設計士・建築家 轟 洋子 さん

2015年08月20日

プロフィール

設計士・建築家 轟 洋子 さん

設計士・建築家 轟 洋子 さん

轟 洋子(Yoko Todoroki)さん

1969年千葉県市川市生まれ。工学部(現・デザイン工学部)建築学科卒業(大江新研究室)。2003年に源池設計室を設立。2005年からは夫の真也さんも加わり、現在は夫婦共同で事務所を運営している。人の手が触れるものは、人に優しいもので作りたいという思いから、主に手がけているのは木造住宅。デザイン性、使い勝手、環境性能、コストバランスの良い家づくりを提案している。

一生につながる縁を大切に夫婦二人三脚で夢を建てる

「建築学科の授業でコンクリートを練っているうちに、根性が芽生えました」と笑う轟さん。
長野県内を飛び回りながら、夫の真也さんと共に、幸せを感じる住宅づくりを提案しています。

夫婦で共に担当することで幅広いニーズに応えられる

同業の夫と小さな事務所を構えて12年になります。18坪ほどの狭小住宅から70坪ほどの大きな平屋まで、今までに70軒ほどの住宅を建ててきました。どの物件を手がけるときでも、あえて役割分担はせず、夫婦二人そろって担当します。男性と女性の両方の視点があったほうが、施主さんの要望をくみ取りやすく、幅広い提案ができると思うからです。

お互いに考えを持っているので、時にはデザインのことで意見が割れて衝突してしまうこともありますが、お客さまの前では顔には出しません(笑)。マイホームを建てるのは、家族にとって楽しみな夢の一つ。その夢に参加させていただく以上、楽しい雰囲気に水を差すわけにはいきませんから。施主さんといい関係を築きながら、うちに頼んで良かったと満足していただける家づくりをしていきたいですね。

住宅なので生活しやすいのは当たり前ですが、施主さんの要望に応えつつも、自分たちらしさを出せるようにしています。建築物は、持ち主の方の財産であると同時に、街の財産でもあると思うんです。だから外観は、風景にほどよく溶け込んで、周囲から浮きすぎないことが大切です。それでいて、家の前を通り過ぎる人が「この家いいな」と、つい足を止めたくなる、落ち着いているけれどかっこいい家。そんな住宅づくりを目指しています。

家を建ててからが一生の付き合いのスタート

夫婦で設計した初作品でもある自宅

夫婦で設計した初作品でもある自宅

どんな仕事でもそうでしょうが、住宅に関わる仕事をしていると特に、人とのつながりや縁の大切さを実感することばかりです。

大学卒業後にIターン就職で松本に来たのも、縁の一つだったと思います。土地勘もない地で、初めて家族と離れて暮らし始めたのにもかかわらず、あまり不安は感じませんでした。「信州・長野」のイメージが良かったんですね。会社帰りに温泉やスキーを楽しんだり、休日はドライブに出かけたりと、信州ならではの暮らしを楽しんでいました。

やがて夫と出会って結婚。二人で協力して初めて建てた家が、事務所兼住居の自宅です。私たちの思いがいっぱい詰まっている家を誰かに見てほしくて、建築雑誌などに応募してみたら、反響が良かったんです。結果的に、そのことが設計士として独立するきっかけとなりました。

実際には、事務所を構える前に、ハウスメーカー、設計事務所、工務店と何度か転職をしました。それぞれの場所でさまざまな方と出会い、積み重ねてきた経験が糧となって、今の私があるのは間違いありません。

だからこそ、縁あってお付き合いの始まった施主さんとの関係も大切にしたいと考えています。家が建ったら終わりではなく、そこからが新たな関係のスタート。家は一生のものですから、そこに住み続ける限り、一生のお付き合いをしていただけるような関係を築いていけたらうれしいですね。

法政が取り持つ縁が自分を豊かにしてくれた

大江ゼミ時代は富士セミナーハウスで合宿も

大江ゼミ時代は富士セミナーハウスで合宿も

高校時代、家庭科の授業で間取りの作り方を教わり、住宅設計に興味を持ちました。法政の工学部を選んだ理由の一つは、野球観戦がしたかったからです(笑)。大学に進学したら、絶対に東京六大学野球リーグの応援に行きたいと思っていたので、運良く指定校推薦で合格し、念願がかないました。

大学時代を振り返ると、課題に追われてばかりの大変な日々でしたが、結果的にいい経験だったと思います。課題が終わらなくて苦しいときに、学科の仲間たちと励まし合って乗り越えたこと。無事に課題を仕上げた後は、ご褒美のような気分で遊びに出かけたこと。どれも、楽しい思い出です。

ゼミの同窓生とは、年代を超えて付き合い続けている

ゼミの同窓生とは、年代を超えて付き合い続けている

卒業後もその楽しさは続いていて、私が所属していた大江ゼミ(2013年に定年退職した大江新名誉教授の研究室)では、ゼミのOB・OG会が毎年12月に開かれます。その会で出会った後輩が家具デザイナー兼職人をしていて、事務所の打ち合わせ用テーブルを作ってもらうなど、年代を超えたいい付き合いをしています。

法政大学がつないでくれた縁で、とりわけ思い出深いのは、法政出身の施主さんから家づくりを依頼されたことです。どうせ家を建てるなら同窓の人にお願いしたいと、わざわざ「法政」というキーワードでネット検索して、うちの事務所を見つけてくれたのです。驚くと同時に、すごくうれしかったですね。小さなきっかけで大きな縁がつながり、心を豊かにしてくれるのだと感じました。法政が母校で本当に良かったと思っています。

(初出:広報誌『法政』2015年度6・7月号)