2011年度

Vol.26 法政大学沖縄文化研究所 所蔵資料 修復・デジタル化が進む「楚南家文書」と中野好夫の沖縄資料

2011年11月17日

2011年度

沖縄文化研究所では、2009年度から5年間をかけて取り組む重点事業として「楚南家文書修復・デジタル化事業」を進めています。
楚南家文書(そなんけもんじょ)は、18世紀から19世紀にかけて琉球王国旧久米村(中国人居留区)で中国との外交実務に携わっていた楚南家に伝わる文書です。研究者の木津祐子・京都大学大学院教授によれば、大量に含まれる漢籍(版本・抄本)は近世琉球における漢学の実態を理解する上で極めて重要なコレクションで、「その価値は、琉球大学所蔵の八重山士族宮良殿内文庫を量的に遙かに凌ぐのみならず、琉球の漢学の主たる担い手であった久米村士族楚南家の旧蔵書を母体とするという点で、質的にも極めて重要かつ多様な史料的価値を有するものといえよう」(木津教授「楚南家文書について」の文章より)と述べています。

中でも、『新刻官音彙解釈義音註』『新刻官音彙解便覧』『較正官音仕途必需雅俗便覧』の3種の清朝初期〜中期の官話(中国語共通語)を学ぶための学習書(写真上)は、中国本土では早くに失われ、現在は台湾中央図書館(分館)に『新刻官音彙解釈義音註』1冊があるだけという稀覯本です。

楚南家文書の中でもとりわけ貴重な『新刻官音彙解釈義音註』『新刻官音彙解便覧』『較正官音仕途必需雅俗便覧』の3種揃い。沖縄における中国語学習史を研究する上でも貴重。

楚南家文書の中でもとりわけ貴重な『新刻官音彙解釈義音註』『新刻官音彙解便覧』『較正官音仕途必需雅俗便覧』の3種揃い。沖縄における中国語学習史を研究する上でも貴重。

楚南家文書のうち、『易経(下)』(右)と『廿一史約編』。

楚南家文書のうち、『易経(下)』(右)と『廿一史約編』。

「琉球学にとどまらず、福建、広東など中国東南部から東南アジアに及ぶ海域における琉球の位置づけと他地域との連関を解明する上での重要な手がかりが得られることは間違いない」(木津教授の文書より)という楚南家文書ですが、資料の破損・劣化が進んでいるため、修復・デジタル化を行うことになったのです。修復・デジタル化の作業は文書の故郷である沖縄で行われています。

書庫に収められた中野好夫氏「沖縄資料センター」の資料

書庫に収められた中野好夫氏「沖縄資料センター」の資料

資料のうち沖縄教職員会『教育新聞』の綴り

資料のうち沖縄教職員会『教育新聞』の綴り

ところで、法政大学沖縄文化研究所は、英文学者の中野好夫氏(1903-1985)が主宰していた沖縄資料センターの資料が本学に移管されたことが直接的な契機となって、1972年に設立されました。沖縄資料センターは、沖縄の問題が日本の政治課題となった1960年代初め、本土において沖縄の実情を知るために設立されました。資料には組合機関誌、ビラ、チラシなど軍政下の沖縄に関する時事的内容のものが多く含まれています。沖縄文化研究所では、これら資料のデジタル化も進めており、すでに組合機関誌など一部はDVDで閲覧できるようになっています。

資料は順次デジタル化され、DVDで閲覧できるようになる予定。

資料は順次デジタル化され、DVDで閲覧できるようになる予定。

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