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誰もが関わる身近な学問
スポーツ健康学部スポーツ健康学科 教授 木下 訓光

2012年03月27日

プロフィール

スポーツ健康学部スポーツ健康学科 教授 木下 訓光

スポーツ健康学部スポーツ健康学科 教授 木下 訓光

スポーツ健康学部スポーツ健康学科 教授 木下 訓光(きのした のりみつ)

1991年 慶應義塾大学医学部卒業後、東京都済生会中央病院内科に勤務。
1993年 虎の門病院循環器センターに勤務。
1996年 慶應義塾大学スポーツ医学研究センターに勤務。
2009年 法政大学スポーツ健康学部教授に就任。
日本循環器学会、日本体力医学会、American College of Sports Medicine、European College of Sport Science、日本糖尿病学会員。

スポーツ医学はこれから花開く学問
自分の道を歩む人を応援したい

スポーツ医学を専攻するまでの経緯を教えてください

学生時代は空手、テコンドー、キックボクシングなどにも打ち込んでいたという木下先生

学生時代は空手、テコンドー、キックボクシングなどにも打ち込んでいたという木下先生

小学生のころ、病気の原因となる微生物の発見から治療方法の確立まで、歴代の細菌学者の伝記を集めた書籍『微生物の狩人』(現在は岩波文庫より発刊)を読みました。そこで抱いた医学研究に対する興味は育ち続け、大学は医学部に進学しました。在学中、「存在や治療法が明らかになっていない感染症はもうない」と思い込んでいたところにそれまで未知であったウイルスHIVが発見され、その解明が日進月歩で進んでいくのを目の当たりにしました。これには驚きと感銘を受けると同時に大いに触発され、将来は免疫学の研究職に進もうと考えていました。

そんな中、学業以外では空手やテコンドー、キックボクシングなどに打ち込んでいたのですが、トレーニングで自分の身体がどんどん変化していく過程を経験し、授業で学んだ身体のメカニズムを、いわば自分の身を臨床の場として理解していくことができました。この経験で医学の知識とスポーツがリンクし、スポーツ医学にも大きな興味を持ち始めたのです。とはいえ当時の日本には、スポーツ医学を学ぶ場さえほとんどない状態でした。そこで発足したばかりの慶應義塾大学スポーツ医学研究センターに相談に行ったところ、「まずは臨床医として成長したうえで挑戦したほうがよい」とアドバイスを受け、卒業後は循環器内科医として研修をしながら心臓の研究を進めました。

5年後に研修期間を終えた時、「今はまだ十分に浸透していないけれど、必ずスポーツ医学が必要とされる時代が来る」という恩師の言を信じ、キャリア選択としては茨の道であることは覚悟の上で、スポーツ医学の専門医として歩むことを決めました。

そもそもスポーツ医学とはどのような学問ですか

スポーツ心臓の権威、ペリチア博士(写真左端)の下で学んだイタリア研究員時代(2004年、先生は左から3人目)

スポーツ心臓の権威、ペリチア博士(写真左端)の下で学んだイタリア研究員時代(2004年、先生は左から3人目)

科学的根拠に基づく医学的アプローチにより、スポーツ中の突然死や重篤な外傷・障害を予防・治療したり、逆にスポーツを病気の治療や予防に生かしたりする、人間を対象にした実践的な学問です。

その中で私は循環器臨床医としての経験を生かし、持久力を要するスポーツ選手の心臓が肥大する現象(スポーツ心臓)について研究しています。スポーツ心臓では心肥大や心拍数の低下、不整脈などの多様な症状を伴いますが、高い身体能力を支える過程で発生した適応現象で、多くは問題がありません。しかし選手に心肥大が見つかった時、それがスポーツ心臓ではなく、疾病による肥大であった場合、激しい運動によって突然死などの事態を引き起こす可能性があります。そこで心肥大の原因を鑑別し、選手の競技継続の可否を判断することも私の重要な臨床活動の一つです。

またスポーツ医学というとプロ選手のマネジメントを連想しがちですが、実際には一般の人々の健康増進や怪我の予防、治療などの分野のほうが、はるかに対象者も多く、私も高血圧症や糖尿病患者の心肺運動負荷試験や運動処方なども専門として活動しています。

大切にしていることは何ですか

学生に対しては上から意見を押し付けるような物言いをしないなど、対等な関係でいられるようにしたいと思っています。これは臨床医時代の経験から得たスタンスなのですが、治療が充実するか否かは医師と患者との間に話しやすい関係が築けているかどうかにかかっています。それは学生の場合も同じです。学生のありのままの姿を見て、今の若い世代のあり様を学ばせてもらい、自分にできることは何かを考えて行動したいと思っています。

法政大学はモチベーションの高い学生が多く、彼らは授業で学んだ理論を課外活動などに当てはめて考え、授業内容より実践的で高度な質問をしてきます。スポーツ指導者やアスレティックトレーナーを目指す彼らは、一般企業への就職を考える大半の学生とは異なるルートを歩む意味で、マイノリティーです。けれど腹をくくってこれでいくと決断して貫いていれば、同じように道なき道を歩んできた先輩の中から支援してくれる人が必ず出てくるものです。学生へのメッセージというとおこがましいのですが、そうした何人もの先達の話を聞き、参考にしながらも自分なりの歩みを進めていくことが大事だと思います。苦労は多いかもしれませんが、自分で道を切り拓こうとする気概のある人を応援したいと思っています。

さらに中学・高校の運動系の部活動でも、スポーツ医学の専門知識を身に付けた指導員が必要となり始めています。部活動とはいえ、食事やメディカルチェック、トレーニングなどの内容が高度になったため、監督や顧問という従来の指導員一人態勢ではすべての要素を担うことが難しくなっています。そこで各分野は専門家に任せ、指導員には各専門家と選手を総合的にマネジメントする役割、さらに素養のひとつとしてスポーツ医学の専門知識が求められているのです。実際に、私が学外で行う講演会でも体育教師やアスレティックトレーナーなど現場で活動する人の参加が増えており、ニーズの高まりを実感しています。

今後さらに成長し、応用範囲が拡大していくこの分野で、学生たちが大いに活躍することを期待しています。