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現代福祉学部 准教授 図司 直也

2010年09月20日

プロフィール

現代福祉学部 准教授 図司 直也(ずし・なおや)

1975年 愛媛県生まれ。
1999年 東京大学農学部を卒業し、東京大学大学院農学生命科学研究科農業・資源経済学専攻、修士課程に入学。
2年間の日本学術振興会特別研究員を経て、
2005年 同研究科博士課程を単位取得退学し、農学博士号を取得。
財団法人日本農業研究所研究員を経て、
2007年 法政大学現代福祉学部専任講師として着任。
2009年より現職。

現場で輝いている“すてきな大人たち”にたくさん出会うことから地域づくりや福祉を考えてほしい
地域づくりの現場で学ぶ

興味をを持って追及している研究テーマは?

現代福祉学部 准教授 図司 直也

現代福祉学部 准教授 図司 直也

専門分野は「農業経済」ですが、学生時代から農山村に関わることが多く、一環して地域づくりに関連したテーマを追い続けています。グリーンツーリズムの考え方が浸透し始める時期に学生時代を過ごしたこともあり、農山村の持続的な発展に寄与するような地域資源開発のあり方を考える「九州ツーリズム大学」に深く関わったり、国土交通省が中断させていた「地域づくりインターン」を復活させたりするような、現場発想の活動を続けています。

例えば、熊本県の阿蘇地域では、牛馬の放牧などに利用する草原を牧野(ぼくや)やと呼び、「入会(いりあい)」という仕組みのもとで農家が共同管理してきた歴史があります。しかし近年は、牛肉輸入自由化などで畜産業を離れる農家も多く、牧野が荒れて、景観保全や地下水の確保などの環境問題を引き起こしています。この地域の住民がずっと住み続けるためには、どうしたら居住環境を整えることができるのか。このような問題を、経済はもちろん、人材育成やボランティア活動など、幅広い視点から考えています。

最近では、全国各地の農山村で地域づくりを担う人づくりの活動にも力を入れ始めています。国も、総務省などを中心に農山村の人材育成を全面的に支援する方針を打ち出しており、そうした施策にも関わりながら、研究と実践の両方を兼ねて現場を歩いています。

なぜ、農山村に関わるようになったのですか。

銀行マンから転身した高校の政経の先生から経済の面白さについて薫陶を受けたこともあって、当初は経済学部を目指していました。同時に、大学に入学したら幅広く学びたいとも思っていました。一方で、中学・高校時代から鉄道を使った一人旅が大好きで、いろいろな土地に行って、新しいことを見聞きすることにも興味がありました。

ですから入学後は、できるだけ現場に出るような授業を受講していました。あるとき、そんな授業の中で、1枚のビラが配られました。地域社会調査をテーマにしている研究室がフィールド調査の参加者を募るもので、興味をひかれて参加することにしました。そこで訪れたフィールドが、その後もずっと関わることになる熊本県の小国町でした。林業に従事する人の話を聞いたり、下草刈りの作業を手伝ったりしながら、100年後に利益を出すために仕事をしているという考え方に触れ、衝撃を受けたことを覚えています。

この経験が大きかったこともあって、農学部の農業経済の分野に進み、結果的にずっと農山村と関わることになります。大学院時代は、環境保全活動を通した外部の人たちの働きかけと、そこに住む現場の人たちの思いとの間に大きなズレがあることが気になっていました。また、現場からアプローチした研究が乏しいことも分かり、現場の人たちに寄り添う形で研究を続けていこうと決めました。

研究や教育を離れた時間はどう過ごしていますか。

小学校4年生からトロンボーンを吹いています。大学では4年間オーケストラに所属し、サマーコンサートで、メンバーの地元を中心に全国を回って演奏ツアーもしていました。しかし、音が大きいので、自宅でちょっと息抜きに練習するわけにもいきません。またフィールドワークがあるので定期的に練習を重ねる市民オーケストラにも入れず、大学卒業後は新しい趣味を探していました。

そんな折り、毎年12月に大阪城ホールで行われている「サントリー一万人の第九」の合唱団募集の案内をたまたま見つけ、応募したら当選。東京で夏から練習を始めて本番に臨みました。これでやみつきなってしまいました。以来、落選する年もありますが、ほぼ毎年参加しています。

そうなると顔なじみができ、練習後に飲みに行ったり、オフに集まって遊んだりするようになります。研究者や大学教員とはまったく違う職業の人たちとの新しい人間関係はとても新鮮で、新しい居場所ができたという感じでした。家内もこのメンバーの一人ですし、みんなで農業体験を行うなど、趣味も実益も兼ねた集まりになっています。

学生にはどんなことを伝えたいですか。

地域づくりに関わると、経済問題だけでなく、高齢者の福祉や心理の問題など、現代福祉学部が追求しているテーマにも触れることになります。現在も「地域づくり実習」などで、フィールドワークを通してできるだけ現場を体験できるように努力していますが、今年度からの新カリキュラムでは「コミュニティスタディ実習」と名前を変え、より充実した内容にしていく予定です。学部の性格上、経済に弱い面があるため、地域経済に関する授業にも新たに取り組んでいきたいと考えています。

現場には、その地域のために一生懸命取り組んでいる人たちがいます。そういう人たちに出会うことが、学生にはいちばん必要なのです。それは地域づくりだけでなく、福祉の世界でも役立つし、仕事や人生を考える上で大きな刺激になります。どんどん地域や現場に出て、「すてきな大人たち」にたくさん出会ってほしいと思います。実習を待つのではなく、1年生や2年生の長期休暇などを利用して、積極的にインターンなどに参加することを望んでいます。

(雑誌「法政」2010年9月号より)