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保育士 こどもみらいプロデューサー 小笠原 舞 さん

2014年06月19日

プロフィール

在学中によくお弁当を広げたという多摩キャンパス現代福祉学部棟エリアの芝生にて

在学中によくお弁当を広げたという多摩キャンパス現代福祉学部棟エリアの芝生にて

1984年埼玉県生まれ。
20歳で保育士免許取得。2007年に現代福祉学部現代福祉学科を卒業し、一般企業に務める傍ら、高校時代から始めた子どもたちへのボランティア活動も継続。2010年、保育士仲間と共に任意団体(現NPO 法人)オトナノセナカ設立。保育園にて担任をしながら、2012年には新しい子育て支援のコミュニティとしてasobi基地を、2013年には合同会社こどもみらい探求社を設立(共同代表)。社会全体で子育てができるような仕組みや保育士の力を社会でもっと活用できる方法を探求し続けている。

従来の保育士の枠を超え子育てのあるべき姿を追求

在学中に独学で保育士資格を取得し、一般企業を経て保育士になった小笠原舞さん。現場で感じた保育の課題を解決すべく、大人と子どもが共に安心して学び合える子育ての仕組みづくり、コミュニティづくりに奔走しています。

子どもたちに気付かされた自分の生き方

20歳の9月、ネパールにあるチベット難民キャンプの幼稚園へボランティアに行った時のもの。この旅が「豊かさ」について考えるきっかけになり、人生を変えた出来事の1つ

20歳の9月、ネパールにあるチベット難民キャンプの幼稚園へボランティアに行った時のもの。この旅が「豊かさ」について考えるきっかけになり、人生を変えた出来事の1つ

在学中に大学の掲示板で、自閉症児の通園施設のボランティア募集を見たことが、現在の仕事の原体験になっています。最初はお手伝いしたいという気持ちで参加しましたが、こちらが学ばせてもらっていることに気付いたのです。無邪気にストレートに感情を出してくる子どもたちと接していると、今まで生きてきた限られた世界の価値観に染まっていたことに気付き、自分に素直に生きていくことの大切さを教わりました。

こうした大人の既成概念を壊してくれる力を持っている「子ども」という存在を、もっと尊重するべきではないかと考えるようになり、いつかは子どもと接する仕事がしたいと思うようになりました。そこで通学時間を活用して保育士の勉強を始め、20歳で資格を取得。卒業後は一般企業で働きながら、土日に子どもをサポートするNPOなどのボランティアを再開しました。しかし、企業とNPOの価値観の違いのはざまで思い悩んだ結果、会社を2年ほどで退職。資格を生かして保育園で保育士として働き始めました。

ところが、子どもたちが住宅や自動車など「もの」の価値で人を判断する価値観を持ち始めていたことを知り、ショックを受けました。いくら保育士が頑張っても、親や大人、社会なども変わらなければどうしようもないことに気付いたのです。

子どもと親が共に学べるコミュニティづくりを開始

大学を卒業後、就職した先での新入社員研修にて。遠回りだったかなと思ったこともあったが、会社員としての経験は今の仕事にとても役立っている

大学を卒業後、就職した先での新入社員研修にて。遠回りだったかなと思ったこともあったが、会社員としての経験は今の仕事にとても役立っている

ちょうどその頃、同じ問題意識を持つ保育士と出会い、2人で「オトナノセナカ」という団体を立ち上げました。子育ての現場の状況を多くの人に伝え、子どもの未来を考えてもらおうという一心からでした。

また、新設の保育園に正規の職員としても就職しました。クラスを持ち、多くの子どもたちに関わっていると、保育園で起こっていることを、その場で親と共有したいという気持ちが強くなってきます。子どもと保育士と親が同じ空間にいて、子どもの成長を見守ることができたらと考え、それを実現する場として「asobi基地」を立ち上げました。

これは、いわば親子が集う“移動式保育園”のようなもので、公園やカフェ、ライブハウスなど街中の至るところで子どものさまざまな遊びを企画しています。子どもは親のそばで安心して遊べますし、親もその場で保育士に育児相談ができ、親同士、子ども同士の交流も生まれます。

現在では220ほどの家族が「Facebook」のグループを形成し、この活動に共感した保育士約40人、手伝ってくれる学生や社会人約20人のコミュニティに育っています。静岡でもこの活動が始まり、仙台や秋田にも広げる方向で動いています。

新しい子育て支援を社会に根付かせたい

asobi基地のイベントでの記念写真。子どもだけでも、大人だけでもなく、保育士も含めてみんながそれぞれに得るものがあるように設計している

asobi基地のイベントでの記念写真。子どもだけでも、大人だけでもなく、保育士も含めてみんながそれぞれに得るものがあるように設計している

昨年は、オトナノセナカを立ち上げた保育士と共に、合同会社「こどもみらい探求社」を設立。一般企業や行政を、子どもや子育て環境に橋渡しすることにより、子どもにとってより良い商品やサービスの提供につなげたり、さらには新しい子育て支援のあり方を社会みんなで考え、創っていく拠点として機能させていくつもりです。

私自身はフリーの保育士として「こどもみらいプロデューサー」を名乗り活動しています。保育園だけに頼らない子育て支援を行うためには、保育士の能力や経験値をもっと社会に行き渡らせる必要があり、そのための新しい企画を次々と生み出し、実践していくことこそが、私のミッションだと信じているからです。そして、子どもも大人も平等で、みんなが幸せになれるコミュニティづくりや環境づくりを通して、世の中全体で子どもを育てていく社会にしていきたいと強く願っています。

最後に、後輩の皆さんには、自分と異なる世界や考え方にできるだけ多く触れてほしいと思っています。そこから自分の軸や譲れないものが見えてくるのでしょうから。

(初出:広報誌『法政』2014年度5月号)