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中部管区警察学校指導部 警務術科 剣道教官 警察庁技官 東 良美さん

2012年04月03日

プロフィール

中部管区警察学校指導部 警務術科 剣道教官 警察庁技官 東 良美さん

中部管区警察学校指導部 警務術科 剣道教官 警察庁技官 東 良美さん

東 良美(ひがし・よしみ)さん

1957年鹿児島県生まれ。
中学から剣道を始め、鹿児島商工高校(現・樟南高校)時代は国体優勝や玉竜旗大会優勝など華々しい戦績を残す。
経済学部入学後も、全日本学生剣道優勝大会の18年ぶりの優勝、関東大会優勝などに貢献。
1979年、卒業と同時に愛知県警に採用。以来、17年間にわたり愛知県警の術科特別訓練員(剣道特練員)を務める。
1996年愛知県警察学校教官。
2003年剣道八段を取得。教士。
2011年第9回全日本選抜剣道八段優勝大会優勝。

警察官や子どもたちに剣道を指導しながら自らも剣士として「生涯剣道」を追求する

剣道の最高段位である八段取得者は全国に約500人。今年度、その頂点に輝いたのが東良美さんです。愛知県警の剣道教官として警察官を指導する傍ら、自らも剣士としての研鑽に励む毎日。八段取得者の中でも選り抜きの32人で争われる全日本選抜剣道八段優勝大会に臨み、3度目の挑戦で見事、その栄冠を手にしました。

ゆかりの品を身にまとい優勝

八段合格のお祝いにと、本学の先輩でもある恩人・加藤文雄氏より贈られた胴。表面には全日本剣道連盟のマークも刻まれている

八段合格のお祝いにと、本学の先輩でもある恩人・加藤文雄氏より贈られた胴。表面には全日本剣道連盟のマークも刻まれている

――最初の挑戦は一回戦敗退、2回目の昨年は3位、今年は遂に日本一に輝きました。

この大会は、八段取得後5年以上の修行を経た65歳以下の剣士を対象にしており、適格者は現在180人くらいいると言われています。ただ、出場選手はさらに厳選されるわけですから、出場するだけでも名誉なことです。初挑戦の2009年は地元開催の重圧に負けて1回戦で敗退し、翌年は準決勝で逆転負けを喫しました。昨年は満を持して臨むはずだったのですが、大会直前に東日本大震災が発生します。
多くの命が奪われ、また剣友を含む多くの方々が被災する中で、何とか開催にこぎ着けた震災後初の全国大会でした。剣道界にとっても、日本にとっても特別な意味を持つ大会だったといえるでしょう。

第9回全日本選抜剣道八段優勝大会の決勝戦にて、延長戦の後、一瞬の隙をついて面を打ち込み、優勝を手にした。(雑誌 月刊『剣道時代』徳江正之氏)

第9回全日本選抜剣道八段優勝大会の決勝戦にて、延長戦の後、一瞬の隙をついて面を打ち込み、優勝を手にした。(雑誌 月刊『剣道時代』徳江正之氏)

だからでしょうか、普段は験を担ぐことのない私が、何故だかこれまでお世話になった方々のゆかりの品を身につけようと思ったのです。そこで、八段に合格したときに恩師からいただいた防具や、妻が買ってくれた剣道着、親父の形見などを身につけて試合に臨みました。
不思議なことに勝とうという意識はありませんでした。試合時間の10分間に自分を出し切ろうという思いで、目の前のことに集中していました。これが結果的に雑念のない状態になったのでしょう。気がついたら、優勝を決める1本をとっていたのです。この優勝は、私の初の個人タイトルでもあり、これまで私を支えてきてくれた方々が後押ししてくれたのだと、改めて感謝しています。

プロ剣士?として17年間活躍

夕方は地域の道場で、未来の剣士である子どもたちに剣道を教えている

夕方は地域の道場で、未来の剣士である子どもたちに剣道を教えている

――中学から剣道一筋に打ち込み、警察官になってからも鍛練が続きました。

親父も、7人兄弟の5人の男兄弟も全員剣道をやっていましたし、中学校は剣道で全国優勝している伝統校で校長先生も剣道をやっていましたから、剣道をするのが当たり前のような環境で育ちました。ですから好きも嫌いもなく、中学生になって自然と剣道を始めたのですが、1つ上の兄には相当鍛えられました。後にも先にも剣道をやめたいと思ったのは、このときだけです。しかし、兄はそんなことくらいで逃げるなと眼力で教えてくれていました。この導きがあったからこそ、今日の私があると思っています。ただ、その兄も親父が死んだ2年後の一昨年亡くなり、この2人に優勝を報告できなかったことは残念です。

高校と大学で、いわゆる特待生として剣道に打ち込むことができたこともあり、卒業後は愛知県警に剣道特練員として採用されました。剣道特練員というのは、剣道の研鑽を第一とする警察官で、シーズン中は毎日剣道の稽古や試合、トレーニングなどに取り組むことができます。
ただし定員は20人で、毎年2人ずつ新人と入れ替わっていくシステムですから、特練員を続けるためには、その競争に勝ち続けなくてはなりません。この特練員を17年間続けましたが、試合の前には一睡もできないほど緊張したことを覚えています。こうした厳しい環境の中で、朝から晩まで剣道に没頭していました。

日本代表も子どもたちも指導

中部管区警察学校指導部 警務術科 剣道教官 警察庁技官 東 良美さん

――特練員を引退され、現在では剣道教官として、指導する立場になりました。

現役引退後は、愛知県警の剣道チームの助監督を5年務め、その後は監督としてチームの連覇に立ち会うことができました。監督時代の2年間は、選手と一緒になって、日本剣道形という基本を何度も徹底的に繰り返しました。この原点に立ち返って己の剣道を見つめ直す鍛練が、今回の結果につながったのだと思っています。
現在は警察学校で警察官を指導する日々ですが、剣道では「率先垂範」「師弟同行」といわれるように、自らがまず規範を示さなければなりません。ですから、毎朝4時半に起床し、道場には朝6時過ぎに入り、素振り千本をはじめ、一人あるいは学生の警察官と共に稽古に励んでいます。

勤務終了後は、金曜日を除き夕方6時から9時までは道場で子どもたちに剣道を教えていますし、剣道の日本代表チームの指導も行っています。指導者としての役割が増えていますが、私自身も剣の道を歩む剣士の一人として、「生涯剣道」を追求していきたいと思っています。