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2017年入学式 田中優子総長 式辞

2017年04月03日

2017年入学式 田中優子総長 式辞

新入生の皆様、入学おめでとうございます。保護者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。 

2017年度、法政大学の学部一般入試の志願者数は、全国で2位、関東ではトップでした。たいへんな競争を勝ち抜いて、みなさんは入学して下さったのです。大学院への新入生も含め、みなさんは次の時代を担うフロントランナーです。自信をもって法政大学で学んでください。 

法政大学の飛躍は志願者数だけではありません。その他にこの数年、4つの特徴的な飛躍がありました。まず第一は、学生の多様化と大学のグローバル化です。法政大学はスーパーグローバル大学創成支援に採択されたのち、それまでにも増して多くの学生が海外へ留学し、多くの外国人留学生が入学しています。留学する先は英語圏だけではありません。フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ロシア、中国、韓国などにも、学生が留学しています。後ほど話をして下さる、ニューヨークで活躍する漫画家ミサコ・ロックスさんは、法政大学の留学制度を活用して、フロントランナーになった方です。英語で講義を受ける外国人学生もキャンパスで学んでいます。入学後は、日本語だけでコミュニケーションできるとは思わないで下さい。ぜひ積極的に外国語でも交流して下さい。 

多様化つまりダイバーシティ化ということで言えば、昨年「ダイバーシティ宣言」を出しました。その宣言のなかで法政大学は、性別、年齢、国籍、人種、民族、文化、宗教、障がい、性的少数者であることなどを理由とする差別を乗り越え、これらの相違を個性として尊重する、と述べました。法政大学の飛躍の第二は、そのダイバーシティ宣言です。グローバル化はともすると、貧富の差を広げ排除や差別を拡大します。法政大学は、世界のどこでも生き抜くことのできる能力と姿勢をもった学生を育てていますが、その能力と姿勢とは、異なる国籍や民族や文化をもった人々にまっすぐに向き合い、協力して世界の課題を乗り越えていく姿勢です。現在、アメリカでも日本でも、人々の嫉妬心を政治的に利用する目的で、特定の国籍の人々を憎悪し排除する動きがあります。排除には限りがありません。誰かを排除して安定したように見えても、また次の排除が始まるからです。法政大学は、そのような動きには与しません。 

第三の飛躍は、HOSEI2030という初めての長期ビジョンを作ったことです。この長期ビジョンは、法政大学がしっかりした理想のもとで、教育環境を改善し続け、優れた教職員を迎えて教育研究の質を上げ、日本と世界で確固たる信頼を築くためのものです。皆さんのほとんどは2030年までおられないと思いますので、「関係ない」と思われるでしょうね。しかし関係あるのです。皆さんは法政大学の卒業生という経歴をもって、社会で仕事をするからです。よく知られ、社会から優れた大学であると評価される大学の卒業生は、自らに自信をもつだけでなく、出身大学について語り、その結果、校友の存在を知り、互いに助け合うことができます。その助け合いは、仕事のみならず社会に貢献することもあり、その循環がさらに大学の名を高め、皆さんの誇りになっていくのです。だからこそ、総長である私もここにいる副学長や学部長、役員たちも、何十年もの後のことを想定しながら、日々、大学を向上させようとしています。 

HOSEI2030でもっとも大きな成果は、本学で初めて大学憲章を制定し、新しいミッション・ビジョンを作り上げたことです。それが第四の飛躍です。本日皆さんのお手元にある資料にも、大学憲章の全文が掲載されています。この大学憲章には「自由を生き抜く実践知」というタイトルをかかげ、これを本学の教育研究上の「約束」としました。自由と、それを実現するための、現場に結びついた知性の育成こそが、本学の役割だからです。今後の法政大学の改革は、この憲章に沿って進められます。 

「自由を生き抜く実践知」とは何でしょうか?ここでいう自由とは、権威や組織やまわりの空気に寄りかからず、自分の力で考え、その考えにもとづいて自分を律して生きることです。実践知とは、単に実際に役立つ知識という意味ではなく、社会的に価値あるものに向かって、それぞれの現場で発揮する知性のことです。この標語は、法政大学の歴史と深いかかわりがあります。 

法政大学は明治13年、西暦で1880年に「東京法学社」という名前で始まりました。なんと3人の20代の若者が、この学校を作ったのです。自由民権運動のさなか、権利の意識にめざめた当時の人びとが、法律の知識を求めていたからでした。3人は金丸鉄(まがね)28歳、伊藤修二五歳、そして薩埵(さった)正邦24歳です。市ケ谷キャンパスの「外濠校舎」の最上階に「さったホール」という多目的ホールがあります。その名称は3人の中の1人、もっとも若い創立者の名前なのです。同じ市ケ谷キャンパスのなかに、27階の高層の校舎があります。その名を「ボアソナード・タワー」と言います。フランス人ボアソナード博士の名前からとったものです。3人の若者が法学について学び、東京法学社の基礎となったのが、このボアソナード博士の学問でした。 

憲章は最初に、その建学の精神と大学の歴史に触れています。そして「自由な学風」「進取の気象」という法政大学の特徴を述べ、「社会や人のために、真に自由な思考と行動を貫きとおす自立した市民に育てる」と約束しています。さらに、「地域」と「世界」の両方を重視すること、「批判精神」や「課題解決につながる実践知」こそが大切であること、そして「世界のどこでも生き抜く力」「持続可能な社会の構築」という、法政大学がめざす方向を語っています。 

法政大学で鍛えられた「世界のどこでも生き抜く力」は、少子高齢化や温暖化の進む日本の各地で、課題を解決する能力でもあります。日本と世界は大きな変化の時代を迎えています。変化の時代とは、若者たちが法政大学を創ったように、新しいものを創造する時代でもあります。みなさんは存分に、ひとりひとりの創造力を磨いて下さい。 

さて、ここまでお話ししてきた飛躍は、数年で起こったように見えます。しかし建学のいきさつでお話ししたように、突然起こったことではなく、100年以上にわたって積み上げてきた結果なのです。時宜にかなった飛躍には、日々の積み重ねが欠かせません。そこで皆さんには、ご自分の将来のために大学時代に何をなすべきか、考えて欲しいのです。 

グローバル化は、大学で起こっている変化であるとともに、皆さんが出て行く社会ですでに起こっている変化です。そこに自分自身がどう向き合い、関わっていくかは、皆さん次第です。異なる価値観の人たちを憎み恐れて閉じこもってしまうのか、自らダイバーシティ宣言をして他者に眼を向け、世界と関わり、自分の価値にも気づくのか。そのどちらを選択するかで、異なる将来になるでしょう。 

また、自らの長期ビジョンつまり10年後の目標を作り、それに向かって法政大学を大いに活用するのか、それともその時その時を漫然とやり過ごすのか。あるいは、学びながら自分自身の憲章、つまり自分なりの生き方のものさしを探すのか、それとも、これからずっと、他人の評価を気にして過ごすのか。やはり、そのどちらを選択するかで、異なる将来になるでしょう。 

皆さんの人生は、たった一度しかありません。それも、あっという間に過ぎていきます。私は47年前、ここ武道館の入学式に列席していました。ここに立つと、まるで昨日のようです。多くのことを成し遂げるには、人生は本当に短く、まだまだ目標は達成していません。どうかそのことを覚えていて下さい。そして在学中に、皆さんの長期ビジョンを作って下さい。

ようこそ法政大学のコミュニティに入ってきて下さいました。心より歓迎いたします。

あらためて、入学おめでとうございます。

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