太平洋戦争が激化する1943(昭和18)年10月、理工系など一部を除いて学生の徴兵猶予が廃止され、満20歳になる学生たちは臨時の徴兵検査を受け、あわただしく入営していきました。いわゆる学徒出陣です。これ以前に修学期間短縮による繰り上げ卒業によって学び舎をあとにした学生や、1944年以降に出陣した学生を含めると、出陣学徒の数は10万人を超えると推定されています。学生たちは幹部候補生や下級将校・下士官となった者や、中には特攻隊員として出撃したケースもありました。
学徒出陣から70年目を迎えた2013年は、各地の大学で学徒出陣に関する展示や講演などが行われ、関係資料の掘り起こしに取り組む動きが活発化しました。というのも、学徒出陣に関しては国に記録が残されておらず、その全容がわかっていないからです。
本学でも2012年から6カ年計画で学徒出陣者への聞き取り調査などを進めており、2013年12月、法政大学史委員会と法政大学史センターの主催で「学び舎から戦場へ―学徒出陣70年 法政大学の取り組み―」と題した公開シンポジウムと展示会が開催されました。12月16日(月)に行われたシンポジウムでは、本学在学中に学徒出陣し海軍に入隊した上島武雄(1944年法文学部卒)、櫻井眞一郎(同経済学部卒)、田中三郎(同経済学部卒)の各氏をゲストに招き、法政大学史委員による公開インタビューが行われました。また、展示会(12月9日~20日)では関連資料や聞き取り調査の成果などを紹介しました。写真はその展示品の一部です。
本学はこれまで、1990・91年3月の学位授与式で、当時の阿利莫二総長の発案で戦没した出陣学徒の遺族へ卒業証書を授与、95年には多摩キャンパスに「平和祈念碑」を建立するなど、戦争や平和というテーマと真摯に向き合ってきました。学徒出陣から70年の節目にあたり、今回のシンポジウム・展示会が学生・教職員にとって改めて戦争や平和の問題を考える機会となることを願っています。
本学から学徒出陣した古市實氏(経済学部経済学科卒)への寄せ書き。古市氏は戦後、父親が興した事業関連の企業を経営しながら関西財界で活躍、日本青年会議所会頭、大阪工業会副会長、同顧問、大阪商工会議所名誉議員などを歴任。現在、プライミクス株式会社会長。右は入隊後の古市氏
取材協力:法政大学史センター 古俣達郎
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