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生命科学部 教授 今井 清博

2010年04月20日

プロフィール

生命科学部 教授 今井 清博(いまい・きよひろ)

1965年 大阪大学基礎工学部電気工学科卒業。
1970年 大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程を修了し、大阪大学医学部助手に就任。
1976年 医学博士号を取得し、大阪大学大学院・医学系研究科情報生理学専攻、生命機能研究科ナノ生体科学専攻の教員を歴任し、
2002年 法政大学工学部物質化学科教授に就任。同生命機能学科教授を経て
2008年より現職。

人体最多の機能タンパク質「ヘモグロビン」を通して生命現象の解明に挑む
研究ではロマンを追い求めよ!

科学者を目指したきっかけは何ですか

生命科学部 教授 今井 清博

生命科学部 教授 今井 清博

郷里の石川県金沢市は、ジアスターゼやアドレナリンの研究で名高い高峰譲吉博士の出身地であり、科学の分野で優れた成績をあげた中高生には「高峰賞」が授与されていました。授業で行った実験を放課後に繰り返したり、教科書に載っていない実験に友人と挑戦したりしていた私は、この賞を中学3年と高校3年のときの2回受賞しました。もともと「鉄腕アトム」の世界に登場する科学者へのあこがれがあったこともあり、受賞の喜びが追い風となって、科学の世界を志すようになりました。

ちょうど半導体が台頭してくる時代でもあり、大学では電気工学科に入学しました。しかし、あまりに理路整然とした世界に将来的な展望を見出すことができず、どういうわけか、これからは生命の時代だと確信するようになりました。小学生のころから「光」「重力」「生命」を自分なりに3大不思議だと感じていたこともベースにあるかもしれません。そこで、大学院では生物系の専攻に進んだのです。

どのようなテーマを追求されていますか

ごく簡単にいえば、ヘモグロビンの機能の解明です。人間の身体は約60兆個の細胞でできていますが、この3分の1の約20兆個は赤血球で、さらにその赤血球の重量のおよそ3分の1がヘモグロビンです。ヘモグロビンは、生命維持に不可欠な酸素運搬機能を担っており、ヘモグロビンが分かればタンパク質が分かり、タンパク質が分かれば生命が分かるといわれるほど、人間にとって重要なタンパク質なのです。

ヘモグロビンには、アミノ酸配列が少しずつ異なる変異体が多数存在しますが、その変異体を系統的に調べることができれば、ヘモグロビンの機能を解明するのに役立ちます。そこで、まずは医学部と共同で、ヘモグロビンの酸素解離曲線を自動的に測定・記録する装置の開発に取りかかりました。現在では世界中で使われていますが、この装置の開発によって、高い精度で多種類のヘモグロビンの変異体を調べることが可能になりました。電気工学科で学んだ知識が、思わぬところで役立ったのです。

現在の研究テーマもその延長線上にあります。
1つは、遺伝子組み換えによって、人工的に変異体を作り出し、その性質を調べる研究です。変異体を系統的に創出することで、構造と機能の関係を、分子論的に説明することが期待できるからです。

ヘモグロビンの分子進化の研究も重要なテーマです。生物の進化と並行してヘモグロビンも進化していますが、それを統計的に解析して、系統樹を作りたいと考えています。この研究が進めば、古代の生物のヘモグロビンを作り出すことも可能になるわけです。現在のヘモグロビンとの違いを分析すれば、生命進化の道筋を、ヘモグロビンの視点から説明できるようになるかもしれません。

趣味は何かお持ちですか

コーラスを27年間続けています。学生時代はグリークラブに所属するほど歌うことが好きだったのですが、研究者になってからは忙しくてなかなか機会に恵まれませんでした。ところが研究の合間に、たまたま目にした情報紙で、自宅のある吹田市のアマチュア合唱団が団員を募集していることを知り、軽い気持ちで応募したのです。それが「吹田混声合唱団」でした。それ以後、現在までずっと続いており、合唱団のメンバーの中でも最古参になってしまいました。

現在は単身赴任状態ですが、しばしば週末に自宅に戻り、月に最低2回は練習に参加しています。定期演奏会前には合宿練習を行ったり、また、海外公演に参加することもあり、充実した時間を過ごしています。

もう1つの趣味は写真です。本屋でカメラ雑誌を立ち読みしていたところ、ある芸術写真に目を奪われました。こんな世界があるのかと驚くと同時に、自分もこんな写真を撮りたいと思ったのです。早速、本格的な一眼レフカメラを購入し、その世界で著名な写真家の先生について修業することにしました。

月1回の例会に参加して、持ち寄った作品を批評してもらっているうちに腕が上がったのか、次第にいろいろな写真展で入選するようになりました。現在ではデジタル一眼レフを駆使して、幻想的な世界の表現に挑んでいます。

これらの趣味は、いずれも人と関わるものです。研究の世界とはまったく異なる人のネットワークができるため、人生を豊かにするのに大いに役立っていると思います。

法政の学生に何かメッセージを

私は「ヘモグロビンバカ」と自称するくらい、ヘモグロビン一筋に研究してきました。まったく飽きることはなく、現在でも次々に新しい研究テーマが浮かんできます。それは、この研究にロマンがあるからだと思っています。この研究が進めば、ジュラシックパークのタンパク質版も不可能ではありません。学生にも、常々、研究ではロマンを追い求めるように言っています。

ただ、自分の能力に気づいていない学生が多いのが少し気になります。本を読み、自分がこれだと思ったことをとことん追求すれば、その過程で隠れた能力を発見することもあります。そのためにも大学を大いに利用してください。

(雑誌「法政」2010年4月号より)