2011年度 法政大学東日本大震災復興支援研究助成金採択研究課題実績報告

研究課題:「雇用・就労問題研究会」東日本大震災復興支援のための雇用・就労問題研究

研究代表者:山岸 秀雄 教授(法学部)
 研究実績の概要
 本プロジェクトの研究目的およびそれに基づいた研究計画・方法には二つの大きな柱があった。一つは被災地におけるボランティア活動の実態把握および学生参加をも見込んだ被災地との協力関係のあり方を探るということ、もう一つは、被災地における雇用の実態把握と問題点を明らかにし、震災復興への貢献のあり方を探るということであった。
ボランティア活動については宮城県登米市や南三陸町との協力関係を一つの柱とし、学生ボランティアの派遣を通して協力関係を具体化することができた。雇用調査については、被災地の県庁や市役所、ハローワーク、連合等の聞き取り調査を行い作業を進めた。

1.ボランティア活動に関して
ボランティアに関する調査研究と活動は<研究方針(1.「連合・法政大学のボランティア活動方針」検討、2.「雇用・就労問題」検討)における「ボランティア活動の新しい位置づけと事業化移行の可能性」>に基づいて行った。これに関しては連合の現地ボランティア活動についての調査と、法学部山岸ゼミを中心にしたボランティア活動を通した支援・協力関係の構築および現地調査が中心となった。対象地域としては、宮城県を中心に登米市、南三陸町一帯を候補にあげ、現地の予備調査・打ち合せを繰り返す中で、現地における本研究会への期待が高まり、高いレベルの協力が得られた。NPO法人東北みち会議を通じて、地域一帯の「道の駅」の代表らと提携を組むことが可能となり、登米市長をはじめとする自治体、漁業組合関係者、林業組合幹部等のヒアリングを通じて現地の実態把握が可能になった。
登米市の「道の駅」を活動拠点にした理由は、第1に被災地南三陸町と地域的、歴史的に一体化した地域であること、さらに全国・東北道の駅、被災地支援の中心拠点としての位置にあることである。第2にこの一帯の漁業、林業が複合産業として地域住民によって担われてきたこと、等の条件を合わせてボランティア拠点として、さらにボランティアから事業化移行を図ることによって雇用・就労の可能性を模索する地域として、ふさわしいと判断したからである。学生は9月に全国・東北の道の駅提供の物品販売を中心とした「南三陸復興支援・みやぎ『道の駅』フェスティバル」にボランティアとして参加・協力し、販売、広報、設営、東京との連携作業に従事した。
ボランティア関連の活動は「NPO法人東北みち会議」とNPOサポートセンターならびに全国連絡会との連携を通して実施された。

2.雇用・就労問題に関して
雇用・就労問題については、2月から3月にかけて被災地4県で集中的に現地調査を行った。訪問先は福島、宮城、岩手の各県庁、および青森については被害が最も大きく、県内最大の産業都市である八戸で市役所とハローワーク、連合を訪問し、現地の雇用情勢、国や自治体の対策の現状等について聞き取り調査を重ね、実態把握に努めた。その他、岩手では連合岩手を訪ね、また、他県とは事情が異なる福島県では福島、郡山、南相馬、いわき、会津など各地のハローワークを訪ね、聞き取り調査を行った。
調査の結果見えてきたことは、①被害の内容や程度、影響は地域によって大きく異なり、対応策も異なざるを得ないということ、②震災直後の雇用については行政の果たした役割が大きく、また阪神淡路大震災のときと比較するとNPOの活動にも積極的な関与がみられ、自治体やそれら団体の努力でつなぎ雇用や被災者支援は比較的よく機能していたとみられること、しかし、③その後、行政やNPOによる一時的なつなぎ雇用から民間企業の復旧・復興に向けた動き、それに伴う雇用回復がなされていくと考えられる段階にいたっては、事態は思うように進展していないとみられるということである。
まず、①の被害の程度や状況が異なる点については、地震と津波による被害に加えて原発被害が深刻な福島の沿岸地帯(いわゆる浜通り地域)は依然として今後の生活の見通しすら立てられない状況にあり、他の地域と事情はまったく異なる。また、岩手でもとくに被害が大きかった宮古・釜石、大船渡、陸前高田等の地域では、事業所の7割~8割が被害に遭い、過半数が流出してしまうというように甚大な被害を被った地域がある。他方では、宮城県の仙台周辺など比較的立ち直りの早い地域もある。全国的にあまり注目されなかった八戸も大きな被害にあっているものの、工場などの施設の被害は最小限にとどまり、2011年の後半になると復興が進み、同時に岩手や宮城の復興事業により雇用状況が過去10数年のなかで最高を記録するという状況もみられる。
次に、②の行政を中心にしたつなぎ雇用では自治体による直接雇用のほか、民間企業やNPOへの委託事業として多くの一時的な雇用創出がなされた。そうした中から刺し子などの小物を始めとした絆ビジネスが生まれたが、2012年に入ってから売り上げが落ちてきていると言われる。こうした中には個人や資金力の弱いNPOが独自にはじめた事業が数多く生まれたのも今回の震災の特徴である。今回の震災では被害規模が大きく、阪神淡路大震災のときの経験が役に立たない状況もあり、自治体関係者も手探り状態にあった様子がみてとれる。とくに震災後1年を経過し、本格復興に向けて歩みを進めなければならない時期に、これがうまくいっていない。それが③の状況である。具体的な復興計画が決まらないなかで、土地利用が確定しないため、事業再開に不安がある。たとえば、釜石では復興計画の範囲に該当しても代替地も移転資金などは今の段階では準備されていない。沿岸地域にあった小商店や事業主が再起をかけて待てる時間にも限界があり、元の場所で再興するか、別の土地で再起を図るか、廃業するか等の決断を迫られている。同時に、失業手当の延長などを当て込んでパチンコに興じるため、働こうとしない人たちの存在が指摘される一方、津波で車を流され、その後、ローンを組めないために、新しい車(中古車も含む)を手に入れることが出来ず、そもそも仕事場に行くことが不可能で仕事に就けない人もいる。沿岸部ではもともと水産加工や農業の日雇い仕事で現物支給や日銭を稼いでいた高齢者層がいたが、彼らは生活の糧を失っている。

以上の研究を通じて、ボランティア活動や雇用研究の領域で被災地支援はどうあるべきかの基礎資料は得られた。それを今後、どう展開していくべきかは今後の検討課題として残されている。

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研究課題:東北製造業の震災津波被災実態と復興の展望の研究―グローバル化と地域再生の視点から

 研究代表者:河村 哲二 教授(経済学部)
 研究実績の概要
 本研究は、グローバル金融危機・経済危機と震災・原発危機の「二重の危機」のもとで、農業・漁業・水産加工業と並んで、東日本大震災・津波被災地の復興最も重要な鍵となる地場造業の復興・再生と拡充の問題を、国内およびグローバルなサプライチェーンの寸断とその影響という問題を焦点として自動車・電機産業を中心に解明し、主力工場と「ティアー3」以下の中小企業・地場企業レベルの復旧・復興と基盤拡充を軸とする被災地再生にこの具体的方策と必要な支援策・政策的諸措置を折出し、提言することを目的とする。本年度は、サステイナビリティ研究教育機構の震災・原発問題特別研究班(サス研TFと略称)および学外研究協力者と連携しながら、現地実態調査(被災地域・海外)と文献・資料の分析研究を組み合わせた調査研究活動を進め、また、研究会、シンポジウム、講演会、出版等を通じて、学内外の研究連携と研究成果の公表を進めた。

1.現地実態調査
(1)被災地実態調査  被災実態と復旧・復興動向の実状調査のため、第一次(2011年6月3~6日)、第二次(2012年2月19~24日)の二度、岩手、三陸沿岸~宮城・仙台平野の主な被災地の実態調査を実施。第二次調査では、東北学院大学等の研究協力者、サス研TFと合同し、重茂漁協、宮城県産業技術総合センター、陸前高田市役所、地場企業、自動車・電機・金属加工の中心企業(トヨタ東北、アルプス電気、岩機ダイカスト)等を本格的に実態調査し、また各地域特性の視察調査を実施した。
(2)中国調査 科学研究費補助金基盤研究(A)による中国調査(8月21日~9月22日)と連動し、サプライチェーン(SC)への大震災・津波被災の影響と日系企業の製造・事業拠点の海外移転動向について、内陸部(西安・成都)、沿海部の珠江デルタ・長江デルタ地域、北京とその周辺地域を対象に、日系企業、現地企業、JETRO事務所、国家発展和改革委員会ならびに各地の開発区委員会等への聴き取りと実地視察による幅広い実態調査を実施した。

2.共同・連携研究の推進と研究成果の公表 研究会、シンポジウム、講演の主催・共催と参加を通じた共同研究・連携研究の推進および研究成果のとりまとめと公表を進めた。成果のWEB公開とともに、共編著『3.11から一年』(お茶の水書房、2012年5月刊行)を編纂した。
<主な成果と知見>本年度の調査研究活動を通じ、産業的被災実態と復興指針の基本点について以下の知見が得られ、本研究が考究すべき課題もより明確になった。
1.半導体等の基幹電子部品・素材の製造停止と停電・物流の途絶による間接的影響も含め、大震災の産業的打撃は大きかったが、津波被災地・福島原発周辺の高放射能汚染地域を除けば、①生産設備・工場損害の大部分は、企業自身の企業系列も超えた支援と対応で、夏までにかなり復旧し、ほぼ半年で影響が薄らいだ(聴き取り、経済産業省、内閣府等)。②グルーバルSCへの影響は、在庫対応・調達先の調整(他地域・現地調達へのシフト)を通じ、早いところは1ヶ月で解消に向かった。
しかしながら、今回の被災は、グローバルSC調整に伴う製造の海外移転の趨勢――①産業的変容(各種量産製造拠点の海外移転とキーデバイス・基幹部品・高機能品へのシフト、開発機能への特化を通じた産業・工場再配置)と、②「グローバルシティ」機能を強める東京・首都圏への一極集中・仙台など中核都市への集中の一方、周辺的地域経済の疲弊(地域商店街の衰退等)とコミュニティの衰退(過疎化、高齢化、限界集落の拡大)――の上に、グローバル金融危機・経済危機の打撃が加わったなかで生じている。そのため、単なる復旧を超えて地域経済の再活性化を図る復興・再生の方途が不可欠である。
とくに本研究が重視する地場製造業の中心である中小である中小地場企業については、急務の課題である津波被災地の食品加工業・水産加工業の再建も含め、持続型製造業基盤の再生のため、(1)「衣・食・住・職(生業)・文化」一体の地域生活圏と密着した地場連関を再建し、その基盤拡充の上に、中核企業のより広域のSC再構築との関連をつけることが重要である。(2)被災地産業復興・再生のもう一つの柱となる、農業・魚業・水産加工業の再建と復興も、各地域特性を活かしつつ、基礎集落における地域連関の再建と連携を軸として地域自立型(エネルギーの地産地消型への転換も含む)の関係を拡充することが不可欠である。首都圏依存の問題や海外市場の開拓もその基盤の強化の上に再構築される必要がある。(3)経済グローバル化による海外との競合の増大の趨勢に対しては、国内拠点の機能シフトが進んでいる研究開発・設計、基礎技術・要素技術開発機能の強化のため、①人材育成・職業訓練を含めた仙台市等の中核都市機能強化、②中小企業間の連携強化と、③国・地方レベルのその支援メカニズムの整備と拡充が不可欠である(宮城県産業技術総合センターなど)。

3.こうした地場産業復興と地域経済・コミュニティの再建に、行政機構による支援と復興財源は不可欠であるが、弊害も目立つ中央政府・県・市町村の縦割り・トップダウン型ではなく、基礎集落単位の「衣・食・住・職・文化」一体の関係の復興を核としたボトムアップ型のより地場に密着した仕組みが必要である。それには、高台移転・防災強化を含む基礎集落レベルの、数百年の風雪に耐えて受け継がれてきた地域ニーズを核としその広域連関を基本とする復興・再生計画の策定と、従来の行政区分を超えた地域連合体の形成が不可欠である。道路・鉄道・交通網等のインフラの再建と整備、拡充も、地域ニーズ密着型で進める必要がある。
4.以上の全体的な方向に対して、本年度の調査研究で明らかになった重要な点は、大震災・津波被災地の地域特性の多様性である。少なくとも実態調査等を通じて明らかになった次の5類型(さらにサブ特性がある)に対応した研究アジェンダが必要である。①中小漁村集落、②中核水産基地や工業基地を擁する地域(釜石市、気仙沼市、大船渡市、陸前高田市、南三陸町など)、③平野部の水産業・工業・農業の広域複合地域(石巻~塩竃~多賀城市等)、④平野部農業地域(米作・近郊農業地域:亘理、若林-閖上、荒浜等)、⑤平野部近郊住宅街区(名取市等、各地)。

本年度は、震災・津波被災地の地場製造業の再建を核とする地域経済コミュニティの復興と再生について以上の基本点が解明できたが、次年度は、研究のいっそうの深化を図るため、問題の各側面が最も複合して現れている石巻市地域(南三陸町、雄勝、女川等を含む)の調査研究を軸とし、岩手県・福島県の各被災地との比較研究を行う。また東北全域に視野を広げて、自動車、電機を中心とするグローバル企業との関連も調査研究する。そうした調査研究を通じて、地域産業再生・復興支援の具体策を策定する。

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研究課題:復興と生活再建に向けた協働フォーラム創造―被災地からの声持続的集積プロジェクト

 研究代表者:武貞 稔彦 准教授(人間環境学部)
 研究実績の概要
 2011年度の主な活動結果は以下のとおりである。
1.被災者等の声を集積するためのウェブサイトの設計・構築。
2.被災地の現状視察および、関係者との意見交換
3.今後の活動の方向性に関する検討

以下、各項目について説明する。
1.被災者等の声を集積するためのウェブサイトの設計・構築。
被災者の声を集める手段として、インターネットおよびソーシャルメディアを想定し、そのようなウェブサイト構築の技能・経験のある業者を選定、委託契約を結び、当該業者との複数回の打合せ、現地調査などを経て、ウェブのデザインを確定した。
ウェブデザインでは、被災地の年配の人々にも配慮した見やすさ/使いやすさを念頭におきつつ、法政大学(の研究者)の取り組みであることを前面に打ち出し、大学としてのパブリシティにも配慮した。
ウェブサイトは昨年度末に完成し、若干のテスト・動作確認を経て、4月16日から一般公開し正式に運用を開始した。
2.被災地の現状視察および、関係者との意見交換
被災地の現状を把握すると同時に、被災者自身、被災地支援を行う人々などから意見聴取し、ウェブサイトのデザインや今後の活用方法に関する意見交換を複数回行った。研究代表者らの主要な訪問先は、宮城県石巻市(8月、2月)、岩手県釜石市・大槌町・陸前高田市(3月)である。
被災地支援団体の中ではパルシック、遠野まごごろネット、ジャパンプラットホーム等の関係者と意見交換を行い、被災者の視点にたったウェブサイトの構築、運用に関する貴重な意見を賜った。(訪問記録は「現地レポート」という項目で上記ウェブサイトにも掲載済み)
また、原発事故で福島県から避難を余儀なくされている住民への聞き取り、当該避難者への支援活動を行う団体からの意見聴取などもふまえ、今後は、原発事故による避難者も同様に今回のウェブサイトを通じた支援の対象者とすることを検討していく。

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研究課題:仮設住宅地区における被災住民のエンパワーメントによるコミュニティ形成―岩手県陸前高田氏をフィールドとして

 研究代表者:宮城 孝 教授(現代福祉学部/サステイナビリティ研究教育機構)    
 研究実績の概要
本報告におけるフィールドでの調査や実践の契機となったのは、陸前高田市において2011年5月5日、市民有志による地域再生・復興に取り組むNPO法人「陸前高田創生ふるさと会議」が結成される集まりが開かれ、そこに参加した大学関係者や都市計画・建築関係の実践家が共同して、陸前高田市の地域再生・復興に向けての支援活動を行うこととなったことによる。その後、法政大学を始めとして、明治大学・東京大学・中央大学の関係者等による「陸前高田地域再生支援研究プロジェクト」として、都市計画・建築や地域福祉、社会学、臨床心理、公共政策学などの領域の研究者や実践家等の有志による共同研究チームが編成されました。また、本プロジェクトは法政大学サスティナビリティ研究教育機構の震災・原発タスクフォースの一環として位置づけられており、宮城が研究代表者になっている。

このプロジェクトでは、陸前高田市において、被災住民自身が地域の再生、生活再建に向けてその課題を話し合い、主体的な取り組みを行うことを支援しつつ、仮設住宅および被災地域におけるコミュニティの形成のあり方を共に模索しながら、今後の復興における地域再生のモデルづくりに寄与することを目的として、今日まで活動を続けてきた。先ず、現地の関係者の協力を得て、本プロジェクトによるプレ調査として、6月5日~6日に陸前高田市内の高田1中、長部小の避難所、仮設住宅の被災者世帯(167世帯)に、今後のまちと暮らしに関する意向調査を実施し、6月24日~26日に上記の調査結果の速報版を現地の避難所や仮設住宅団地に届けて配布している。さらに、7月10日には、NPO法人「陸前高田創生ふるさと会議」と共同して、「明日の陸前高田を考えるワークショップ」を開催した。その後、8月4日から8日、16日から20日の2期に分けて、各大学の学生を含め述べ66名(法政大学からは院生、学部生が約40名参加)が参加し、陸前高田市内の53の仮設住宅団地を訪問し、自治会長などの協力を得て、仮設住宅の立地条件や生活環境、自治会や居住者の状況、団地運営で工夫している点、問題点などについてインタビュー調査を実施した。さらに、この調査結果の速報版を届けた際に、自治会長から他の団地の取り組みなどについて情報交換がしたいとの声があり、10月14日から16日にかけて、市内の5ヶ所の会場において、「応急仮設住宅団地役員情報交換会」を開催した。

また、このような活動の中、市内長部地区の要谷、福伏、双六集落、広田町地区の仮設住宅団地自治会長などのリーダー達の相談を受け本プロジェクトの都市計画・建築、地域福祉などのメンバーが助言し、高台に集団移転を希望する被災住民が協議を重ね、各集落・地区に集団移転協議会が組織化された。各協議会では、市に防災集団移転促進事業に関する用地交渉や高齢者など自力で自宅を再建できない被災者が集落を離れないための戸建て復興公営住宅の建設などについて要望書を提出している。さらに、震災1年を迎えようとしている2月26日に、本プロジェクトを広田地区防災集団移転事業協議会の主催によって、市内の広田町大陽公民館において住民約50名が集い、広田町の地域再生に向けての復興マスタープランづくりのためのワークショップが開催され、住民による活発な意見交換が行われた。このことは、本プロジェクトのメンバーの1人が、内閣府の地域づくり支援事業(専門家派遣事業)の広田町のコンサルタントに正式に任命されており、今後の課題は、このワークショップで示された住民の意見を調整し、合意を形成し、それらをどう具体的に実現していくか、行政をはじめ、関係機関・団体の理解と協力を得ていくことが重要であると考える。

2012年度は、広田地区を主なフィールドとし、上記の基本的な視点に立ち、地域住民が主体となった持続可能な地域再生のあり方について、実現性の高い具体的な内容と方法を探求することとする。

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研究課題:planTとその実践活動である牡鹿半島荻浜・小積浜復興再生計画

 研究代表者:渡辺 真理 教授(デザイン工学部)
 研究実績の概要
1)津波被災エリアMAP(planT作業報告書):
東日本大震災で津波被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県の29の都市・地域の被災状況をマップにまとめた。何度か訂正、推敲作業を行い、2011年12月に報告書として発行した。津波被災エリアMAPは3県の県庁をはじめ、市町村や公共図書館など124箇所に寄贈した。

2)牡鹿半島の2つの浜「荻浜」「小積浜」の復興提案の立案:
建築家による復興支援のネットワークである「アーキエイド」と連携し、15の大学が分担して作業を行ってきた。被災者は当初は荻浜中学校に避難していたが、秋からは仮設住宅で生活している。津波の被災地に関しては、高台移転が国土交通省のイニシアティブでなされているが、牡鹿半島は平坦な土地が少ないことから、その具体化はいまだに難航している。用地取得などデリケートな内容が多々ある作業なので、法政大学チームも石巻市とアーキエイドと連携して作業を行っているが、幸いなことに地元住民からの信頼が厚く、徐々に計画アドバイザーとしての地位を固めつつある。復興提案は現在進行形で続けられているが、各浜の復興計画の初期段階の提案が『浜からの復興提案』(彰国社、2012年4月発行)にまとめられている。

3)新港村(横浜トリエンナーレ)参加:
被災地の状況と15大学の関与を周知・広報するために2011年8月6日から11月6日までの期間、横浜トリエンナーレに参加し、新港村の会場で復興提案の展示とシンポジウムへの参加(「被災地の漢たち」)を行った。

4)失われた街-三陸に生きた集落たち展の参加:
2011年12月13日から2012年1月15日まで東京都現代美術館で行われた模型展示に法政大学チームは荻浜の模型を作成した。模型は1/500で制作されたが3m×4mという巨大なものとなった。

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研究課題:カバー・プランツ栽培による農作物への放射性物質の吸収抑止に関する研究

 研究代表者:佐野 俊夫 准教授(生命科学部)
 研究実績の概要
福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の国土的拡散は、土壌や陸海水を汚染し、東日本の農林水産業に大打撃を与えた。本研究チームは、①福島や茨城などの生産者に対する社会調査、②放射性セシウムの農作物への移行を抑止する実験、の二つを取り組みの柱とした。なお本チームの主たる参画メンバーは、佐野俊夫(生命科学部准教授)、長田敏行(生命科学部教授)、清水隆(サス研PD)、田島寛隆(サス研RA)、石井秀樹(サス研PD)、吉野馨子(サス研PM)、大森一三(サス研RA)である。

前者の社会調査は、福島県二本松市、福島市、郡山市、川俣町、飯舘村、南相馬市、伊庭脇健守谷市、石岡市、宮城県角田市などの生産者、農協のヒアリングを行った。また、(独)農研機構、福島県農業総合センター、JAEA、福島大学、東京大学、東京農業大学、新潟大学、茨城大学などの研究者に行い、今後の農業対策の課題と、基礎研究の動向を把握した。また本チームのメンバー(石井秀樹)が、ベラルーシやウクライナに赴き(2011.10.31~11.6)、チェルノブイリ原子力災害に伴う研究蓄積や社会的取組の調査を行った。これらの調査結果は、イオンビーム工学研究所第30回シンポジウム(2011.12.7/講演者:石井秀樹)が、第24回サス研フォーラム(2012.1.28/講演者:石井秀樹)で口頭発表した他、石井秀樹(2012)「原子力災害下における福島・東日本お農業の課題と展望~危機的状況の中でも制御可能な対策を求めて~」、舩橋晴俊・長谷部俊治(編)『持続可能性の危機』(仮題)刊行予定、Ishii Hideki(2012)Reasearch on farming methods for reducing the absorption of radiological materials. 法政大学イオンビーム工学研究所Proceedingsなどに発表した。

後者の栽培実験は、福島県二本松市宮戸地区における阿武隈川沿いの團場(約1000㎡)を借用して行った。本実験では土壌中の放射性セシウムを取り除く「除染」を目指すのではなく、植物が吸収可能な水溶性セシウムと交換性セシウムの作物への移行抑止を目的とした。具体的には、食用とする植物(FP:Food Plants)を栽培する前に、非食用のイタリアンライグラスやアブラナをカバープランツ(CP:Cover Plants)として栽培し、CPに放射性セシウムをあらかじめ吸収させることでFPへの放射性セシウムの取り込みがどのように変わるかを比較することを研究デザインした。二本松市で借用した團場は空間線量が1.0μSv/h(2011.7現在)ほどあり、福島県内でも有数の放射能汚染を被った地域である。またこの團場は阿武隈川が運搬した土壌からなり、河川に近い場所では、河川増水で一部が水没し、上流域の土砂が堆積するなど、多様な土壌環境が見られ、多様な栽培実験するのに適地であると判断した。

イタリアンライグラスやアブラナをカバープランツ(CP)として2011年9月末に播種したイタリアンライグラスを栽培した一部の團場は2011年11月24日に刈り取り、その後、食用作物(FP)の一つとしてラディッシュを播種した。ラディッシュは寒さに強く冬場の実験に適していること、放射性物質を比較的吸収するとされるアブラナ科の植物であることから、FPの指標として適していると判断した。CPであるイタリアンライグラスの作付けを行わなかった土壌、作付けした土壌、および作付けしたイタリアンライグラスの中の放射性セシウム量をガンマ線スペクトロメーターを用いて測定したところ、イタリアンライグラスから放射性セシウムが検出され、作付けを行わなかった土壌に比べて作付けした土壌中の放射性セシウム量が少なくなる傾向を見出した。今後はこのデータの正確性を検証すると同時に、食用作物として作付けしたラディッシュ中の放射性セシウム量を計測する予定である。また、イタリアンライグラスやアブラナなどのCPを栽培した地点で、本年5月よりソバ、コムギ、ダイズ、イネなど複数の食用作物(FP)を栽培し、カバープランツの有無による放射性物質吸収の低減効果をさらに検証してゆく予定である。