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キャノン・ハーシーさんのこと

キャノン・ハーシーさんは、以下の公式サイトでもわかるように、写真、版画、シルクスクリーンなどを使ったアーティストです。

 

ハーシーさんは今回、「PIKADONプロジェクト」の実施のために来日しました。このプロジェクトは広島・長崎における原爆をテーマに、若者たちの認識を深め、芸術活動で交流するための活動です。

具体的には、日米両国の17歳から24歳の美術・音楽・映像に関心の深い人たちがワークショップに参加し、作品を作ります。その作品を映像にして発信するのですが、ハーシーさんによると、『ヒロシマ』を読んだり被爆者の話を聞くことによって参加者たちの内面に生まれてきた思いが、作品となって形になるプロセスこそが重要で、それが被曝への認識と共感を深めるのだということです。アートとは内面に起こる深い経験なのだということがわかります。

大学教育では、フィールドワークやディスカッションは取り入れますが、アートワークショップとなると美術系の学校の領域と考えてしまいます。しかしハーシーさんは、教育の極めて有効な方法のひとつとして考えておられます。表現は写真や絵画や映像を超えて、音楽やダンスという形で現れてくることもあるようです。

PIKADONプロジェクトは黒田征太郎さん、荒木惟経さん、安藤忠雄さん、近藤等則さんらが発起人と聞いています。この日、法政大学には映像作家の西前拓さん(ニューヨーク在住)、栗本一紀さん(パリ在住)がハーシーさんとともに見えられました。一緒にプロジェクトを実施し、映像に記録しています。

PIKADONプロジェクトは「モーション・ギャラリー」によるクラウドファンディングで実施されています。活動に賛同した人たちが寄付をすることで、活動を支える方法です。

shadow people project

彼らはシャドウ・ピープル・プロジェクトという運動もおこなっています。広島の原爆では一瞬のうちに人体が蒸発し、石の上に影のみになった人々がいました。そのことにちなんで発足した写真運動です。多くの人に影の写真を投稿してもらい、それを世界各都市で、巨大プロジェクターを使って投写しています。「シャドウ・ピープル」という言葉は、私たちが気付かない人間たちの存在を想像させます。それだけでなく、誰もがいつ「シャドウ・ピープル」になるか、わからないのです。

ニューヨークに仕事場をもつ西前拓さん、パリに仕事場をもつ栗本一紀さんは、後藤健二さん、そして後藤さんと2010年にアートユニットthe chordを結成していた高津央(こうず・なかば)さんとともに、アートによる運動を推進してきました。高津さんも3月に、栗本さんと一緒に法政大学を訪問して下さいました。本学の出した声明を読み、「後藤健二さんが伝えたかったこと」を、さまざまな方法で表現し続けたいという思いを、本学に伝えに来て下さったのです。

後藤健二さんと『ヒロシマ』が、アートを媒介に思いがけずつながった日でした。人は多様な側面をもって生きています。アートは生きることと不可分なので、本来は誰もがアーティストです。後藤さんはそれを子供たちに伝え、過酷な状況の中でも喜びをもって、自らを表現しながら生きて欲しかったに違いありません。