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ペレストロイカを機に来日して
情報科学部ディジタルメディア学科 教授 ウラジミール・サブチェンコ

2012年04月11日

プロフィール

情報科学部ディジタルメディア学科 教授 ウラジミール・サブチェンコ

情報科学部ディジタルメディア学科 教授 ウラジミール・サブチェンコ

情報科学部ディジタルメディア学科 教授
ウラジミール・サブチェンコ Vladimir Savchenko

1965~1971年 ロシアにあるMoscow Aviation Instituteの“Space crafts”部門にMS, Mechanical Engineeringとして所属。
1982~1985年 モスクワにてInstitute of Applied MathematicsにPh.d., Theoretical Mechanicsとして所属。
1993~2000年3月 会津大学教授に着任。
2000年4月~ 法政大学情報科学部の教授に着任。
2008年 共同研究プロジェクト「準統計モデルによるメッシュ修正方法」で東京工業大学手島精一記念研究賞 発明賞を受賞。

最先端のコンピューターサイエンスで自ら考え創造する人材を育てたい

研究内容を教えてください

ロシアの応用数学研究所 宇宙研究部門時代(中央がサブチェンコ教授)

ロシアの応用数学研究所 宇宙研究部門時代(中央がサブチェンコ教授)

子どものころは考古学者にあこがれていました。南米の古代文明の本に夢中になり、中でもナスカの地上絵の航空写真に心躍らせました。この読書体験から宇宙への興味をかき立てられ、最初は応用天体力学に取り組んでいました。モスクワ時代は応用数学研究所の宇宙研究部門に所属し、研究者としてのスタートを切りました。
1983年には、3年後に迫ったハレー彗星の地球接近に備える国際的な調査プロジェクトに参加しました。この時には、彗星の軌道運動を数理的モデルとして捉え、コンピューターグラフィックス(以下CG)のアルゴリズムと組み合わせることで、世界で最も精度の高いハレー彗星の出現予測を算出することに成功しました。
その後は長年にわたり、ディジタルメディアの要となるCGやアニメーション、特に実世界の物体を3D(三次元)CG化する「幾何学的モデリング」の開発に力を注いできました。
ここ数年は、物体を仮想空間に3DCGで表現したものを、平面(二次元)であるコンピューターのモニターに映し出すために、CGを形作るモデリング座標を三次元から二次元へ自動的に変換させる「ジオメトリ処理」の研究や、メッシュ生成による形状処理の技術、画像データを加工・修正するための「レタッチ」などの研究・開発を進めています。


 

来日の経緯を教えてください

今シーズンも雪山を満喫したそう(2011年12月撮影)

今シーズンも雪山を満喫したそう(2011年12月撮影)

ロシアには「人はパンのみに生きるにあらず」ということわざがあります。モスクワでは研究者としてとても恵まれた道を歩いていましたが、ソビエト連邦で1980年後半に始まった「ペレストロイカ」によって国のすべてが劇的に変わってしまいました。それは研究者の世界も例外ではありませんでした。より良い環境でさらに研究を進めて行くことがすべての研究者の使命であり、願いです。実際に当時、数多くの優れた研究者がロシアからオーストラリアや南アフリカなど世界各地に拠点を移しました。そこで私も、研究者としての「飢餓」や「欠乏」を満たす場所を新たに探すことにしたのです。
母国を離れることについては、過去に1年ほどアメリカで過ごしたことのある私には何の問題もありませんでした。ロシア人から見ると、科学技術やサイエンスの進歩が目覚ましい日本は奇跡の国でした。ただ、外国人が日本で仕事に就くのは難しい面もあると思います。言葉や文化の違いは小さくありませんからね。それでも来日時にはまだ幼かった次男は日本で教育を受け、日本企業に就職し、今では結婚して子どもを育てています。
来日して20年以上が経ちますが、ロシアを懐かしく思うこともあります。日本で暮らすフランス人が、バラエティ豊かな母国のチーズを恋しいと思うように、故郷の森でのキノコ狩りには郷愁を誘われます。

ご趣味は何ですか

スキーとお孫さんの話では、ひときわ相好を崩したサブチェンコ教授

スキーとお孫さんの話では、ひときわ相好を崩したサブチェンコ教授

冬はアルペンスキー、夏は水上スキーが一番の楽しみです。ロシアでは本当に幼いころからちょっとした斜面で滑り降りをしたものです。夏はボルガ河で水上スキーもしましたね。日本では最初の赴任地だった会津若松を離れてからは山が遠くなってしまいましたが、今は雪山なら群馬、時には白馬まで足を延ばし、夏は河口湖で水上スキーを楽しむこともあります。
また私にとって、ロシアの文学や音楽は特別なものです。特に文学は翻訳ではどうしても伝わらないニュアンスが大切だと思っています。読書では特に哲学書とロシア詩が好きです。愛読書であるダーシー・ウエントワース・トムソンの古典『On Growth And Form』は今でもよく読み返します。
とはいえ研究以外の時間もプログラミングに費やすことが多く余暇の時間はほとんどないのですが、幼い孫と過ごす時間は大切にしています。日本で生まれ育っていますが、正統なロシア語も身につけてほしいと思い、少しずつ教えているところです。まだ2歳ですが(笑)。

学生たちに何を望みますか

学生の研究と分析に道筋をつける事が私の役割ですが、創造的に考えることの大切さを教えたいと思っています。創造性がなければどんな答えも見出せません。
3、4年前ですが、学部生のグループが、あるソフトウェアを開発しました。数カ月かけてプログラミングに取り組む中で、彼らは幾何学的モデリングやコンピューターグラフィックスの知識を体得しました。過去に蓄積された知識を発展させるアプローチでしたが、彼らは自ら思考することでそこから生きた知識を得ました。この学部ではプログラミングに多くの時間を費やしますが、それが結果として、学生たちに総合的な問題解決力をもたらしているのです。
学部在籍中に論文を発表することも薦めています。その経験は将来、企業に就職しても必ず役立つからです。学生たちが創造的で批評精神に富んだ思索家のコミュニティをつくり、議論し、研究し、分析できるように導くのが私のゴールです。結果として、私の研究室から素晴らしく有能な学生が卒業してくれることを誇りに思います。