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高速衝突に耐えうる素材を研究
理工学部機械工学科 教授 新井 和吉

2012年06月26日

プロフィール

理工学部機械工学科 教授 新井 和吉

理工学部機械工学科 教授 新井 和吉

理工学部機械工学科 教授 新井 和吉(あらい かずよし)

1961年 東京都生まれ。
1985年 法政大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了。
1988年 東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻博士課程修了後、
     横浜国立大学工学部助手に就任。
1993年 日本大学生産工学部助手に就任。
1995年 法政大学工学部機械工学科専任講師、1996年同助教授、
     2002年同教授に就任。
2008年 学部改組により現職となる。

宇宙ごみの問題などに取り組みながらものづくりの魅力を伝えたい

現在の研究内容と、そこに至るまでの経緯を教えてください

宇宙ごみ衝突実験後の素材。衝突物は1、2枚目のシールドを突き破っているが、3枚目(写真下段・内側は船室となる)でしっかりと喰い止められている

宇宙ごみ衝突実験後の素材。衝突物は1、2枚目のシールドを突き破っているが、3枚目(写真下段・内側は船室となる)でしっかりと喰い止められている

私の実家は江東区深川で町工場を営んでおり、幼いころから機械に囲まれて育ったせいか、大学進学では自然と工学部を選びました。法政大学の工学部(現理工学部)機械工学科を経て、進学した大学院で当時本学でも教鞭を執られていた東京大学の塩入淳平先生と出会いました。この出会いが、今の研究につながる大きな転機でした。
塩入先生は航空機材料の高速変形、破壊の研究などをされていました。私はそれまで複数のプラスチック素材の組み合わせによる強度の変化を研究していたのですが、塩入先生との出会いにより「素材に衝撃を与えて、その研究データをものづくりに応用する」という新たな視点を得ました。そして、東京工業大学の博士課程でプラスチックに砂粒を衝突させたときの破損状態を調べる「サンドエロージョン」の研究を重ね、1998年ごろからは本格的に物体を高速で衝突させて衝突時の様子や素材の破損状態を調べる実験に取り組みはじめました。
現在は、野球のヘルメットなどスポーツ用品向け複合材料、バードストライク(飛行中の航空機に鳥が衝突したり、エンジンに鳥が吸い込まれる事故)に耐えられる航空機素材、そしてスペースデブリ(宇宙ごみ)対策を施した宇宙航空機素材の3本柱で研究を行っています。一見するとジャンルがバラバラのように見えますが、それぞれ秒速30m、秒速300m、秒速7kmと速さこそ違うものの、衝突物をCFRP(炭素繊維強化プラスチック)素材に衝突させ、衝突の衝撃に耐えうる「軽くて強い」素材を開発するという目的や研究方法は同じなのです。
法政大学で高速衝突の実験に取り組み始めたころは実験装置をつくるところから始めねばならず、苦労が絶えませんでした。「発射音はしたけれど衝突していない」ということも(笑)。でも、その分やり甲斐があり、今でも当時の学生と話をすると大いに盛り上がります。「装置の部品を手作りするなど大変だったけれど、あのころは本当に楽しかった」と。

宇宙ごみのリスクを減らす研究とは?

実験室前には、初の国産旅客機「YS-11」3号機(67年~06年まで飛行)の一部が置かれている

実験室前には、初の国産旅客機「YS-11」3号機(67年~06年まで飛行)の一部が置かれている

私の研究の一つである宇宙ごみとは、宇宙空間を高速で浮遊している、役目を終えたロケットや人工衛星の破片のことです。これが飛び交う速度は時速2万7千km以上にもなり、もし衝突すれば宇宙船を破壊する力を持っています。ちなみに、10cm以上の宇宙ごみは地上から観測でき、どのような軌道なのかをあらかじめ把握できています。そのため、宇宙船のほうが進行方向を修正すれば衝突を避けられるのです。また1cm未満の大きさなら、宇宙船にバンパー(緩衝装置)を取り付けることで衝撃を和らげることが可能です。つまり、現状では1cm以上・10cm未満の宇宙ゴミの衝撃に耐えうる素材をつくることが目標なのです。
研究では、物体が衝突する瞬間を実験で正確に再現するための計算を地道に繰り返すことが大きなウェイトを占めます。例えば衝突させる物体の大きさを0.1mm変えるだけで、「実験に必要なスピードで物体を発射するために必要となる圧力は?」「その際の摩擦力は?」など、さまざまな要素を考慮した大がかりな計算が必要となるのです。この実験を、実験素材を変えて何度も繰り返します。
また私の研究室にある実験装置の発射速度は、秒速2kmが限界です。そのため発射速度秒速7kmの実験を行えるJAXA(宇宙航空研究開発機構)の実験装置をお借りするなど、学外の協力も得ながら研究に取り組んでいます(※)。
それだけに研究には時間がかかり、今はまだ2~3cmの宇宙ごみに耐え得る素材を研究している段階です。けれど研究の成果は少しずつ上がっており、また宇宙ごみを地上から観測する技術のほうも日々進歩しています。いつの日か宇宙ごみの「危険水域」をなくすことを目指し、双方が日々奮闘しているのです。

学生へのメッセージをお願いします

4台のモニターで構成された自作PC最新作の前で。ちなみに新井教授は「宇宙兄弟」や「AKIRA」などの漫画も大好きだそう

4台のモニターで構成された自作PC最新作の前で。ちなみに新井教授は「宇宙兄弟」や「AKIRA」などの漫画も大好きだそう

理工学部に入学した学生には、ものづくりを楽しむ姿勢を持ってほしいです。私は機械いじりが一番の趣味で、研究室にある解析用パソコンは学生と一緒にすべて自作しているので、これまでに作った台数は数え切れないほどです。しかし、スイッチを入れて1回目でうまく動くことはまずありません。でも、その「動かない」ことが楽しいのです(笑)。試行錯誤の末、正常に動作するようになったときの喜びは代え難いものがあります。
エンジニアには、そのようにうまくいかない原因を手探りしながら、どうしたらいいのかを考える「想像力」と「創造力」が不可欠だと思います。ですから私の研究室では、2つの「そうぞう力」を育てることをモットーとしています。その力を身に付けるためには、とにかく手を動かすことです。「百聞は一見に如かず」とよく言われますが、私は「百見は一動に如かず」という独自の言い回しで学生にアドバイスをしています。他人の研究成果やものづくりの様子を100回見るよりも、自ら手を動かす1回の経験のほうが確かな成長につながるのです。

※2010年より、本学とJAXAは、連携大学院に関する協定を締結し、JAXAの客員教員が工学研究科生の研究指導にあたる一方、同研究科生はJAXA内での研究指導を受けています。