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東京都福祉保健局総務部総務課主任(夕張市派遣) 鈴木 直道さん

2009年12月20日

プロフィール

東京都福祉保健局総務部総務課主任(夕張市派遣) 鈴木 直道(すずき・なおみち)さん

1981年埼玉県生まれ。
1999年に東京都入都。東京都健康安全研究センター、東京都立北療育医療センター、保健政策部疾病対策課を経て08年1月より夕張市へ派遣。
2004年、本学法学部法律学科卒業。
夕張市では市民課に勤務するとともに、NPO法人ゆうばり観光協会、ゆうばり再生市民会議、ゆうばり子ども文化の会『かぜちゃる』などに参加。

東京都庁から夕張市へ 財政破綻の町を元気にしたい!と住民を巻き込んで奮闘の日々

東京都福祉保健局総務部総務課主任(夕張市派遣) 鈴木 直道さん

東京都福祉保健局総務部総務課主任(夕張市派遣) 鈴木 直道さん

07年に財政再建団体となった夕張市へ東京都は翌年1月から1人の職員を派遣しています。それが鈴木直道さんです。かつて269人いた市職員が百数人に、ピーク時に約12万人だった市民が1万数千人へと減ってしまった夕張市。そんな現場で、鈴木さんは市民課の窓口業務を担う一方、一市民としてもさまざまなボランティア活動に参加して町を元気にしようと汗を流しています。

厳しい環境で働く職員に公務員の原点を見る

――夕張市派遣の打診を受けたとき、即座に鈴木さんは「行きたい」と思いました。東京都庁に入って9年目の出来事でした。

夕張市が財政再建団体になった時に、猪瀬直樹副知事が「東京都から応援の職員を派遣すべきだ」という主旨のことをマスコミで話しているのを聞いて、「いったい、どんな人が行くのだろう」と思っていました。ですから、上司から打診があったときは驚きました。でも、現地の生活を知りたいという気持ちもありましたし、少しでも役に立ちたいという思いもあったので、迷わず志願しました。

夕張市役所では、半減した職員が、賃金も大幅に削減されるなか膨大な仕事に追われています。最低気温が零下20度になる極寒期でも、夜は暖房が止められてしまう庁舎で、スキーウエアの上にベンチコートを着込んで遅くまでパソコンに向き合います。労働環境として大いに問題はありますが、そうした中で頑張っている人たちを見ると、公務員の原点ともいうべき姿を感じます。

市民も再生の努力を続けていて、夕張国際映画祭も行われていますし、『ゆうばり桜まっぷ』を作ったり、廃止になっていた『ゆうばり寒太郎まつり』を復活させたりといった活動も行われています。寒太郎まつりは雪遊びをテーマにしたイベントで、雪の巨大滑り台などが人気を呼んでいます。

こうした活動の中に身をおいていると「公務員としてあるべき姿は何なのか」また「市民として自分に何ができるのか」といったことを深く考えさせられます。住民と直接向き合って仕事をすることは、都庁ではなかなかできないのが現実ですが、夕張ではできます。また、ボランティア活動などを通して、町の人と触れ合いがもてるのも楽しいですね。夜、お酒を飲みながら「昔はこうだった」とか「夕張にはこんないいところもある」といった話をきかせてもらうと、飽きることがありません。

夕張には、ほかの都職員も強い関心を持っていて、都庁へ帰っての報告会では大きな反響をもらっていますし、プライベートの時間を使って夕張を訪ねてきてくれる人もいます。

本学学生も参加し市民の声を聞くアンケートを実施倍増

――夕張市をめぐっては現在、新たな財政再生計画を策定中で、そこに市民の声を反映させたいと、鈴木さんはアンケート調査を行い、結果を国をはじめとする関係機関に提出しました。

夕張市では、国や北海道の協力の下で再建計画が進められていますが、現在は法改正に伴う新たな「再生計画」の策定作業が行われている最中です。ただし、これは行政側が中心となって決めることですから、黙視していたのでは市民の声は届きません。そこで「何を削り、どのように効率化を図るのか」ということについて、少しでも市民の声を反映させてほしいとの願いから、全世帯を対象としたアンケート調査を行いました。調査は個別訪問インタビューを含むもので、調査員として法政大学の学生さんにもボランティアをお願いしました。地元とのしがらみのない若い人に対しては、市民の人たちも本音を話しやすかったようです。結果を再生計画にくみ上げてもらうのが本来の狙いですが、インタビューを受けた人たちから、「よかった」「気持ちが癒された」という声をいただけたことも大きな収穫だったと思っています。

アンケート調査の結果は、150ページの報告書となり、11月9日に渡辺周総務大臣へ手渡しました。

仕事と勉学とクラブすべてをやり抜いた四年間

――経済的理由から高校を卒業してすぐに就職した鈴木さん。あこがれの大学生活を手にしたのは社会人2年目を迎えてからでした。仕事との両立で忙しいなか、クラブ活動にも力を注ぎ、主将まで務めました。

大学には公務員を目指している学生も多く、そのことが私にはとても刺激的でした。専攻は自治行政でしたが、普段、日常的にこなしている実務を学問として見直すことができたことは、本当に良かったと思います。行政の実務はすべて法的な根拠に基づいて行われているのですが、その法そのものがどういう意味で成り立っているのか、法や行政実務の問題点がどこにあるのかといったことを、学問的な視点から理解することができたことは、仕事に向き合う自分の姿勢を見つめ直すことにもつながり有益でした。

クラブはボクシング部で活動しました。減量に耐えて試合に臨む厳しさに魅力を感じて飛び込んだのですが、実際にやってみると予想以上に大変でしたね。それでもやり抜くという覚悟は忘れず、最後は主将までやらせてもらうことができました。社会人で主将をやった人は少ないはずです。今振り返るとなんであんなに頑張ったのだろうという思いもしますが「あのときあれだけ頑張れたんだから」ということが、今の自分を支えてくれているようにも思います。

(雑誌「法政」2009年12月号より)