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株式会社日立物流 代表執行役社長 中谷 康夫さん

2019年11月05日

プロフィール

株式会社日立物流 代表執行役社長 中谷 康夫さん

株式会社日立物流 代表執行役社長 中谷 康夫さん

中谷 康夫(Yasuo Nakatani)さん

1955年東京都生まれ。法政大学第二高等学校を経て、工学部土木工学科に入学。1978年に卒業後、日立運輸東京モノレール株式会社(現在の株式会社日立物流)に入社。2008年4月、同社北米代表、日立トランスポートシステム(アメリカ)社長に就任。2013年6月より代表執行役社長。

20代の海外経験が大きな糧に これからも「道なき道」を歩み続けたい

調達から消費者までのサプライチェーンにおけるロジスティクスなどを手掛ける日立物流の社長として、国内外の拠点を飛び回っている中谷康夫さん。経営判断や物流業界のイノベーションには、工学を学んで身に付けた論理的思考が大いに役立つと言います。

 

20代の海外経験を糧に会社のグローバル展開を牽引

31歳のとき出張で訪れたサウジアラビア。後ろは輸送する重量物(左が中谷さん)。

31歳のとき出張で訪れたサウジアラビア。後ろは輸送する重量物(左が中谷さん)。

2013年に社長に就任して、社長指針として「協創で世界に挑む」を掲げました。「協創」は、自社でできることには限りがある、だから足りない部分はパートナーと協力していくという構想で、提携やさまざまな手段を通じて仲間を増やし、グループ全体としての総合力アップを図っています。

この会社を選んだのは、土木の中でも社会との関わりが深い、モノレール事業に携わりたかったからです。実際はモノレール事業には従事せず、担当したのは数百トン級の重量品輸送で、橋や道路の強度を計算する仕事でしたが、輸送分野にも大学の勉強を生かせる仕事があることに驚いたものです。

25歳で初めてクウェートへ赴き、その後ナイジェリアに4年間駐在するなど、20代のうちに海外でプロジェクトを仕切る経験を積めたことが、今につながっているといっても過言ではありません。国内と違って会社の看板が通用せず、現地の人にしか分からないことが多い中で、個人としての行動力、周囲とのコミュニケーションが大切だと実感しました。これが私のポリシー「協創」の原点となっています。

歴史好きが一転、土木工学科へ 多くのことを身に付けた大学時代

サークルの徒歩旅行で「どこでも寝られる」「どこでも生活できる」すべが身に付いた (右が中谷さん)。

サークルの徒歩旅行で「どこでも寝られる」「どこでも生活できる」すべが身に付いた (右が中谷さん)。

好き嫌いがはっきり分かれる性格で、受験のためではなく、将来に役立つ勉強に打ち込みたいと考え、法政大学第二高等学校に入学しました。歴史研究会で得た知識、父の勧めで習得した英会話は、高校時代の大きな収穫です。文学部史学科へ進学するつもりでしたが、その頃盛んに整備が進められていた高速道路や新幹線に興味を持ち、工学部土木工学科(現・都市環境デザイン工学科)に進学しました。

大学で特に印象に残っているのが、小林正几(まさき)教授のコンクリート工学の授業です。公式や専門用語が生まれた背景や語源など、いろいろなエピソードも教えてくださり、その講義を書き取ったノートは、社会人になってから何度も読み直したものです。

ニュータウンの開発に携わられていた高橋賢一先生のゼミでは、土木にも地域計画の世界があるということを知りました。また、ボーイスカウトの大学生版であるローバースカウトのサークルに所属し、野宿をしながら徒歩旅行で全国を回りました。サークルのスローガン「道なき道を行く」は、今も私の座右の銘になっています。

マネジメントで肝心なのはバランス 工学的思考は経営に向いている

30代で新規事業の立ち上げ、撤退を経験したときに、初めて企業の経営を意識するようになりました。43歳から足かけ15年ほどは、米国駐在を含めビジネスモデルの転換やグループのグローバル化推進に携わりました。

工学を学んだことで、フローチャートなどで情報を整理するという論理的な思考や作業手順が身に付きました。構造物の強度計算では、足りない要素があれば何かで補わなければ、現場が立ちゆかない。そこで、綿密さや解決能力が養われたように思います。

事業も巨大な構造物のようなもので、リソースをうまく配分し、バランスを保つことが肝心です。経営判断においては、材料を集め、それを客観的に分析する場面が多く、大学で身に付けたことが役立っていると感じます。その意味では、理系出身者はマネジメント能力にたけている、経営者に向いているといえるかもしれません。

かつて日本の成長を支えた「4K(経験・勘・気合い・根性)」は、長時間労働や人手不足という構造的な問題を抱える物流業界においては、限界を迎えています。ここでも科学的なアプローチが重要で、属人的な要素と思われている経験や勘こそ、テクノロジーを積極的に活用して、経験や能力に左右されないように標準化を進めるべきだと考えています。

若い人には無限の可能性がある 学生のうちにグローバル体験を

自分の専門分野を持つことは大事ですが、20代のうちから、「これを勉強したからこの仕事」と決めつけて、将来の可能性を限定してしまうのは、もったいないと思います。

日本はすでにグローバル環境に組み込まれています。スーパーグローバル大学となった法政大学には、私の学生時代と違って、留学や海外インターンの機会がたくさんあると聞いています。語学を学ぶ、異文化に触れるだけにとどまらず、ぜひ20代のうちに海外に出て、できれば旅行ではなく生活を経験してみてください。その経験が、新たな発見や出会い、チャレンジにつながっていくはずです。

社会が流動化し、物流業や製造業といった業界の垣根が無くなりつつあります。企業人としては、物流をベースとして協創の領域を広げ、そこで活躍できる若手を育成していきたいと思います。そして、個人としては、旺盛な好奇心を失わず、法政OBとして「道なき道」を歩んでいきます。

(初出:広報誌『法政』2019年8・9月号)