2016年度

Vol.90 日本の流通革命の裏付けとなる国内屈指のコレクション

2016年07月07日

2016年度

雑誌『商業界』の初代主幹・倉本長治氏と同二代主幹・倉本初夫氏の個人蔵書約3100冊の寄贈を受け、2016年3月、本学イノベーション・マネジメント研究センターに「倉本文庫」が開設されました。これは、「ペガサス文庫」とともに、同センターのデポジット・ライブラリー(保存図書館)の中核をなすコレクションです。

同センターは、1986年に「産業情報センター」として設立されました。その二本柱となったのが、調査研究とデポジット・ライブラリーです。ハーバード大学のベーカー・ライブラリーを模範として設立された、このデポジット・ライブラリーには、主に社史・団体史、灰色文献(白書ではない政府関係機関やシンクタンクの報告書や意見書など、一般の流通には乗らない資料)など、一般には入手困難な資料が集まり、その蔵書数は今や25万冊に達しています。

戦後いち早く欧米の新しい小売店を紹介した雑誌『商業界』のバックナンバーも

戦後いち早く欧米の新しい小売店を紹介した雑誌『商業界』のバックナンバーも

2004年に「イノベーション・マネジメント研究センター」に改組・改称され、「特色のある」デポジット・ライブラリーの構築を目指すようになります。2009年には、11業界団体と4学術団体・研究機関の協力を得て、「流通産業ライブラリー」が創設されました。この中心的存在となったのが、「ペガサス文庫」です。これは、チェーンストアを研究する団体「ペガサスクラブ」の設立者であり、「日本のチェーンストア業界の父」と呼ばれる渥美俊一氏が創設した「日本チェーンストア経営専門図書館」の蔵書約2万4500冊を引き継いだものです。

渥美氏が高度経済成長期の流通革命の理論的指導者であるのに対し、その恩師である倉本長治氏は、戦後の流通革命の倫理的指導者といえます。倉本氏は、闇価格、量や内容のごまかしが横行していた戦後混乱期に、今では当たり前の正価正札販売や顧客第一主義を説いて広め、小売業の近代化に尽力しました。

「ペガサス文庫」と「倉本文庫」は、高度経済成長の波に乗って急成長した流通・消費財産業の歴史的発展を裏付ける資料がそろった、日本屈指のコレクションです。イノベーション・マネジメント研究センターは、今後もデポジット・ライブラリーの充実を図り、産学官の連携と、学術交流、研究を推進していきます。

自筆色紙に書かれた「店は客のためにある」は、倉本長治氏が主催した「商業界ゼミナール」のモットー

自筆色紙に書かれた「店は客のためにある」は、倉本長治氏が主催した「商業界ゼミナール」のモットー

  • 「商人が誇り高く生きる」ことを説いた倉本長治氏(左)と長男の初夫氏

  • イノベーション・マネジメント研究センター内にある、流通産業ライブラリー展示室

取材協力:法政大学イノベーション・マネジメント研究センター、矢作敏行 経営学部教授(取材当時)

(初出:広報誌『法政』2016年度5月号)

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