2012年度 法政大学東日本大震災復興支援研究助成金採択研究課題内容

研究課題:エネルギー戦略シフトによる地域再生-脱原発ソフトランディングと 地域自然エネルギー

研究代表者:舩橋 晴俊 教授(社会学部)
 研究目的
 本研究の課題は、これまでのエネルギー政策の欠陥の検証をふまえて、脱原発の方向でエネルギー政策の転換を推進しつつ被災地の復興を実現する方途を、被災地における同様の問題関心を有する諸主体と連携しながら探究することである。そのために、一方で脱原発のソフトランディングのための諸課題に取り組み、他方で、地域に根ざした自然エネルギーの振興による創富力の向上の方策を探究する。脱原発と自然エネルギーの振興は世論の大勢となりつつあるが、地域の実情に即して具体的な諸課題に取り組んでいく必要がある。問題意識を共有する他の研究機関、自治体、被災地の大学・研究者、NPOなどとの間に、ネットワークを形成することによって、そのような諸課題に取り組む。
 研究計画・方法
 本チームをコアとして、「脱原発ソフトランディング」と「自然エネルギーによる地域振興」のそれぞれに即して、問題関心を共有する他研究機関、他大学、自治体、NPOのメンバーとの間に連携のネットワークを形成して取り組む。脱原発ソフトランディングのためには、放射性廃棄物や原発の事故についての歴史的経過を捉え返すことが必要であるので、『原子力総合年表・資料集』の編集・公刊を基盤にして、教訓と提言を抽出していく。自然エネルギーによる地域振興については、被災地各地で取り組まれつつある「地域に根ざした自然エネルギー事業」の形成に対して、地元の人々の主体性を尊重しつつ、講演会や研究会や事業体準備に即して、協力し支援していく。「地域自然エネルギー振興基本条例」のモデル条例の作成を、その共通基盤にしていく。

研究課題:復興と生活再建に向けた協働フォーラム創造-被災地からの声持続的集積プロジェクト

 研究代表者:武貞 稔彦 准教授(人間環境学部)
 研究目的
 本研究計画の目的は以下の3点にまとめられる。
1)被災者や被災地で働く人々による書き込みが可能で検索機能を備えたウェブサイトを設計・構築する.ウェブサイトは、被災者や支援者の現在の声を集める情報インフラ及びアーカイブとしての機能と、中長期的な期間を要する被災者の生活再建の過程において、人々の多様でかつ状況の変化に応じて移り変わるニーズを継続的にオープンな形で集積する機能を持たせることを目的とする。
2)関連自治体や住民組織、NPO団体と協働し、ウェブサイトに集められた情報の活用、ニーズへの対応を柔軟に行う仕組み(協働フォーラム)を構築し,中長期的な復興・生活再建に向けた持続的な支援と協働を可能とすることを目指す。1)のウェブサイトはこの仕組みの核と位置づける。
3)集積されたデータ(英文化もすすめる)をもとに,国際的・学際的な災害・復興研究の情報発信と理論構築を目指す。
 研究計画・方法

 研究は大きく分けて二つの時期、二つのモジュールに分かれる。前期(2011年度)は,研究グループ内で、「被災地からの声のデータベース」のウェブサイトの内容・機能について討議し、専門業者と提携しウェブサイトの設計と立ち上げを行った。 後期(2012~2013年度)は、ウェブサイトの運営管理と同時に、[アーカイブ部門]と[協働フォーラム部門]に研究チームを分割し、前者は蓄積された声をアーカイブとして集成する中で,歴史・記憶の部分から復興や生活再建の方向性への示唆を見出す研究活動などに、後者は地方自治体,企業,NPO,住民組織等の関係者による緩やかな復興・生活再建共同体としての「協働フォーラム」の立ち上げと実際の復興・生活再建活動の後方支援および研究活動に従事する。

研究課題:仮設住宅地区における被災住民のエンパワメントによるコミュニティ形成-岩手県陸前高田市をフィールドとして-

 研究代表者:宮城 孝 教授(現代福祉学部)
 研究目的

 避難所から相当長期にわたることが想定される仮設住宅における暮らしにおいて、被災者のニーズに沿った各種支援機能を拡充する必要がある。そこで、岩手県で最も震災被害が甚大な陸前高田市において、仮設住宅地区における暮らしや復興に向けたニーズや課題を把握し、現地における支援機能を高めるための支援を行う。また、このようなニーズ把握と各種支援のあり方、地域再生の方向性について、居住する被災住民自身が協議し、主体的な取り組みを行うエンパワメントの獲得、仮設住宅におけるコミュニティ形成を支援する。これらにより、今後の復興における地域再生のモデルとなることに寄与することを目的とする。

 研究計画・方法

 本研究は、研究目的を達成するために、陸前高田市において昨年度実施した仮設住宅地域の自治会長のヒアリング調査の継続調査を行う。また、自ら参加や意思決定が難しい人々(若い世代、高齢者や障害者など)に関しても、インクルーシブな地域再生を行うため当事者や福祉関係者などに対してヒアリング調査を実施する。そして、広田町地区をフィールドとして自治会主催によるワークショップ(住民座談会)を行う。そこでは、調査結果の報告を素材に、仮設住宅地域における住民相互の支えあい、各種支援機関による支援機能のあり方、地域再生に向けた協議を継続的に行うとともに、具体的な活動につなげる。その過程におけるエンパワメント形成の内容、その要因と効果などについて記録をもとに質的な分析を行うこととする。

研究課題:大学連携による被災地復興支援:牡鹿半島荻浜・小積浜復興再生計画等

 研究代表者:渡辺 真理 教授(デザイン工学部)
 研究目的
 昨年度は(1)震災状況の周知活動と(2)牡鹿半島の復興支援活動という2つのテーマで活動を行った。(1)は津波被災エリアMAPの作成配布、横浜トリエンナーレの参加、東京都現在美術館での展示という具体的な成果を上げることができた。(2)は15の大学と協働して牡鹿半島の海浜集落(29の浜)の復興再生支援を行なってきた。今回の大震災の特徴は被災地が広域に分散しているところにあるが、その多くが過疎や高齢化に悩んでいる土地でもある。法政大学大学院建築都市再生研究所は設立以来そのような地域をどのようにしたら活性化できるかをテーマとし、大学連携を方法論として活動を行なっている。震災復興には速度が不可欠だが、これまでの知見を生かして対応したい。
 研究計画・方法
 複数の大学が連携して復興支援を行なう試みはメディアにも注目されているが、地域住民からも信頼され、石巻市の説明会の際のアドバイザー的な存在になっている。今年度は地域住民の総意を結集して新しい集落を安全な高台に移転させる方針決定の年であるが、そのためにも15の大学の関与がきわめてクリティカルとなっている。 本研究所では上越市浦川原区の月影小学校を法政大学、早稲田大学、日本女子大学、横浜国立大学の4校の協働により体験型宿泊施設として再生し、今日まで運営協力を行なっている。複数の大学の大学教員が学生ともども連携し、参加するという被災地支援の方法を方法論として確立すべく、今年度も積極的に活動していきたいと考えている。

研究課題:カバープランツ栽培による放射能汚染地域での農業の持続可能性に関する研究

 研究代表者:佐野 俊夫 准教授(生命科学部)
 研究目的

 本研究は、放射能汚染地域での農業の持続可能性を模索するために、牧草や菜の花などの非食用とするカバープランツを栽培することで、植物に吸収されやすい土壌中の水溶性セシウムをカバープランツに吸収させ、食用とする作物への放射性セシウムの吸収抑止を図ることができるのか、それを科学的に検証するものである。またこうした科学的研究に立脚しながら、生産者や消費者に対する社会調査も実施し、当該農法の確立を単に技術的に検討するだけでなく、その社会的実装の可能性についても包括的に検討する。

 研究計画・方法

 植物が直接吸収できるセシウムは土壌中の水溶性セシウムに限られるが、カバープランツ(Cover Plants, CP)を栽培する事で、土壌から水溶性セシウムを枯渇し、その状況下で食用作物(Food Plants, FP)を栽培する事で、可食部への放射性物質の吸収を抑止することができるか?を福島県内の圃場における「栽培実験」を通じて検証する。カバープランツには、(1)イタリアンライグラス、(2)菜の花を用い、食用作物として(1)カラシナ、(2)ホウレンソウ、(3)ハツカダイコン、(4)ソバ、(5)ダイズ、の5種を「指標作物」として季節に応じて栽培する。放射性物質の定量測定は栽培土壌、CP、FPで行い、これらの物質収支から放射性物質の所在と挙動を評価する。またあわせて社会調査も実施し、本研究が提唱する「農法」としての有効性、社会的実装の可能性を多角的に検討してゆく。

研究課題:東日本大震災における水害文書修復保全と地方記録管理制度の改善―陸前高田市議会文書を中心に―

 研究代表者:金 慶南 准教授(大原社会問題研究所/研究当時はサステイナビリティ研究教育機構に所属)
 研究目的
 本研究の目的は、東日本大震災によって被災した陸前高田市議会公文書495簿冊の復旧作業を行うとともに、災害発生時における公文書の保全技術の開発と公文書に対する危機管理能力のあり方を再検討することである。具体的には、(1)陸前高田市議会公文書の整理・修復作業、(2)同デジタル化・アーカイブ化作業、(3)災害発生時における公文書の復旧・保全技術の開発、(4)国家レベルでの公文書に対する危機管理能力を再検討するための社会的枠組づくり、の4項目である。公文書の復旧作業を通じた復旧・保全技術の開発と国家レベルでの公文書に対する危機管理能力を研究することによって、行政の文書管理や災害時における被災文書の復旧活動に寄与する。本研究によって得られた成果は広く社会と世界へ還元していく。
 研究計画・方法
 本研究では記録保存管理論的観点と行政学的観点からアプローチする。特に海水に浸水した公文書修復のための保存処理方法論と災害に対する危機管理能力を向上するための行政学的観点からみていく。
まず、これまで応急処理をした陸前高田市議会文書495冊(2012年5月現在)を対象に、反復的なドライクリーニング、洗浄作業を行い文書が最大限きれいに復元する。
 第二に、重要文書を選別しデジタル化することにより記録情報を確保し、二重保存体制をつくるために電子媒体を作る。
三つ目に、津波により冠水し、一部文書が遺失する被害を受けた陸前高田市議会記録のアーカイビング作業を行う。その方法は、復旧された文書の分類および分析を通じ、遺失文書を追跡・調査し、国会図書館、県庁、大学図書館などで、原本ではなくとも活字化された冊子などの関連資料を収集する。
 四つ目に、復旧した文書を陸前高田市議会に返還した後、永久文書の保存政策と災害危機管理のための政策を樹立することができるよう、公文書関連法令の検討、災害危機管理の国内外主要事例などを調査、分析する。