談にものってくれ、勉強のこと以外にも色々なことを教えてくれる、第二のお母さんですね」と高沼舞子さん(4年生)が語り、「お母さんに言われるんだから、課題図書が多くても勉強せざるを得ない」と笑うゼミ生たち。岩田教授は「ゼミ研究で学んだことを、その後の人生にも役立ててほしい」と温かいまなざしでゼミ生たちを見守ります。

人と社会に手を差し伸べるソーシャルワーク

2010年度北海道旅行にて

2010年度北海道旅行にて

ゼミは輪読を中心とした週1回の授業ですが、それ以外にもゲストスピーカーの招聘や日帰りでの施設見学、ボランティア活動、そして毎年恒例の北海道研修旅行などを行っています。

2010年度も2泊3日を使って北海道・函館の施設7箇所を見学に行きました。「少年刑務所は、想像より受刑者の年齢層が高くて印象的だった」と話す現3年のゼミ生たち。小林さんは「“少年刑務所”という名前ですが、年をめした重罪の受刑者もいるのです」と説明し、小山亮(3年生)さんは「犯罪をしたようには見えない方がほとんどでしたし、だからこそ壁一枚で世界が隔てられていることに、複雑な気持ちになりました」と話します。さらに岩佐浩史さん(3年生)は「受刑者が作ったものが記念品として地域で売られていて、受刑者の社会復帰に地元地域が協力していることを初めて知った」と言い、ゼミ生たちは「自分たちに何ができるか今後も考えていきたい」と福祉への貢献の意欲を語ります。

また、高校時代に自分の恵まれた環境に疑問を持ち、社会的格差による教育環境の違いを学びたいと岩田教授ゼミに入った川村俊太さん(4年生)は、岩田教授が携わっている学外ボランティア活動にも参加。母子家庭に育ち、犯罪傾向のある少年への支援を行っています。「当初は家庭教師のように学習支援のみを行う予定でしたが、実際に必要なのは少年の生活と心の問題をケアすることでした」と川村さん。人との交流を避けたがる少年との壁を、時には父のように怒ったり、兄のように世界観を広げたり、友達のように笑いあったりすることで越え、少年は今では社会に溶け込んでいるそうです。「社会的な問題を起こすと犯罪傾向があるとレッテルを貼られてしまいますが、実際に少年と接したことで皆同じ人間であることを実感しました。それまでの価値観を覆されたような感覚でしたね」と振り返る川村さんは、卒業後、ソーシャルワーカーとして活躍する予定です。