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東福岡高校社会科教諭 ラグビー部統括 谷崎 重幸さん

2013年02月12日

プロフィール

東福岡高校社会科教諭 ラグビー部統括 谷崎 重幸さん

東福岡高校社会科教諭 ラグビー部統括 谷崎 重幸さん

1958年三重県生まれ。
1982年に法政大学社会学部を卒業後、私立東福岡高校に赴任。
社会科教諭として教壇に立つ傍ら、ラグビー部の監督としてチームを全国トップクラスへ引き上げる。教え子にはラグビーの日本代表として活躍する選手も多い。
平成24年度文部科学大臣優秀教員表彰を受賞。

ラグビーを通して生徒一人ひとりの成長を後押ししたい

東福岡高校で勤続30年を迎える谷崎重幸さんは赴任当初からラグビー部監督を務め、3年目で全国大会に導き、4度の優勝をもたらした名監督です。現在、統括として指導者育成に注力しています。

野球少年がラグビーと出会う

法政大学ラグビー部で仲間と練習に明け暮れていたころの思い出の一枚

法政大学ラグビー部で仲間と練習に明け暮れていたころの思い出の一枚

私は中学生まで野球少年でしたが、進学した志摩高校が三重県大会で10連覇しているラグビーの強豪校だったのです。「スポーツをやるなら強い部活に入ろう」と思いラグビー部に入部しました。高校3年生の時には全国大会にも出場し、高校ラガーマンのあこがれである近鉄花園ラグビー場でプレーすることができました。

その試合を見ていた法政大学の石井徳昌ラグビー部監督が「うちに来ないか」と誘ってくれたのです。当時の法政大学ラグビー部は黄金期を迎えており、全国にその名をとどろかせていました。加えて野球部には江川卓投手がいました。元野球少年の私としては彼と同じ大学に通えることを光栄に感じ、迷わず法政大学に入学しました。

法政のラグビー部ではとにかく基礎を大切にする練習が主体でした。日々の練習はとてもハードでしたが、そこで学んだことは監督となっても応用できるものばかりで大きな財産となりました。大学時代は多くの試合や大会をこなしましたが、覚えているのは負け試合ばかりで、失敗から学ぶことが多かったですね。

海外で指導方法を見つめ直す

人生のターニングポイントとなったニュージーランド留学での一コマ

人生のターニングポイントとなったニュージーランド留学での一コマ

私は中学生くらいから「教師になりたい」という目標があり、教員免許を取るために大学で学びました。その思いは卒業まで変わることなく教育実習にも参加。母校での実習を終え、他校へも足を伸ばして見学に行ったのが、東福岡高校でした。

私は一度見学に行っただけだったのですが、同校から強く誘っていただき教師として勤めることにしました。ラグビー部の監督を任され、就任3年目で花園(全国大会)に行くことができました。そのころの自分はまさに熱血教師。ときには自分で見本を見せて生徒にも厳しく要求しました。毎日、長時間の練習を課し、その後も何度か花園には行けたのですが初戦や2回戦で敗退。良くてもベスト16という戦績で、満足がいく結果を残すことができず思い悩んでいました。

転機となったのはニュージーランドへの留学です。私は2001年から2003年まで休職してニュージーランドで生活しました。ニュージーランドはラグビーが世界一強くて盛んな国です。その文化に触れて日本を外から眺めることで、私の価値観は大きく変わりました。

それまでの私は勝つことばかりに意識が向き、自分の理想を押しつけて枝葉を切り取った盆栽のような「見栄えのするチーム」を作ろうとしていたのです。一方でニュージーランドの指導者はラグビーを通じて子どもの個性を引き出し、彼らの将来を考えて縁の下の力持ちとしてサポートしていました。その指導方法に触れてラグビーはあくまで人を成長させる手段であり、選手一人ひとりのためにラグビーが存在することを理解したのです。

帰国後に快進撃が始まる

生徒に常日頃から説いているラグビーの精神が書かれた監督ノート

生徒に常日頃から説いているラグビーの精神が書かれた監督ノート

帰国後に快進撃が始まる

日本に帰国してから私の指導方法は大きく変わりました。自分の考えを選手に押しつけるのではなく、選手自身にプレーを考えて選択させ、一人ひとりの良い面を見つけて育てることを意識しました。その指導がチーム内に浸透して結果にも結びつくようになり、復職してからの11年間は決勝に7回進み、うち4回は優勝を果たしました。

今振り返ると選手たちに「勝ってこい」と言っているうちはあまり勝ち星に恵まれませんでした。反対に「どれだけ必要とされるか、どれだけ喜んでもらえるか、どれだけ感謝されるか」と、ラグビーというスポーツの根底にある精神を伝えるようにしてから素晴らしい成績を残してくれるようになりました。

ラグビーというスポーツには、ライバルはいても敵はいません。競技を競っても対立はしません。ラグビーの試合終了を「ノーサイド」と言いますが、これは、一人の男・ラガーマンとして自らを犠牲にして仲間の為に身体を張り、他人の為に尽くせる人物として認め合い、むしろ同胞として一体化する瞬間で、敵も味方もなくなるからです。敵を作らず仲間を大切にするというラグビーの理念は、人を育てるのに最適です。そんな競技に長年携わることができた私は本当に幸せ者です。今年から統括という立場になり、選手よりも若手監督の育成を手掛けるようになりました。今後は未来の宝の個々の輝きを伸ばすような指導者を育成し、ラグビーのすそ野をさらに広げることが目標です。

法政大学に通う皆さんに伝えたいのは一日一日を全力で過ごしてほしいということです。「朝」という漢字は「十」「日」「十」「月」からできています。十月十日は母胎内での成長期間を表す言葉です。朝が来る度に人は新たな命として生まれ変わり、生涯で一度きりの一日を過ごす。そう考えれば今この瞬間を生きていることが素晴らしいことであり、今日という一日が大切に思えてくるでしょう。「今」を精一杯生きることが、未来につながります。毎日の積み重ねを大切に、楽しい有意義な大学生活を送ってください。