写真家 キッチンミノル さん

2012年02月14日

プロフィール

写真家 キッチンミノル さん

写真家 キッチンミノル さん

キッチンミノルさん

テキサス州フォートワース生まれ。
2003年、人間環境学部卒業(1期生)、石神隆ゼミ所属。
1年間の会社勤務を経て、05年よりフリーランスフォトグラファーとなる。
10年7月、ファースト写真集『多摩川な人々』(サンクチュアリ出版)を上梓。
ちなみに名前は、市ケ谷キャンパス近隣の定食屋「キッチンワタル」の屋号を気に入って付けたそう。
受賞歴:01年、六大学写真展銀賞。
       05年・09年、APAアワード
       写真作品部門入選。

大学で学んだことを糧にたった一人で道を切り開いた新進気鋭のカメラマン

現在、『AERA』(朝日新聞出版)や『レタスクラブ』(角川マガジンズ)などで活躍する写真家のキッチンミノルさん。昨年は初の写真集も出版しました。

写真は、見る人の心を動かすスイッチ

写真家 キッチンミノル さん

写真家 キッチンミノル さん

――「1枚1枚が真剣勝負」というキッチンミノルさん。「人物を撮る時には、笑顔よりも無表情を押さえたい」と話します。

私は現在、雑誌の編集部から依頼されて撮影する仕事用の写真と、私自身の写真展のためにテーマを定めて撮影する作品写真の二本柱で活動しています。どちらの写真も「撮る人が違うと、こうも違うのか」と見た人に新鮮な驚きと感動を感じてもらえるよう、常に真剣勝負で撮影しています

また、私はいつも「物語のある1枚を撮りたい」と思っています。写真を見た人が、忘れていた過去の記憶を思い出したり、それが子どもの写真であれば、被写体の未来に思いをはせたり…。写真そのものは、映画のようには動きません。しかしその代わりに、写真を見た人の心が動き出す。そんな心のスイッチとなる写真を目指しています。
撮影時、被写体に笑顔ではなく"無表情"をお願いするのも、そのためです。無表情は、笑顔よりもその人の本質が伝わるものだと思いますし、見る人がさまざまに受け止められるよう、個人的な見解や想像が入り込める"余地"を残しておきたいのです。同じ風景写真でも、見る人が違えば、そこに見えている風景はまったく違う。それが写真の面白さだと思います。

就職活動中に見つけた、自分の道

写真集「多摩川な人々」には、『AERA』で仕事をするきっかけになった作品も収められている。

写真集「多摩川な人々」には、『AERA』で仕事をするきっかけになった作品も収められている。

――大学卒業後、1年間の会社員生活を経て独立。しかしその道のりは、平坦なものではありませんでした。

高校時代の私の夢は、落語家でした。寄席に通い詰め、ある一門に入門する直前まで話が進みましたが、親は猛反対。仕方なく夢をあきらめた私は、「とりあえず」という気持ちで法政大学に進学しました。
入学後、「何かを表現したい」と思い「カメラブ」に入部しました。あこがれの写真家だった杵島隆先生に写真を褒められ、有頂天になったこともありましたが、3年生になり、なんとなく就職活動を開始。しかしなかなかうまく行かず、改めて自分自身と向き合った時「自分が一番したいことは、写真を撮ることだ」とようやく自覚しました。
とはいえプロを目指すには機材費や売り込み期間中の生活費など、資金が必要です。そこで自分の頑張り次第で稼げる不動産会社の営業職に就きました。ほとんど休日も取らずに仕事に没頭した結果、3年で貯めようと思っていた目標金額を、わずか1年でクリアできました。そうして職を辞し、カメラマンとしての"売り込み"を開始しました。

現在発売中のムック「法政大学by AERA」。キッチンミノルさんが巻頭の写真特集などを担当

現在発売中のムック「法政大学by AERA」。キッチンミノルさんが巻頭の写真特集などを担当

本来プロのカメラマンになるには写真学校を卒業し、プロカメラマンに弟子入りするか、スタジオで助手をするなどの修行を積むのが王道です。しかしそうした道を通っておらず、仕事で写真を撮った経験のない私が雑誌の編集部に作品を持ち込んでも、そう簡単に仕事はいただけませんでした。作品を見ていただけるのが5分、後は雑談して帰ってくる、という先の見えない苦しい日々が続きました。
そんな私に、試しに、と仕事をくれたのが『AERA』でした。最初は食パンの撮影、その後は切り抜き用の人物撮影の仕事を定期的にいただくようになりました。写真の上がりが悪く、ひどく怒られたこともありました。その時は「もう二度と仕事はもらえない」と寝込むほど落ち込みましたが、その2週間後、何事もなかったかのように仕事の電話が…。本当にうれしかったですね。また仕事の実績ができたことを、以前訪問した売り込み先に報告して回ったところ、今度はすべての編集部から仕事をいただけました。プロとなるチャンスを与えてくれた上に、私を育ててくれた『AERA』には本当に感謝しています。

学生の「特権」を、最大限に利用すべし

http://www.kitchenminoru.com/ 仕事状況から写真展の開催など、最新の情報がアップされるキッチンミノルさんのウェブサイト

http://www.kitchenminoru.com/
仕事状況から写真展の開催など、最新の情報がアップされるキッチンミノルさんのウェブサイト

――大学時代に何をすべきか。社会人になった今だからこそ、分かることがあります。

入学の動機こそ褒められたものではありませんでしたが、大学の授業は面白かったです。特に授業の合間にふと教授がされる雑談には、いつも魅了されました。私が所属していた人間環境学部では、環境だけでなく法律、地域研究など幅広い学問を学べるのですが、これが不動産会社での営業や、カメラマンとしての売り込みで大いに役立ちました。相手の年齢や性別にかかわらず興味をもってもらえそうな話題を、大学で学んだ知識の中からいくらでも用意できましたから。在学生の皆さんにもそうした財産を得るために、ぜひとも授業は真剣に聞いてもらいたいと思います。