9月

2014年度秋の学位記交付式がおこなわれました

2014年09月20日

9月

2014年度秋の学位記交付式が薩埵ホールでおこなわれました。

総長告辞では、そのときちょうど大学のHP「HOSEI ONLINE」に出演して下さっていたセブン&アイ・ホールディングスの代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)村田紀敏さんから伺った話を取り上げました。

村田さんは大学を卒業して経理担当として就職なさったとき、工場に連れて行かれて「観察したことを報告しなさい」と言われたそうです。しかしなかなかちゃんとした報告ができなかったのです。職人さんとようやくコミュニケーションがとれて、ものづくりの過程が見えてきたとき、「数字の向こうには人がいる、ということを忘れるな」と言われ、それを心にとどめて仕事をなさってきたそうです。

セブン&アイ・ホールディングスのような、大きな収益を上げている企業であればなおさら、その収益を生んでいる顧客だけでなく、働いている人々の毎日を知る必要があるでしょう。収益が上がっているその背後で何が起こっているか、それを見極めるのは非常に困難なはずです。それでも見つめる必要があります。

大学は企業と異なり、営利が目的ではなく、収入を「教育の質」として学生に還元することを目的に存在する、一種の非営利組織です。学生数は定員が決まっていて、それを超えて入っていただくことはできません。教育の質を守るためです。つまり収入は増えません。いわゆる「資本の蓄積」もありません。これも企業とは異なる点です。しかし財政は健全でなければなりませんから、やはり数字を常に注視しています。教職員の数にも限度がありますので、いろいろ無理をしていただいています。

数字の向こうにあるもの、それは学生ひとりひとりの将来であり、同時に教職員ひとりひとりの毎日です。それができるだけ充実した夢の持てるものになるよう、目を凝らして数字の向こうを見なければなりません。「数字の向こう側を見よ」――それは社会に出て行く修了生へのメッセージでしたが、実は私自身への自戒でした。