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2014年入学式 田中優子総長 式辞

2014年04月03日

田中優子総長

 今から44年前の1970年、私は皆さんと同じように法政大学に入学しました。18歳の、決して優等生とは言えない自分が、後に総長としてこのメッセージを皆さんにお届けすることになるとは、想像もしませんでした。

 想像できなかった大きな理由の一つは、女性がそういう立場になることが考えられなかったからです。

 戦後になるまで、女性は選挙権すら持っていませんでした。選挙権は、天から降って来るものではありません。自ら獲得するものでした。欧米ではもちろんのこと、日本の女性たちも戦前から長いあいだ社会運動を継続することで、選挙権を獲得しました。

 私の尊敬する、今でも世界で活躍している哲学者に、サティシュ・クマールというインドの方がおられます。私も数回お目にかかりました。その方が、自ら主宰する雑誌に、こう書いています。

 つい最近まで、ほとんどの男性は女性たちに、選挙権や参政権を与えることなど考えませんでした。しかし今では多くの国で女性が首相を務めているだけでなく、国会議員、大使、裁判官、会社の最高経営責任者として働き、その他様々な指導的な立場を占めています。
 50年前、アメリカ合衆国で黒人は投票することができませんでした。しかし今ではホワイトハウスに黒人の大統領がいます。
 南アフリカではついこのあいだまで、アパルトヘイトに反対するだけで撃ち殺され、投獄されました。しかし今や、ネルソン・マンデラは希望の象徴となり、倫理的な面でも、政治的な面でも、世界でもっとも偉大な人物として尊敬されています。(Resurgence 2013/11-12月号

 確かに、そのとおりですね。思ってもみなかったことが起こったのです。サティシュ・クマールは、それは楽天主義の力なのだ、と言っています。人類とは常に変化し進化し続けるもので、だからこそ私たちは協力してより良い社会を築き、より良い方向を選択できる。そう考える力を楽天主義と言っています。

 それと反対の考えとはどういうものでしょう。「どうせできっこない。社会がこうなのだから」「私の能力なんてこの程度」「学校なんてこんなもの」という考えかたかも知れません。

 しかしこのような社会のめざましい変化は、ただ楽天的に待っていて訪れたわけではありませんでした。時には命をかけるほどの活動によって、獲得したものです。

 法政大学の教員と学生にも、社会に深い関心をもち、社会の矛盾に立ち向かおうとする伝統があります。多くの卒業生たちが自分で考え、自由で自立した考えをもち、社会がどのようであろうと、あきらめずに「自由と進歩」をめざしてきました。私は法政大学で、その真剣な姿勢も学ぶことができました。それはこれからも大切な姿勢です。

 私は大学に入ってはじめて夢中で勉強しました。まさに「水を得た魚」でした。大学の勉強とは押しつけられたものではなく、自分で選び自分で行動する、まさに自分で人生をデザインしていくことだったからです。私はこの法政大学に、人生の基盤を与えられたのです。

 これから、生涯に二度とやって来ない貴重な4年間を過ごすのは、あなた方自身です。皆さんが卒業なさる頃、仕事の舞台は世界に広がっています。法政大学の教職員は皆さんが世界のどこに行っても生きていけるように、あるいは、どのような環境にあっても、自ら学び自ら考える力を得られるように、導こうとしています。どうか悔いのない充実した大学生活を過ごしてください。その年月は必ず、あなた方の未来の、しっかりした基盤になります。

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