政治学科に合格された皆さんへ ~2018年度政治学科主任 水野和夫~

 合格おめでとうございます。4月から皆さんが市ヶ谷キャンパスで充実した大学生生活を送れるよう、法政大学は万全の体制を整えて待っています。

 大学は明日役にたつことを学ぶところではありません。10年後、20年後に皆さんは社会のなかでそれぞれ指導的立場にたっているはずですから、よりよい社会をつくろう、あるいは自分の所属する組織をさらによくしようとするときに役にたつ知識を獲得し、考える力を身につけるところが大学です。目を世界に転じれば利害関係の対立がますます激しくなっているだけに、立場の違う人々が自由に生き抜くことのできる社会を構築することが望まれており、そのために欠かせないのが「自由を生き抜く実践知」であり、法政大学はその獲得を目標としています。

 「自由を生き抜く実践知」を身につけ、はじめてさまざまな意見をもつ人々の間で民主主義、資本主義、社会保障制度などの社会の制度的基盤をどうすべきかに関して合意できるわけですし、そうした諸制度が多くの国民の期待どおりに機能するようになれば理想的な社会を目指すことができるようになります。さまざまな制度とめざすべき究極(理想)のものを水面下でしっかりと結びつけるものが「自由」です。また、人間が真理に近づこうとしたり、人間性を最高に高めようとしたりするときにも「自由」が必要なのです。しかも、総合大学である法政大学は多くの仲間と切磋琢磨することで他者を意識し、自己を高めることができます。

 「必要なものが必要なときに必要な場所で手に入る」豊かな社会になれば、徐々に労働時間は少なくてすむようになり、究極のものを追求できるようになります。20世紀最高の経済学者で、思想家でもあり、かつイギリスの大蔵官僚で理論を政治の場に活かしたケインズはゼロ金利になるであろう2030年には理想の社会が到来し、その社会はいかにあるべきか、そしてどう構築するかが人類最大の課題だとおよそ1世紀前に予想しました。しかし、現実には米ソ冷戦が終わって民主主義と資本主義が勝利したはずなのに、世界の政治情勢はテロ事件が収まらず不安定化し、格差も益々ひろがっています。

 人間は、本来的に政治的動物であるとすれば、一人では生きていけません。政治学は、市民の幸福と崇高さを達成することにあり、秩序の安定をはかりよりよい社会をめざすには欠かせない大事な学問のひとつです。法政大学の政治学科では、政治を日常生活から捉える眼と歴史感覚をもつ市民意識とを養い、秩序の担い手としての市民の育成を目指しています。皆さんが政治学科で学べば、たとえ人生は影法師で哀れな役者であったとしても、「法政劇場」で学んだ皆さんが、世界が病んでいる根本原因は何であるのかについて解明し、少しずつでもそれを是正しようと行動すれば、皆さんには活躍の舞台が用意されているはずです。「失われた30年」などと悲観することはまったくありません。むしろ若い皆さんの未来は無限にひらけているのです。

 幸いなことに法政大学の政治学科には、研究背景や専門領域の面において日本で最も多彩な教員が揃っています。研究者ですからみな個性は強いのですが、教育については必須科目である「政治学の基礎概念」にみられるようにチームプレイの和があります。皆さんはこれを活かさない手はありません。政治学が実に幅の広い学問ですが、どのような知的好奇心にも必ずや応じられることでしょう。その証拠に皆さんの自主性を重んじ、幅広い科目の中から自由に選択できます。大学生の最大の特権は自由な時間が許されるということです。広大な学識の世界に遊び、学びましょう。