特集 ~学生・修了生インタビュー~

法政大学を卒業後、大学院に進学した方の声

松本 準さん2

人の“心”を支える臨床心理士
震災直後の被災地支援を通じて
患者に寄り添う大切さを実感

松本 準
人間社会研究科 臨床心理学専攻 修士課程【2007年度修了】

1983年 福島県生まれ。現代福祉学部で精神分析理論や内観療法などについて学んだ後、臨床心理士の資格を取得するため大学院へ。 修了後、臨床心理士として精神科クリニック・教育相談での勤務を経て、2010年より湘南鎌倉総合病院に勤務する。 共著に『研修医指導の秘訣2011 指導医が知っておきたいポイントとよくあるQ&A』(羊土社)がある。

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精神疾患や心理的問題を抱える人たちに対して、心理療法を行う臨床心理士。湘南鎌倉総合病院で臨床心理士として働く松本準さんは、終末期医療や東日本大震災の被災地で行われた医療支援活動にも関わり、不安や悩みを抱える人たちの心をケアし続けています。

祖父との別れが医療分野に進む原点

私は現在、1日に約15人カウンセリングと病棟支援を行なっています。私の職場では、神経症や人格障害の患者に対する心理検査や心理療法とともに、終末期医療の一環として末期がん患者の心理支援を行っています。私が医療の道を目指した原点にも、肺がんで亡くなった祖父との別れがあります。私が高校2年生のときに祖父は他界したのですが、その際、ほとんど意識がないのに生かされている姿を見て「祖父は本当に生きていたいのだろうか」と疑問を抱きました。

その経験から「終末期の医療を受ける人の心の声をヒアリングし、尊重できないか」とターミナルケア(終末期医療)に興味を持つようになり、現代福祉学部に進学しました。同学部は2000年に創設された新しい学部であり、少人数で集中して学べる環境がありました。さらに地域、心理、福祉の3つを一体として捉える考え方に共感できたのも同学部を選んだ理由です。

ただ、入学して福祉の勉強を重ねるうちに、介護福祉士などの職種に就いてもターミナルケアを担う医療現場に関わるのは難しいことが分かってきました。私は医療現場で患者の生の声を聞くことにこだわりたかったので、それが実現できる職種を探しました。その過程で臨床心理士という職種を知り、大学2年が終わるころに「この仕事を目指そう」と決意したのです。

その後、臨床心理士の資格を取得するために法政の大学院に進学しました。しっかりとした知識を身につけるための勉強はハードな部分もありましたが、「量」よりも、実習などを通して専門分野を深く理解する「質」に重きを置いた教育を受けられました。病院に勤務するようになってから、他の大学院で学んだ同僚に話を聞いても「周りも真剣な学生ばかりだった法政大学院の充実した環境は、とても恵まれていたのだな」と改めて感じることが多いです。

被災地支援

震災の被災地での医療支援を行う

私が勤務する病院グループは、災害ボランティアを積極的に行っています。これまでに中越地震やスマトラ沖地震などの災害時にグループ病院から医師団を派遣しており、東日本大震災の際も震災が起きた翌3月12日から先発グループが被災地に入りました。私は3月20日に宮城県南三陸町に入り、避難場所となっていた体育館で被災者支援を行いました。当時は震災が起こってまだ1週間あまり。被災地の人々は深い混乱の中にいました。

被災地ではまず精神的なサポートを必要としている人を探すため、一人一人に声をかけることから始めました。被災地の子どもにはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の初期症状がいくつも見られ、高齢者の中には1960年のチリ地震の際に起きた津波のショックを思い出してしまう人もいました。私が南三陸町に滞在したのは約2週間ですが、その間に253人のお話を聞きました。 一方、人員が圧倒的に不足する避難所では専門分野の垣根を越えた対応も求められます。私も体調が悪い人に薬を配ったり、ケガの程度を見て医師に報告したりと、さまざまな活動をサポートしました。夜は、被災を免れた旅館の2部屋に30人が雑魚寝し、睡眠時間は2時間ほど。医療スタッフにとっても極限状態の日々が続きました。そのような体験を通して、被災地に入る上では目の前のことに全力を注ぐ覚悟が不可欠なのだと身を持って知りました。

被災地での活動を経験してからは、職場の患者にも「生きているだけで十分」という気持ちが持てるようになり、以前よりも余裕を持って接することができるようになったと思います。これからも、まずは自分の目の前にいる人を大切にして、患者に歩調を合わせた治療に取り組んでいくつもりです。

松本 準さん3

大学院で学んだこと

法政大学大学院ではより広範な領域に精通した教授陣とまたその教授陣同士のつながりからバランスのとれた研修が可能な環境が作られています。

こういった環境の中で様々な分野の特徴やその中での問題点を理解していけたことが今の私にとっての財産になっています。それは専門的な立場と理解をもちながら社会的な存在になっていくために不可欠な体験といえるでしょうか。臨床心理士としての自身を形成していくことには専門的な技術を磨いていくだけでなく、自分がどのようになっていきたいか、何を大事にしていきたいのかを理解し、それを社会的な形で現実にしていくプロセスが必要になります。それは人との関わりを通してでしか得られないことでもあります。

教授陣は技術や理論の重要性はもちろんのこと、その存在としての成長を交流の中でサポートしてくれます。それは、自ずから先輩や同期との有意義な交流とつながりをつくってくれるものでした。

この体験が臨床そのものだと今感じます。それは現場で多くの専門職とつながり、存在の成長に寄り添っていく臨床を行う自身の基礎、立ち戻る場所となっています。

受験生に向けてメッセージ

現時点で目指しているものを大事にしながら、それをいくつかの視点からより柔軟に理解し豊かにしていくことは臨床心理士だけでなく、多くの物事に共通していると考えます。

受験生の皆様が、これからより充実した体験を築いて頂ければと思います。