HOME > 法政を知る・楽しむ > 法政ピックアップ > OB・OGインタビュー > 2015年度 > 作曲家・音楽プロデューサー 小瀬村 晶 さん


作曲家・音楽プロデューサー 小瀬村 晶 さん

2015年07月09日

プロフィール

作曲家・音楽プロデューサー 小瀬村 晶 さん

作曲家・音楽プロデューサー 小瀬村 晶 さん

小瀬村 晶(Akira Kosemura)さん

1985年東京都生まれ。
社会学部メディア社会学科在学中の2007年にアルバム「It's On Everything」を発表しデビュー。同年、自社レーベル「SCHOLE」を共同設立。今年5月1日~10月31日までイタリアで開催される「2015年ミラノ国際博覧会」の日本館「LIVE PERFORMANCE THEATER」にて音楽を担当するなど、国内外に活躍の場を広げている。

「日なたぼっこ」で磨いた感性 何気ない日常から音楽を生む

在学中に、インターネットで発表した作品が認められてデビューを飾った小瀬村さん。
大型家具ショップ「IKEA」のコマーシャルや映画音楽など、幅広いジャンルで手腕を発揮しています。

就職活動期の戸惑いが大きな飛躍の転機に

多摩キャンパスで基礎ゼミの仲間たちと

多摩キャンパスで基礎ゼミの仲間たちと

3歳でピアノを始めて以来、音楽がずっと好きです。法政二高時代は軽音学部に入ってバンド活動を楽しみ、大学に進学してもさまざまな形で音楽に触れていました。でも、それを仕事にできるとは思っていませんでした。

転機となったのは、大学3年になって将来を考え始めたときです。周囲の友人たちが就職活動を始め、そろそろ自分も何かしないといけないと思っていたころに、原因不明の体調不良で動けなくなってしまったのです。おそらくストレスから来る心の問題だったと思うのですが、一時は電車に乗ることすらできませんでした。

当然、就職活動もままならないので、これからどうしようと迷いながら、近所を散歩するだけの日々。ただ歩いても面白くないので、何気なくICレコーダーで街の音を録音してみたのです。自宅に戻って、その音を聴いてみると、興味深いことに気づきました。

自分はその場にいたはずなのに、耳に入っていなかった音があり、まったく印象が違う。そこから、日常のワンシーンを記録した音で音楽を作ってみようと思い立ちました。映画のサウンドトラックを編集する感覚ですね。ノートパソコンやシンセサイザーなどのデジタル機器が普及し、アマチュアでも手軽に音楽を作れる環境があったので、自分の感性でどこまでできるか挑戦してみたくなったのです。

出来上がった作品をインターネットの音楽サイトで公開したら、ほどなくオーストラリアの音楽プロデューサーから「アルバムを作らないか」と打診され、思ってもみなかった海外発のデビューが決まりました。

自分が聴きたい音楽を作り「いいね」と共感される喜び

2014年2月に京都で開催したコンサート風景。音楽のイメージを膨らませる抽象的な映像も演出の一つ

2014年2月に京都で開催したコンサート風景。音楽のイメージを膨らませる抽象的な映像も演出の一つ

もともと、自分が聴きたい音楽を作ることが作品づくりの原動力だったので、多くの人に好まれる作品、商品価値の高い作品を最初に求められていたら、うまくはいかなかったと思います。

声をかけてくれたオーストラリアの音楽プロデューサーは、世界中から新人アーティストを発掘し、メディアに紹介する活動をしていた人でした。作品をアートとして評価してくれたので、売れる売れないは二の次。実際、デビューアルバムは、ほとんど売れませんでした(笑)。

それでも認められたことは、大きな自信になりました。音楽に携わる仕事ができるかもしれない。やってみたいという気持ちが強くなって、友人と共同で音楽レーベルを設立して、今に至っています。

インターネットの恩恵も大きかったですね。コストをかけられない学生時代でも、自宅のパソコンを操作するだけで、作品を世界中の人に聴いてもらえたからこそ、チャンスを手にできたと思います。

今もいくつかの作品を音楽サイトで公開していますが、反応を調べると米国、イタリア、日本に次いで、エジプトの人がよく聴いてくれています。音楽分野では、距離も国境も関係ない時代になっていることを感じますね。

時間をかけて模索した経験が自分の糧になる

ライブ録音を収録したコンサートシングルシリーズの最新作『TRIO』

ライブ録音を収録したコンサートシングルシリーズの最新作『TRIO』

大学時代は、特に課外活動はしていないんです。体育会やサークルには所属せず、バイトに打ち込むわけでもない。学園祭などのイベント行事にも消極的でした。周囲に遊ぶ場所もないので、授業以外は野外テラスにある椅子に座って、仲間たちとたわいのない雑談を楽しむ。大学で何をしていたかと聞かれたら、真っ先に「日なたぼっこ」と答えるような日々でした。

だけど、すごく楽しかったんです。興味の対象が似ていて、親近感のある仲間たち。自然を身近に感じられる、のどかな環境。初めは遠すぎるとうんざりしていた片道2時間の通学は、思う存分音楽を楽しむ時間になっていました。のびのびと過ごせた多摩キャンパスでの4年間は、確実に自分の糧になっています。

目標に向かって突き進むような強い思いがなくても、無理をせず、その都度勉強しながら一歩ずつ進んできた。それが自分にとって最適のペースだったんだと思います。

20歳そこそこで、将来を決めろと言われても難しいですよね。子どものころに思い描いた夢も、成長して現実を考えると、選択肢は少なくなる。自分のしたいこと、やりたいことが分からなくなって迷ったり、戸惑ったりする人もいると思います。

でも、大学時代の4年間は、自分をゆっくりと見つめ直せる貴重な時間です。やってみたいこと、興味を引かれることは何かと、自分に問いかけながら、とことん考えてみていいんじゃないでしょうか。そうして模索した先に、将来につながる道が見えてくることもある。自分を振り返ってみて、そう思います。

(初出:広報誌『法政』2015年度5月号)